『重版出来!』 第8話

f:id:emitemit:20160416173318j:plain

 

和田さん回。松重さんは世に出てからもうキャリア長いけど(私が知ったのは1990年代後半の大河『北条時宗』)、この3年ぐらい、特にいい役が続いてるよな! 真のブレイクというか。

この和田編集長も、おもしろい役。熱狂的な虎党で、負け試合の翌日は機嫌が悪く、声が大きく、ぶちあげて勢いで何とか突破しようとする。要はいかにもなオヤジキャラなんだけど、マンガへの愛情は深く、仕事への情熱があって、部内の案件には的確な判断と指示をする。良い上司なのだ。そのうえ、情も深い。マッチゲさんの顔と身体性が和田を生き生きと立ち上げて動かす。

とはいえ、やってらんないよね、情熱も枯れそうだよねーっていうマンガ不況、雑誌不況、出版不況時代の編集長。編集部では威厳(というのかなw)があって、役員が居並ぶ会議ではガーッと大声でぶちあげといて、飲み屋では岡とぐちぐち言いながら一杯やる姿にホロリとくる。ごくろうさんです。

一世を風靡したあと今は廃人に近くなっているマンガ家、牛露田の娘アユに、黒沢はある少女漫画を薦める。綺麗な絵を描くその漫画家の本は、おなじみの書店員・河さんのつらい学生時代を救ってくれたものだった。仏像フェアなんか企画してたから、オタク方面の本読みかと思いきや、河さんの本の世界はそこから始まって、はるか広い裾野を持つようになっていたのだな(笑)。

繰り返し描かれる、本に救われる読者の姿が、本好きにはぐっとくる。

怪我で選手生命を絶たれた黒沢。若き日の高田純次社長。河さんの思い出話。そして今回のアユ。広げた本は、さながら翼を広げた鳥のようだと。

一方で、書く側の苦悩。新人の大塚と中田は共にスランプ。共感力が高すぎる大塚と低すぎる中田w 「中田くん、すごい顔してなかった?」と五百旗頭が言うと、シリアスなシーンにちょっとおかしみが加わる。中田が三蔵山の家に会いに行くこと自体が、視聴者にはなんかうれしい。「どうして沼さんはプロになれなかったんですか」それを聞いて、三蔵山は編集者に「良い兆候だ(大意)」と言う。中田の問いの答えは示さなかったのところに、作り手の意思を感じた。

売る側の苦悩も描かれる。和田の同級生、北野は梶原善。マッチゲさんと凸凹を意識したキャスティングだね。オール阪神巨人というか。阪神と巨人の大小が逆だけどw
苦しい経営状況ながら、プレミアム本をオークションか何かで売りさばくために高値で仕入れようとする若い子たちを毅然と叱りつけるのがこのドラマの作風。脇キャラまでまっすぐでいてくれる。こういう不快感の無さが人気の要因でもあるんだよね。

そんな北野の姿も受けて、
「世の中変わってわからんことだらけでも、大人はかっこつけなきゃいかんでしょう!」
と大声で怒鳴るのが、和田らしい現実との折り合い方、前進の仕方。

卑怯なエンペラーの営業に対抗して人気漫画家のサイン会を画策した小泉が、そんなの邪道だと自ら案を取り下げるんだけど、対抗心から書いた手紙でもめちゃくちゃ真摯な思いがにじみでちゃってそれ読んだ作家先生が登場、河さん固まる!
っていうラストがすごく良かった。小泉も、本を愛する気持ちを的確な言葉で表現し伝えられる人材なんだよね。