『不毛地帯』第12話
健康を損ない、タフな交渉相手にはことごとく裏をかかれ、もはや正気というものを失いかけている岸部一徳の不気味な怖さ、哀れさもすごいんだけど、いやー遠藤憲一! やっぱりこの人が出てくると、ぐっと面白くなる。
「私は今、石油でガッポガッポ儲けてるんでね。残念ですが自動車には少しも興味ありませんよ」
どの口でそんなこと言うか〜! フォーク(もちろんフォードがモデルよね)の調査団の長、アーリックマンを温泉で接待しながらよ〜! ていうか、この男の温泉シーンってなんなんだよ! どういうサービスだよ! 鮫島(遠藤の役名ね)、脱いでもぎらぎらしすぎ!
そして、取引先のおえらいさんをお見舞いに行った病院で、偶然、岸部一徳を見かけるのだが、車椅子に乗せられ、精彩というもののまったくない一徳の姿を見て、ライバル会社の重役として、「これはチャンス」なんて喜んでしまう気持ちはわかる。わかるが、ニヤッとする、とかならともかく、口に手をあて、さもおかしそうに「くふっ」て吹き出すってなんだよ! 鮫島、おまえって奴はよぅ!
やたらと暗く重く、まじめな演出が続く「不毛地帯」だが、遠藤憲一の周辺についてはこんなにも奔放に描いてくれることがうれしいです。