睦月の七 / 嬉野、祐徳稲荷、武雄 / 『赤めだか』

●1月某日: 朝まだき、暗い部屋で夫と話しているとぐっすり眠っていたサクが突如「おんせんいくの?」とハッキリした発音で話に加わってきてびびる。「お母さんは女の風呂に行くから、サクはあとでお父さんと行こう」と夫が言い聞かせると、「わかった」と言ってまたスースー寝入った。大浴場、始めは貸し切り。




なんにしても、朝メシ前に温泉に浸かれる喜びよ。嬉野温泉と言えば!の名物、温泉湯豆腐つきの朝ごはんをいただき、チェックアウト。仲居さん、サクに向かって「またおいでね、小学校に上がる前にまたおいで」と何度も言っていた。

まずは同じ市内の塩田へ。嬉野温泉街からは車で20分ほどの距離。江戸時代、長崎街道の宿場町として、また有明海の干満を利用した川港として栄えた。火災や風水害に強い漆喰造りの「居倉家」と呼ばれる大型町屋ができ重厚な街並みが形成され、今は保存地区に選定されている…とのこと。

そのとおり、わずか700mほどの小さなメインストリートには昔風の町屋が並ぶが、建物も道も、いかにも最近修築したといった感もあり、ひとけもなく、ちょっと空虚な気持ちにはなる。それが拭えたのは、急な石段を昇った上にある「塩田大明神」という草むした小さな古いお宮に参って眼下の景色を眺めたのと、メインストリートでこの日、唯一、中が公開されていた豪商の「西岡家住宅」の裏門と裏庭を見たからだった。

塩田川に面した裏門側は修築中だったが、古い煉瓦に囲まれて、広い中庭を有していて、ここで川から荷の積み上げをし、天草から運ばれてきた陶石を選別していたという大正時代の写真がリアルに感じられた。このわずかな通りとその周辺の村でも、古い時代にはじゅうぶんな大きさで活気があって、人々は年に何度か神社のお祭りや興行を楽しんだのだろうなーとか。

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拝殿への木の階段が苔むしている感じなんかも、すごくいい。

通りの町家に「レトロ館」と掲げてあるところがあった。観覧無料。

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さて、次は祐徳稲荷神社へ。日本三大稲荷のひとつらしく、だからってわけじゃないだろうけど子どもの頃、毎年のように家族で行ってた時期がある。本殿も拝殿も神楽殿(?)もすべて朱塗り(漆塗りらしい)でそれだけじゃなくカラフルな彩色が施されとても華やか。大きく長い階段をのぼった2階(懸造、というとか?)に威容をたたえた拝殿があるのも特徴的。

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サク、南蔵院を思い起こしたのかハイテンションでどんどん階段を昇っていく。四半世紀ぶりぐらいに行ったけど、昔と何ひとつ変わらないように感じた。境内に至るまで、両側にずらりと出店の並んだ長い参道が、子どもの頃だったからあんなにも長く感じたのだろうと思ったら、今歩いてもじゅうぶん長かったので驚いた。先に行った塩田のメインストリートよりも断然長かった(笑)。参道といい境内といい多くの人でにぎわっているのも昔のまま。

嬉野に戻って、今、嬉野一(?)おしゃれなカフェで遅めの昼ごはん。びっくりするほどおしゃれ(の割にはゴハンは普通だったかもw)。当然、若くおしゃれな女の子たちがたくさん。旅館がやっているカフェらしいんだけど、町のいろんな食堂や飲み屋、みやげ物屋などを紹介するフライヤーを自分たちで作っていたりして、温泉郷全体を盛り上げようという機運が感じられた。そして奥のほうにはじゅうぶんな販売スペースがあってこれまた超おしゃれな雑貨が売られていて、もしやと思ったらやっぱり中川政七商店の商品だった。

最後に、例の武雄市図書館へ。土地勘のある方は、まわる順番が非効率だなとお思いでしょうがお気になさらず(笑)。TSUTAYAでおなじみ、CCCが運営委託されていて、中には貸図書だけでなく、本や雑貨の販売もあり、スタバも併設されている。

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聞いていた通り、貸図書スペースの本も図書館法(?)によらず本屋さんのような分類をされていて、たとえば「旅 国内その他」のコーナーに、宮本常一の著作があったりする。あとで「民俗」のコーナーを見ると、そこにも宮本さんの本はあって、要するにけっこう適当なのだ(笑)。るるぶとか、古いお料理雑誌みたいなものがBOOK OFFさながらずらりと並んでいたりするのも、ほうぼうで指摘されている通りの特徴。

うーむ。こういった仕入れ(原資は税金でしょ?)に問題があるのはもちろん、地域史などなどの地味で滅多に借りられることはないけど大事な資料/史料を自分に価値がわからないからって勝手に処分したりしねーだろうなオイ!?というのは強く思うところである。

とはいえ・・・開架の棚の本の質量はじゅうぶんに豊富ではある(自分が好きな歴史や民俗のコーナーを見て判断)。建物は新しく綺麗で気持ちよく、販売コーナーを見るのも楽しい。スタバには安心感がある。だから大勢の客が来ている。スタバの席も勉強机もほぼ満席である。それでいて、ショッピングモールのような喧噪はない。割に心地がいいのだ。武雄でこれだけの人が集まってきて販売部門でそれなりに収益も上がるのであれば・・・そのことに価値はあるよなあ。と実際に行くと思ったりもするのであった。

17時ごろ帰宅。「なんか今日は、俺らにしてはいろいろ観光したなー」と夫。「でも行ったとこは全部面白かったな」うんうん。餃子、ネギたっぷりの麻婆豆腐、キャベツと胡瓜とブロッコリーのサラダ。で、また飲む。

『赤めだか』を最後まで見た。面白かった。談志も談春もほとんど知らないが、ビートたけしが演じる談春は、クセがあるけど魅力的だった(落語家にしては滑舌がかなり怪しいけど)。落語をやる役って私が知ってるだけでもいろんな役者がやってるけど、ニノはさすがで、タクシーの中の練習や築地での客寄せの流れるような口舌にほれぼれ。と思ったらあとで出てきた濱田岳もさすがだった。役者さんは大変だろうけど見てて楽しい。談春と志らくだけが残って、あとは劇中でみんな落語の舞台から消えるのかと思いきや、脱落したのは序盤のダンボール(新井浩文)だけで、あとは4人そろって二つ目に昇進したのにはびっくり。でも、いいラストだった。北村有起哉、宮川大輔、二宮和也、濱田岳。いい4人組だった。

 

 

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