『不毛地帯』 第11話

年末年始のなんだかんだで1ヶ月も放送ブランクがあったので自然と熱も冷めていたんだけれども、始まってみるとあまりの面白さ。身悶えしながら見た。とにかく一徳だ。遠藤憲一がまったく出てこなかったことも気にならないくらい、岸部一徳に釘づけ。もう普通じゃないんだもん、里井副社長(一徳の役名)。むかし、沢田研二と同じグループで音楽やってたなんて信じられないくらいだ。・・・って事実を、最近知ったんですけどね、わたし。

まったく、一徳が心臓発作で倒れたことで、こんなにも盛り上がるとは。

「どんだけ金使ってもいい、必ず治すんや!」と心から心配して叫ぶ大門社長(原田芳雄)のいい人っぷり。そして、「商社マンが心臓病とは、気の毒なやっちゃ・・・」と、本当に気の毒がる心情を、一徳の腹心の部下・角田(篠井英介)に吐露するのだが、それを聞く篠井の目に宿った酷薄な光は、(今後は一徳に尽くしても俺にメリットはないな)と語ってませんでした?

唐沢の前で発作が起きてしまい、彼が救急車を呼んだせいで、仕事や出世に係わるからとひた隠しにしていた心臓病がバレてしまったとなじる一徳。だいたい、唐沢があらわれたせいで、一徳の仕事は思いどおりにならないことだらけなのだ。このうえ、部下にまで見捨てられ、病状もひどくってことになれば、一徳は、どんなにか唐沢を恨みながら死んでいくだろうか。

このドラマ。まず、ギバ(柳葉敏郎)が死んだ。唐沢が、仕事の成就のため心ならずもとった行動もギバを追い詰めた。ギバは唐沢には恨み言ひとつ言わず、でも、絶望して自ら轢死を選んだ。唐沢は自らの責任を深く感じ、辞職するとまで社長に言った。

次に、マッチゲさん(松重豊)が表社会から葬り去られた。彼もまた、唐沢のプロジェクトの犠牲だった。近畿商事を解雇され、懲役を受けた(んだっけ)彼は、離婚され、まっとうな職にも就けず、裏社会で生きる惨めな姿を露悪的に唐沢の前に晒した。

和久井映見も死んだ。夫・唐沢のために長年尽くした彼女は不幸な交通事故に遭ったのだけれど、「あのとき俺が呼び止めなければ」と唐沢は悔いている。和久井は夫・唐沢と小雪との仲を勘繰る中で死んでいったので、唐沢は根本的にはそのことを悔いている。

そして今回の一徳だ。彼もまた、唐沢を恨みながらドラマを去るだろう。唐沢は悪意の人ではない。誰のことも陥れようとなどしていないし、奥さんの生前には浮気もしなかった。むしろ潔白な人格であり、そもそも「国のために」軍人になり、戦後ですら「国益をもたらすために」と商社に入ったのだ。なのに、周りの人には次々と不幸が押し寄せる。まるで唐沢は死神。それと引き換えに、彼自身は出世していくのだが、そのたびごとに彼自身は心に重い十字架を負っていく。

怖い、怖いねえ。これからどうなっていくのだろうか。竹之内には、どんな不幸が待っているのだろうか。遠藤憲一には、正統派のライバルとして、パーッと華やかに散っていってほしいものだが。そして、死神・唐沢を最後に癒すのが小雪なんだろうか?