『人生を救え!』 町田康 いしいしんじ

人生を救え! (角川文庫)

人生を救え! (角川文庫)

前半: 「あの町田町蔵さんが毎日新聞で人生相談やってます!」って25年前のライブハウスにいた人たちに言ったら爆笑でしょうね。人生はジョークに満ちている。「彼氏ができません」とか「目標が見つかりません」みたいな古今東西を問わない悩みから、「テレビが壊れました」とか「方向音痴なんです」みたいなネタ(?)までバリエーションに富んだネタ・・・じゃなくて悩みは編集者が選んだんでしょうか。独特の文体、独特の雰囲気で、関係あるようなないような、人を食ったような煙に巻くような解答を繰り返す町田さん。でも、なかなか真摯だし紳士だし親切です。「なんだ、町田康って案外怖くないじゃーん」と小心な私はちょっとホッとしました。これじゃ、布袋さんに殴られたときは本人ガクブルもんじゃなかったんだろーか、と余計な心配を今ごろしてみたり。

後半: 浅草、丸の内、お台場・・・町田康いしいしんじが東京の町々をあてどなく巡る。怪しい、怪しすぎる! あたりかまわず(?)繰り広げられる放談、散談を、ただの与太話と捉えるか、あるいは何処かで琴線を触れられるかは読み手次第。てか、この本に限らず世の中の作品って何でも受け手次第なのかもしれんけどね。私は、帰属意識について、と、占いに人が求めるもの、のところを非常に興味深く読みました。現代人の多くに携帯・ネット依存の気があることなどは、誰でも触れたことのある論なんでしょうけれども、「半びとり」とかってフレーズがするっと出てくるところが作家ふたり連れ。そして東京って面白い街だなーとつくづく思いました。