『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』 成馬零一
TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ! (宝島社新書315)
- 作者: 成馬零一
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/07/09
- メディア: 新書
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あっという間に一気読み。おもしろかった。今をときめく嵐の出演作について半分以上の頁が割かれているんだけど、よく考えたら私、二宮くん以外の連続ドラマ、見たことないのだった!
ジャニタレ主演のドラマなんて、ジャニーズファンとか女子高生またはオバサン、いわゆる“女子供向け”だと断定されて俎上にも乗らないことだって往々にしてある(現に私も、数年前までそれに近い感覚だった)。そんな中、ジャニーズものに時代性を見たり、タレントひとりひとりを役者、表現者として分析するこういう本はとってもうれしい。これ読んで、イヤンあれもこれも見なきゃ!と思ったもん。 特に、『花より男子』(2も含めて)を見ていないっていう己が不覚を恥じたね。
二宮くんの演技について、『流星の絆』での「いいわけねぇだろ!」についての
喜怒哀楽では表現できない複雑な感情の固まりをぶつけられたような気がした
という表現には、うんうん頷いてしまったし、『流星の絆』というドラマを
現時点におけるテレビドラマの最高到達点
と評する根拠も理解できる。だから、見ていないほかの4人のドラマ論、演技論についてもきっと妥当なことが書いてあるんだろうと思うけど、嵐についてはこの本、基本的に批判精神ってのは発揮されてないです。キムタクさんについては発揮されまくっているのと対照的。ま、現代の時代性からみたらどうしたってSMAPのほうが分が悪いわけですが、ちょっとキムタクさんかわいそうかも。その批評がことごとく的を射てるから、なおいっそう(笑)。
でも、SMAPについてこういう(賛辞でない)ことを言えるようになった時代になったんだな、と思うとしみじみするし、
どんな大スターでもいつかは時代とズレて、やがて失速する。しかしそこから不死鳥のように蘇るときにこそ、時代を超越した存在となれるのであり、逆に言えば時代とズレたときにこそ、その才能が試されるのだと思う
という文章からは、今現在、人気最高潮だから、あるいは落ち目だから、とかで優劣を断じる安易さを超えた、筆者の透徹とした目線を感じる。
成馬さんは、どんな役者もどんなドラマも公平な批評性をもって見ていて、賛辞も批判も書けるんだろうけど、この本では嵐(やその出演作、またその作り手)については後者は書いてない。それはこの本の主眼に反するからだが、ブログの愛読者としてはそれも読みたいなあ。あと、本では、文章の感じもかなりブログと違う。平易で優しい感じの文章になってる。新書って、あまねく読まれるためにアクを抜く(あるいは、逆にアクばかりを強調する)ところがあるのだろうか。この人の本が出たらまた買いたい。そのときはブログの鋭い切れ味がもっと味わえる本だといい。