『西郷どん』 第4話 「新しき藩主」
大河ドラマでは、けれんみ(と一言で言ってしまっていいのだろうか)あるシーンはのちのちまで語り継がれるもので、たとえば『平清盛』の「朕を射よ! by 鳥羽上皇(三上博史)」とか、『江』の「江ちゃん(上野樹里)、家康(北大路欣也)と馬で2ケツして伊賀越え」とか。
そんな大河史に新たな1ページが加わりましたね。
島津斉彬(ケン・ワタナベ)発案によるサツマンルーレットw
「おいおい、ロシアンルーレットかよ」と夫婦でつっこんでいましたら、あとでSNS見たらさっそく「サツマンルーレット」という誰かの命名が流通していたw
斉興をとにかく頑固で狭量で旧弊に凝り固まった下品なおっさん、由羅をなんかオーバーで面白いおばちゃん、という描き方に徹した。前半の、母の身の安全を気遣う久光に対して、「みな、私を憎むがいい!」と由羅が大仰な独演ショーで応えるのを、室内でズズズとお茶をすすって見てない斉興・・・っていう場面のB級っぷりは確信犯でしょう。
なので、幼い息子や股肱の臣・赤山を失ったりした斉彬がそれなりに(?)シリアスに父の迫る芝居も、何となく軽くなる。これは、「軽くなってしまう」というよりは、意図的にそうしてるんだろうなと思う。そういう作風というか。斉興が古くて悪い、という構図を鮮明にしたほうがわかりやすいしいね。
父と息子の、政治方針の対立にせよ愛憎の相克にせよ、芝居のコテコテ感に比して、中身はとにかくあっさりしてるんだよね。
そういう作風は、せっかくの長丁場の大河なのに・・・ともったいなく思うところなんだけど、なんとなく憎めない感もあります、このドラマ。鹿賀丈史の振り切った悪役っぷりとか、いつ踏み込もうかオロオロしてるルミ子とか、面白くてw
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前半、じわっとくる、いいシーンもあった。
切腹前日、いつもとまったく同じに悠揚としたさまの赤山。沢村一樹にはあまり根拠のない苦手意識があったんだけど、「ひよっこ」といい、こういう、生まれついて明るい方を向いているような雰囲気を出すのがうまいんだなあとすっかり感じ入っている。若い吉之助たちの師、という面だけで、藩政にあってどういう立ち位置でどういう役割を果たしていたのかがとんとピンとこなかったのは残念。
切腹の場面は、死に装束で白洲に降り立つ赤山と、部屋の書卓の辞世&壺の花を映したショットが印象的。こういうこだわりの画作りと、サツマンルーレット的なB級シーンとの落差が激しいんですけど、これが本作の味ってもんでしょうかw 辞世の紙を映しはするものの、内容を紹介するような文学性には走らないぞ!と決めてるようなのも、それはそれでw
粛清に連座させられる形で喜界島に流刑になる次右衛門。何の動揺も悔恨も無念の表情も見せず、従容と役人に引かれていくのだが、その前段に「俺なんかただの端役だから罪に問われるわけがない」というシーンがあったのが、効いてた。たぶんほんとに端役でしかもそこそこ小心者だけど、いざそうなると、泣きもわめきもしない、っていう彼の品性が描かれていたと思う。相撲も、次右衛門に投げ飛ばされた吉兵衛が、まあおそらくは彼に花をもたせたんだけど、女房が次右衛門を応援したせいだと言ったところ、よかった。
ただ、西郷が主人公の物語なのに、ここまで大久保の内面描写があまりに少ないのはどーかと思う!! 父の配流後、謹慎の日々の忸怩たる思いとかゼロ! 糸ちゃんへのほのかな恋心はしっかり描写されてるっつーのに。くっそスイーツめ!と言いたくなります。糸ちゃんが、誰かと個人的に・・・ならともかく、あの二才集団と普通につきあってる設定は、もうちょっとエクスキューズが欲しい。
なぜか吉之助「だけ」が斉彬に何十通も手紙を書き、なぜか下郎ふぜいの手紙がちゃんと世継ぎに届き、ちゃんと読んでくれるという、どんワールドの世界観はまぁいいとしても、斉彬のお国入りでの民衆の歓呼なぁ・・・。サツマンルーレットの10倍苦手だったのがあのシーン。ケンワタナベの「新しい殿さまはこんな顔だ。よろしく頼む」の軽みはさすがにとてもうまくて魅力的なんだけど、ちょっと見てらんないな~って感あり。
薩摩は基本的にずーーーーっと年貢が重くて、別に斉興ひとりが抜きんでた悪君だったから民が米すら食えなかったわけじゃないはずだ。斉彬は西郷の手紙に感動したらしいけど、彼はもともと西洋化や軍備をどんどん推し進めようとしてるわけで、それには莫大な予算がいるはずで・・・
なんか、いろいろ辻褄があわないのを、力業で大・大・大カタルシスシーンにしてる。だいたい、英雄ひとりが立ったからオール・オッケー、庶民の支持率100%みたいなのってすごく危険だと思うのだ。いくら娯楽大作に振り切った作風とはいえ、大河ドラマでこれやられると、もにょる。これが、「大いなる挫折」への序章として描かれたのかどうかは先を見ないとわかんないけど、ど~~~も、怪しい気がする。