卯月の九 「サク、ホットケーキを作る」

(『とと姉ちゃん』的副題。笑)


●4月某日: 今週1週間は自由登園期間。今日はお休みすることにした。3週間ぶりの幼稚園生活で、いきなり月曜から5日間みっちりは子どもも疲れるかなー、という母の思いやり(笑)もあるが、自由登園期間中は給食がない=お弁当を作らないといけないので、その中休みが欲しかったというのも大きい。

おうちでの昼ごはんは、サクたっての希望でホットケーキに。これまでも、材料や道具を用意し、混ぜ混ぜして生地を作るところまではサクがやってきたのだが、今日は焼くのもやってみるという。『よつばと!』でよつばちゃんがチャレンジする話があるので、それに触発されたらしい。

いつもは面倒なので割と大きめに作るが、サクがやるので、おたま1杯分ずつ焼くことに。「うえのほうから、フライパンのまんなかに、そーっとおとすんだよね」「ぷつぷつ、ってしてきたら、やけてきてるんだよね」と、『よつばと!』で得た知識を正確に覚えていて実践するサク。そしてひっくり返すのは・・・1回目から上手にできた! よつばちゃんが何度も何度も失敗して、大泣きするのを見てとーちゃんが新しい生地をこしらえ、「まだまだ作れるぞ。と―ちゃん実は、“ホットケーキ大好きマン”だ」という名シーンの実現は必要ありませんでした。

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計4枚ほど作成したサク、「すっごくたのしかったー、おれ、やくのだいすき」。もちろんおいしい、おいしいと次々と平らげ、あとからも「どうだった?おれのホットケーキ」と得意顔で聞いてきたり、帰ってきたパパに報告したりしていた。

夜ごはんは、肉じゃが、ひじきとベーコン・玉ねぎの塩煮、小松菜のお浸し。肉じゃがが好評。やっぱり、ハンバーグとか肉じゃがとか豚汁とかみたいな「基本メニュー」って家族にウケがいいのよね。日本人の夜ごはんだよね。

 

 

>>うそ!つらい生理痛が? 鎮痛剤、飲みすぎかも・・・がまんできない痛みを天然ジュースで緩和しよう

 

 

 

『重版出来!』 第8話

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和田さん回。松重さんは世に出てからもうキャリア長いけど(私が知ったのは1990年代後半の大河『北条時宗』)、この3年ぐらい、特にいい役が続いてるよな! 真のブレイクというか。

この和田編集長も、おもしろい役。熱狂的な虎党で、負け試合の翌日は機嫌が悪く、声が大きく、ぶちあげて勢いで何とか突破しようとする。要はいかにもなオヤジキャラなんだけど、マンガへの愛情は深く、仕事への情熱があって、部内の案件には的確な判断と指示をする。良い上司なのだ。そのうえ、情も深い。マッチゲさんの顔と身体性が和田を生き生きと立ち上げて動かす。

とはいえ、やってらんないよね、情熱も枯れそうだよねーっていうマンガ不況、雑誌不況、出版不況時代の編集長。編集部では威厳(というのかなw)があって、役員が居並ぶ会議ではガーッと大声でぶちあげといて、飲み屋では岡とぐちぐち言いながら一杯やる姿にホロリとくる。ごくろうさんです。

一世を風靡したあと今は廃人に近くなっているマンガ家、牛露田の娘アユに、黒沢はある少女漫画を薦める。綺麗な絵を描くその漫画家の本は、おなじみの書店員・河さんのつらい学生時代を救ってくれたものだった。仏像フェアなんか企画してたから、オタク方面の本読みかと思いきや、河さんの本の世界はそこから始まって、はるか広い裾野を持つようになっていたのだな(笑)。

繰り返し描かれる、本に救われる読者の姿が、本好きにはぐっとくる。

怪我で選手生命を絶たれた黒沢。若き日の高田純次社長。河さんの思い出話。そして今回のアユ。広げた本は、さながら翼を広げた鳥のようだと。

一方で、書く側の苦悩。新人の大塚と中田は共にスランプ。共感力が高すぎる大塚と低すぎる中田w 「中田くん、すごい顔してなかった?」と五百旗頭が言うと、シリアスなシーンにちょっとおかしみが加わる。中田が三蔵山の家に会いに行くこと自体が、視聴者にはなんかうれしい。「どうして沼さんはプロになれなかったんですか」それを聞いて、三蔵山は編集者に「良い兆候だ(大意)」と言う。中田の問いの答えは示さなかったのところに、作り手の意思を感じた。

売る側の苦悩も描かれる。和田の同級生、北野は梶原善。マッチゲさんと凸凹を意識したキャスティングだね。オール阪神巨人というか。阪神と巨人の大小が逆だけどw
苦しい経営状況ながら、プレミアム本をオークションか何かで売りさばくために高値で仕入れようとする若い子たちを毅然と叱りつけるのがこのドラマの作風。脇キャラまでまっすぐでいてくれる。こういう不快感の無さが人気の要因でもあるんだよね。

そんな北野の姿も受けて、
「世の中変わってわからんことだらけでも、大人はかっこつけなきゃいかんでしょう!」
と大声で怒鳴るのが、和田らしい現実との折り合い方、前進の仕方。

卑怯なエンペラーの営業に対抗して人気漫画家のサイン会を画策した小泉が、そんなの邪道だと自ら案を取り下げるんだけど、対抗心から書いた手紙でもめちゃくちゃ真摯な思いがにじみでちゃってそれ読んだ作家先生が登場、河さん固まる!
っていうラストがすごく良かった。小泉も、本を愛する気持ちを的確な言葉で表現し伝えられる人材なんだよね。

 

 

 

 

卯月の八

●4月某日: サク、久しぶりの幼稚園。といっても新学期ではない。現在、園のすぐそばで大きな建物を壊す工事をしているため、始園日が例年より一週間遅く設定された。しかし春休みが一週間伸びるってつらいよォ~という親子のために、来たい人は来てもいいですよ、騒音・粉塵などはご承知おきくださいという自由登園期間が設けられたってわけ。

幸い、工事は予定より早く進んだようで既に騒音も粉塵もピークは過ぎているが、今日、クラスで登園したのは半分ちょっとの数。幼稚園に持たせるサク弁も久しぶり。春巻き、卵焼き、マカロニサラダ、ごはん。本チャンの保育じゃないので、お弁当の中身もちょっと肩の力抜いていいよね、と自己判断。

さて11時過ぎ、関東から帰福してきた親友と待ち合わせ、見ごろはもう終わったけど・・・な、花の少ない花見ランチを我が家の近くで催す。親友、「おにぎらず」やら卵焼きやら持ってきてくれた。私はサクの弁当にも入れた、少し色黒の春巻きちゃんとさつまいもとりんごのサラダ、いちごを・・・。双子ちゃんは約半年弱ぶりかな、よちよちと歩くようになっている。2人ともご機嫌よろしく、「はい、どーぞ」してくれたり、たくさん笑顔とリアクションをくれてたまらーん。それにしても1歳児2人に同時に食べさせるのって当然ながらカオスだね!! 

うちに移動、14時にサクを幼稚園に迎えに行くときは3人には留守番してもらった。サク、お客さん、しかも双子ちゃん来てるよーというとはりきって帰る。夜ごはんは、残りの春巻きを揚げたほか、手羽元煮、サツマイモサラダ、トマト。

 

●4月某日: サク弁、ごはん、春巻きの具の残りを卵巻きに、ウインナー、さつまいもサラダ、りんご。うちの園は「お弁当にくだものは、いりません」という教えなんだけど(!)、今は正式の保育期間ではなく自由登園期間なので、いいよねぇー別に。こういう自己判断って母親の性格出ますよねw はー、しかし、幼稚園って有難いな。実質4時間ちょっとだけど、この時間はすごく大きい。

とはいえ、子どものほうは、久しぶりの幼稚園=集団生活・・・しかも、自由登園期間で、みんなが来るわけじゃないし、年長さんに進級したわけでもない宙ぶらりんな状態に、ちょっと「?」な状態になっている様子もある。夜ごはん、うるめいわし、きんめ鯛の切り身西京焼き、豚と野菜の重ね蒸し、ニンジンサラダ。『嵐にしやがれSP』の続き、『ふしぎな選taxi』の録画の続きなど見つつ、ビール、白ワイン。マツコが出るの久しぶりに見たけど、面白いなー。

 

卯月の七 東京旅行 その3

●4月某日: 東京3日目、今朝はのんびり。部屋でとと姉ちゃんを見てから、夫とサクが地下階のコンビニに朝食を調達に行く。サク、レゴのアニメに夢中。地上波だったみたいだけど、福岡では見たことない。10時半過ぎにチェックアウト。いいホテルだった。

丸の内から無料巡回バス。真ん中のドアから乗ろうとして、運転手さんに「前から乗ってください」と言われる。ああ、夫ともども、真ん中から乗って前から降りるのは福岡のローカルルールだと知っているのに、ついつい・・・。

皇居、二重橋。初めて来た。都心からこんなに近いのに、とっても広くて、とっても静かなのですね。

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外国人観光客も多かったです。

歩いて丸の内KITTE。テラスから新幹線見たり。山手線で上野に移動し、美術館(博物館だったかな?)のテラスで軽食。今日も良い天気で、外で食べるのが気持ちいい。さあ動物園へと向かって、行列ができているのに驚いた。最後尾に、切符売り場まで30分、とプラカードが掲げられている。動物園の切符を買うのに30分並ぶのか、トキオシティ!! まあ、並びましたよね。並んでる全員が切符を買うわけじゃないんで(グループごとに代表者がまとめて買うからね)、けっこうするすると進んで、20分弱で入場門にたどりついたかな、ぜぇ。

中は広いので、息苦しいほどの人口密度ではありませんでした。マップを手に、私たちの先を小走りで進む、動物園ではブイブイ言わせるサクである。同じ動物園でも、園によって少しずつ展示方法が違ったり、工夫が見られたり、けっこうおもしろいもんですね。村上春樹が、国内外を問わず旅先では行ければ必ず動物園に行く、というのが何となくわかるような。まぁ、子どもが大きくなれば足が遠のくものだろうけど、ふと行く機会があれば、こうしてはしゃぐ子どもと一緒に回ってたときのことを思い出すのだろうな。ホッキョクグマとジャイアントパンダは福岡市動物園にはいないので、さすがにテンション上がりましたね。特に、お尻向けてたパンダさんがこちらを向いた瞬間。「おお・・・!」と囲む人々から口々に歓声が漏れていました。

16時過ぎ、東京駅戻り、入場券を買って再び新幹線乗り場。E7系やらとの別れを惜しむ。モノレールで空港、おみやげを買って、18時フライト。さすがに疲れました。大人も疲れたから子どもだって当然疲れている。よくがんばった。帰宅すると「あー、とうきょうたのしかった。おれ、とうきょうすみたーい」と繰り返すサク。寝かしつけて、夫とおつかれさま会で白ワイン空ける。『精霊の守り人』第一部最終回。

 

●4月某日: 日曜日。旅行疲れからのもろもろ復帰デー。ゆっくり寝たいし、洗濯物もいっぱいあるよ。野菜をいっぱいとって、味噌汁とか焼き鮭とか、そういう食事で体が喜んでる。昼下がり、「サクの自転車散歩行ってくるねー ついでに買い物もしてくるね」と出て行った2人がなかなか帰ってこないなと思ったら、大人の自転車の前輪がパンクしていて、修理に持って行ってたとのこと。よ、よかったー。明日の朝、幼稚園に行こうとしたときに気づいたら、大変なところでした。真田丸、大坂編のスタート。面白い!!

 

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卯月の六 東京旅行 その2

●4月某日: 旅先では「あ、そうだ、○○にいるんだった」て感じでスキッと目覚めの良いサク、今朝も起きるとすぐに窓際に、真下の線路を見に動いた。ちなみに部屋は、ツインに1つベッドを入れてもらっているので多少狭い。

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昨日とは打って変わって良い天気であたたかい。ホテルから地上を歩いて地下鉄大手町駅へ。10年前、夫が2年間勤務していたビルも通った。今日は平日なので、午前中の大手町はもちろんビジネスパーソンだらけ。それを見てつくづく思うのは、東京は、日本人+外国人の組み合わせで歩いてたり、食事をしたりしているビジネスパーソンが多い。言語は、英語の場合もあれば日本語の場合も。同僚だったり、クライアントだったり、とにかく一緒に働く相手なんだろう。福岡では、こういうのはあまり見ない。

私たちは大手町から地下鉄半蔵門線に乗って押上まで。





スカイツリーってツリーだけじゃなくてショッピングモール部分めちゃめちゃ広いのな! これ全部地上げしたの? もともと、なんか広い施設だったのか? 4Fのテラスまで、うちのマンションのエレベーターと同じくらいのスピードで着いたのは驚き(そりゃ多少は盛ったけど体感としてほとんど差がなかった)。眺めはもちろんすばらしい。サクも地図と景色をじっくり見比べていた。天候はよかったけど富士山までは見えず。隅田公園や隅田川沿いの桜がとても綺麗。サクはプラレールショップ、私はおみやげを少し物色してフードコートで昼ごはんを食べ、いったんホテルに戻る。意外に時間を費やして、その分、すでに足を使った感じ。

しばしするとサクがやる気になったので、品川アクアパークへ。ここ、一昨年の夏、映画HEROの特番でキムタクと松たか子がアポなしデートしてたとこですよね!! デート向けっぽい、暗めだったり照明に凝ったりな演出もありつつ、奥に行くほどにシンプルな展示になっていって、トンネルになっている大きな水槽にはサメやエイやウミガメなど大物もたくさんで、子ども喜ぶ。

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イルカショーも立派だった。夫とつきあってる時代は一度も行ったことなかった水族館という場所に、ここ2,3年で何度か来ている。大人が見ても、なんか非日常感あっていいよね、と話す。

地下鉄で東銀座に移動し、歌舞伎座。ちょうど夜の部をやっている時間だけど、観劇は再来週博多座でしまーす。地下でおみやげなど見る。小腹がすいていたサク、次から次に試食させてもらって満足げ。美味しそうなお菓子など家族や友だちへいろいろ買い、渋ーい三枡の柄の手拭いを自分のおみやげに。夕食は、有楽町イトシアのイタリアン。ここも、席とテラスから新幹線や電車が見られる。美味しい食事と赤ワイン。お店の人もとても優しく、あたりだった。

 

『とと姉ちゃん』 第11週 「常子、失業する」(下)ツイートと追記: どんな人のどんな暮らしも等しく大事なものなのだと

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【おまけ】派生考など



























星野からのプロポーズを断り「とと姉ちゃん」人生を選んだあと、太平洋戦争期に突入するのかと思いきや、ここで森田屋が退場。ミッチー・唐沢の二大巨頭は戦後に登場かと思いきや、今から顔を出すようで、驚きの今週だったんだけど、すごく、すごく良かった。これまでの脚本が次々に実を結び始めている感。

そして退場時に、森田屋との暮らしが何だったのか、鳥巣商事での仕事が何だったのか、それが暮らしの手帖にどうつながっていくのか、ほとんどはっきり見えてきたのが何かすごくうれしくて、これから劇中は一番つらい時代になるけど、今後がますます楽しみになった。

ミッチー&唐沢以前・敗戦以前に見えたきたその「暮らしの手帖」思想(と勝手に命名)は、「生活の知恵・工夫」「丁寧で美しい暮らし」みたいなものより、もっと本質的なところまで掘り下げられているのが明らか。森田屋のガサツさやお下品さも、滝子とまつの意地っ張りで痛々しい当てこすり合いも、「守られるべき、当たり前の日常」だったのだ。誰のどんな日常も人生も等しく尊重されるべきもの。それを阻むのは、何?

真摯な作り手だと思う。

キャラ萌えに走らない正統派な人物描写にも好感がもてて、長谷川の描き方にその良さを痛感。受け売りばかりのようで、彼はその言葉たちを自分のものにしているんだな。だいたい、その知識を何かで読んだり聞いたりする(テレビはまだないよね)インプットの時間が彼にはあったということだよね。

傷ついた常子に、早乙女さんの「まっすぐに生きて。負けないで」は通じず、長谷川の「柳のようであれ」が響く。「柳のようにやり過ごす」。「負けない=何者かと戦う」のではなく、「日々の暮らしを大事にしながら嵐が過ぎるのを待つ」なんだろうな。ただ、ここからの嵐があまりにも大きいのを、後世の私たちは知っている…。

 

 

『真田丸』 第24話 「滅亡」

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信繁は歴代大河の“アゲられ主人公”のように、情を前面に出したトンデモ熱弁をふるったわけじゃないんだよね。冷静に状況説明をしつつ、降伏すれば命は助けるという条件を提示しその上で「どうか助かってほしい」と伝える。和睦交渉の使者として過不足ない弁。だから信繁は使者として十分に務めを果たしたけど、「信繁にしかできなかった仕事。信繁スゲー!」って意図で使われない。分相応に有能な使者の口上も合わせて、氏政は状況を考えた。考えて、氏直を呼んで、降伏を決意した。



伊達は来ない。関東の諸将は誰も味方に付かない。勝つことはもうできない。そんな状況がようやく氏政にも腑に落ちた以上、「城を明け渡し降伏すれば、兵も氏直も助かる」最終的に、それが落としどころになったんだろう。“己の戦”をしても、多くの命を預かる大大名としての自負がそうさせたんだろう。広大な領土が良く治まっていたのは、北条の領国経営が良かったからで、氏政は良い領主だったはず。前回とは打って変わって、そんな姿が滲む今回だった…。「必ず命を助ける」と家康に握られた手を、「貴殿に災いがふりかかる」とふりほどいたのも、自らの矜持のためだけじゃなく、家康の真の情を感じたからこそ情で返したセリフだったと思う。

勝頼や滝川一益と同様、「滅びる(退場)」するときは美しい、「真田丸」における北条の最期でした。いやはやあの氏政さんがこんなに気高いなんて、と驚きつつ、すごく納得感があるんだよね。

ところで今回「誰も彼もが秀吉に降って組み入れられる中、氏政だけが己のための戦をしている」というロジックが非常に強く打ち出され鮮やかに印象付けられたことに、ちょっと「おや?」と思いました。

この真田丸世界において、大名や国衆たちは、「己のための戦」をしていたのかな? 

物語の冒頭である第1-2話、岩櫃へ向かう真田の一行を半武装農民たちが襲ってくるシークエンスが印象的だったように、「貧しいから食うために殺す」のが根底にあって、真田の里の入会地紛争なんかもその延長線上にあり、「襲ってきたから防ぐ」「攻められないために同盟/臣従する」「奪われたものを奪い返す」ようなのが真田丸の戦国模様で、決して昔の戦国ドラマにあったように「領土拡大欲」「自己顕示欲」みたいなもので戦争をするわけではなく、それがあったとしてもせいぜい信長や秀吉レベル。家康ですら「生き延びればそれでいい」と言っていた。

でも、秀吉配下に入って、実際はポッと出の秀吉なんかよりよっぽど長年の腐れ縁的親しみを感じている北条を攻めなければならなくなったとき、昌幸も景勝も家康も、「生き延びるための戦」「自分の領土は自分で戦って(同盟や謀略も含めて)守る」ができたこれまでを「己のための戦ができていた」と思ったのだろうな。




要は、「己の領土は己で守る」の時代になったのが中世なんだよね。武士が台頭したことによって、古代(平安まで)の律令・中央集権国家から脱して、自己解決・自己救済の時代になった。今はそれが終わろうとしている。己の領土を守るため・生き延びるためであれ、戦争していいか?したいか?って言ったらしないほうがいいに決まってる!って思うのが近世近代現代の人間であって。今はその過渡期なのだよね。

ただ、現実にその過渡期にいれば、「そうだよね秀吉に臣従するシステムであっても、やたらめったら戦争しない世の中のほうがいいに決まってるよね」ってみんながみんなすんなり思えるわけはなくて、どうにも思えなくって「乱世に戻って何が悪い」と言っちゃうのが昌幸で、「乱世に戻るなんて良いわけがない」と疑いなく思えるのが信幸なんだな、っていう構図ができてますね。





家康は今んとこ、どこまで考えてるかは謎。家康も、信幸ほどには「秀吉の下での天下一統」(統一じゃないのね!!)にすんなり割り切れてないのは明らかだけど、「いずれ俺が代わって起つ」とまでは、まだ、なさそう。やっぱり家康も、戦国システムにしっかり乗っかって大名してきたわけだからね。嫡男とはいえ信幸とは、預かってきたものの大きさや経てきた時間の長さが違うわな。

そう、信繁、家康ともう一人、信幸もまた、このドラマにおける「見つめる人」なんだな。「伊達と連絡をとれ」と、いけしゃあしゃあと言う父を見つめる表情は何とも言えなかった。慌てるでもなく、懐疑するでもなく、もはや父のことを透視できてるみたいに、ある意味澄んだ表情だったんだよね。

秀吉や三成、茶々や家康とも近しかったりして、今で言うなら「東京の超大手企業でインターンやってます」みたいな信繁に比べると、信幸が見たり動いたりしている範囲はずっと狭いんだよね。主に、父と共に、そして父を通して世の中を見ている。そんな信幸が、もう近世人の萌芽みたいなフラットさを身に着けている描写は面白いと思う。お兄ちゃんの成長はすごい。

んで、一方の昌幸なんだけど、景勝の「髻を切る」発言にぎょっとしたり、ずんだ政宗に落胆したり、秀吉に小県・沼田を安堵され与力を解かれて大喜びしたり、多彩な表情を楽しませてもらったんですけど(笑)、この人、オフィシャルの場で、ここまで露骨に顔に出るタイプでしたっけ? 

滅亡目前の勝頼に対して、「武田は絶対に滅びません!」って微塵の揺らぎもなく言ってた人ですよ。内心は「武田は滅びるぞ」だったくせに!! それができる昌幸だから、生き馬の目を抜く戦国乱世で生き延びてこられたはずですよ。秀吉の配下なんてイヤだ、乱世に生きたいんだと言いながら、実際は戦国の武士としての能力、弱ってない?! ってちょっと心配になる。

心配といえば三成で、なんでよりによって昌幸に戦の指南を頼むんだ!! 三成こそ「戦国乱世を終わらせたい」という気高い志を掲げているというのに、近世人の志と昌幸の汚い手の食い合わせ悪すぎるだろ!!w おまけに幼なじみにすら理解されないくらいに冷酷無比人間と思われてて、それでも芸の無い純粋まっすぐ君なワザに徹してれば「三成ったらぷぷぷ」ですむものを、眉ひとつ動かさずに汚い手を使ってごらんよ、ああ惨状が目に浮かぶ。

忍城攻防戦をここに帰着させるのかー、ってくらくらしたね。そして名前も出てこない成田長親っていうか萬斎さんの影がどでかい2週間でしたね。三谷さんのことだから絶対狙って書いてたと思う。萬斎さんだし、「のぼう」も絶対押さえてたはずだ。




あの宴にいたみんなが道化を演じる政宗に苦笑してたけど(たぶん秀次以外)、でもあの場のみんなが政宗でもあるんだよね。秀吉になれず、氏政にもなれず、秀吉に降って命乞いをし本領安堵を願い、そのために身を粉にして働かざるを得ない姿。そして、それは私たちの姿かもしれない。ひと握りの成功者になれなかった大勢の私たちの。「もしもう少し○○だったら」「もう少し○○でなかったら」と悔いながら何かに屈し現状に甘んじるしかない私たちの姿。

それをじっと見つめる信繁がね。何を思ったか。こういう日々がどう結実していくのか。それにしても政宗役の長谷川朝晴さん、よかったなー。次に出るのはいつかな。




これ、ツイートしたあとで考えてたんだけど、秀吉は人心に敏い部分はあっても、「情」でのケアは昔からしてなかった、できなかったんじゃないかなあ。やっぱりそこは「欠落」なんじゃないかな。

その部分を担っていたのが、「秀吉は昔から怖い人」と知っていた寧や、人格者である秀長なんじゃないかな。前回、その2人が聚楽第に残って会話するシーンが「何の意味が?」ってわかんなくて印象に残ってたんだけど、秀吉が茶々を身辺におくようになり寧とはこれまでの違う距離感になることによって、そして秀長が病で世を去ることによって、これまで寧と秀長とで支えてきた大事な「人情」みたいな部分がどんどん機能しなくなって政権の崩壊にもつながっていくのかなあ・・・と。

それから今回は利休についての面白い描写が、また。仮にも戦場の小田原でまで移動店舗営業してたと思ったら、何と北条にも鉛を卸していた! これはさすがに「商魂たくましい」では済まされないことのようで、急いで引き上げていく画がありましたね。

秀吉と対照して「聖人」のように描かれ、「だからこそ滅ぼされた」描写がほとんどな利休を、利益重視の商人、つまり思いっきり俗人として造型しているのが本作の面白さですよね。

で、今回がこんなだったから、利休切腹(これネタバレじゃないよね?w)への道筋が見えた気がした。自分が、自分が率いる堺商人たちが儲かるから、そのためなら戦争だってやってほしい。という利休もまた、「己のための戦をしている」一人なんだ。そして、そんな人間は、氏政同様、滅ぼされなければならない。己のための戦ができない新しい社会システムを作るために。そこに噛んでくるのは、きっと、乱世を終わらせたい三成ですよね・・・。

しかし秀吉の立ち位置がまだよく見えないんだよね。彼が何で天下統一したかったのか。彼にとって天下とは何なのか。それは今後、朝鮮出兵の局面で明らかになってくるのかな? そして三成の忠誠心の源も、これからだと思う。私たちは「石田三成だから秀吉に尽くすのは当然」って目で見ちゃうけど、このドラマの三成の秀吉への思いは、(思いの強さは描かれていても)思いの何たるかはまだ明らかになっていないんだよね。



景勝と直江がものすごく香ばしかったんだけど戦国大名的にはものすごく痛かったw

江雪斎の退場はものすごくかっこよかった。ほんと、印象に残る場面だった。主君の助命ならず為すすべもなくその場を去った画としても印象的だし、このあと秀吉に・さらには家康に仕え旗本としての家を残すという史実を知っていれば、また含蓄がある。北条の旗を両サイドに、主君の居間をじっと見つめ、そして彼は足早に去った。

そうそう、触れるのが遅くなったけど「生きていればいいこともある」を地でいったのが小山田の義兄上でしたね。関東の大大名、氏政と対比されるのが、浪人あがりの一兵卒の彼というのが面白く・・・というか、茂誠さん自体が面白かったですよねw 気になるなー。ものすごく気になるなー、って。でもさ、「生きていればいいことがある」は真理だけど、「生きていれば、いいことがあるかもしれないけど、そのあとでまた悪いこともあるかも」ってのがホントの真理なんだよね。トットてれびで向田さんがこないだ言ってた、「禍福はあざなえる縄の如し」。義兄上の喜びに留保をつけたのは、そういうことなんじゃないかな。

 

>>身体が冷える・風邪をひきやすい・近頃元気がない
そんなあなたに キラキラ、果実ジュース。

 

 

『とと姉ちゃん』 第11週 「常子、失業する」(上)ツイートと追記:どんな統制も超えるものがあるってカタルシス

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徳の高い顔して常子を褒めた部長はコネ入社のため平然と首切りを命じ、それを知った多田さんは常子を陥れる。ビアホールでは粗暴な男たちが常子を囲み、誰も助けない(多田さんは逃げる)。助けたのは、社会の底で生きていると思われるお龍。彼女の子分が夜道の常子を護衛する「自分とあんたとは生きてる世界が違う」。

森田屋ではいっそう仕入れが困難になり得意先も潰れ、宗吉が荒れている。君子の給料も差し止めに。不安がる家族に、自分が稼ぐから大丈夫、自分は恵まれている、と語る常子は翌日、解雇になる。部長にくってかかる常子。早乙女は目を背ける。多田は常子に許しを乞う。常子ははねのける。会社を去る常子に早乙女「まっすぐ生きても報われない時代。でも負けないで」。常子は悄然と「今は受け止められない」。

深川も不景気極まりない。材木問屋は陸軍から、肯定か買うの半額で木材を拠出するよう言われる。心労で倒れる滝子。商いの寄合では商売をたたむという者が続出、森田屋の最後の得意先もその1つ。まつは泣きつくがもちろんどうしようもない。そこで最近、家を空けることが多かった照代が「うちもたたみます」発言。照代の兄を頼って高崎に引っ込むことにしようと言う。自分だけが知らされていなかったまつは激怒し、移転を承諾しない。そこで明かされる富江の妊娠、相手は長谷川。

いやー、とんでもなく面白い週前半。

常子は理不尽な解雇に遭い、しかも同僚の心無い仕打ちまで知ってしまうんだけど、同時に多田も早乙女も「社会的弱者」であることが際立つ。自分が弱者だから、人を陥れる。人を庇えない。自分が生きなきゃいけないから。そこでさらにお龍たちが現れることで、「世界が違う」=「さらなる弱者」の存在が示される。彼らは社会システムの中にいる側からすると「どん底」の人間に見えるんだけど、ある意味社会システムの「外」で生きているから、システム内での力関係などは関係ない。だから常子を助けることができたんだと思う。

まっとうな商売をしてきた森田屋や青柳にも時代の波。社会の中で生きていれば誰もが弱者になりうる。社会の統制により人々は共に疑心暗鬼になり共倒れしていく。その裏でひとり奔走していた照代。まつに黙ってたのは道義的にひどくても、それもやっぱり生きるため。彼女は正面きってまつに頼む。切実に、何度でも。その強さがどこからきたか? ひとつには、富江のお腹の命である。こんな世の中で、人々の様々な欲望を統制している世の中で、2人は個々の欲望に忠実に「乳繰り合って」新しい命が宿っているんである。すごい。

もちろん個人は弱い。こんな世の中で、窮状にある森田屋に生まれて子どもが楽な人生を送れるか? わからない。弱者の再生産かもしれない。それでも、どんなときにも新しい命は生まれてきた。どんな時代でも、どんな紛争地でも。生まれる命のために人は奔走し、生まれてきた命は必死に生きる。月曜からの3日間、沈鬱な描写が続いたけど最後の1分のものすごいカタルシス! 人は社会システムのためじゃなく個々の人生を生きるんだ、っていう希望。

 

卯月の五 東京旅行その1

●4月某日: 早起きして、いろいろ雑事&準備。旅行前に済ませておきたいことがいろいろあったけど、昨日・一昨日と具合が悪くてストップしてたので。全部はできなかったけど、まぁしゃーない。

朝から雨が降っていて風が強い。テレビでも「台風並みの心構えを」なんて言ってる心配したが、フライトは定刻。飛行機は2年半ぶりくらいのサク、とてもとても楽しみにしていて、離陸時に怖がるかなと思ったけど大丈夫だった。

ていうかこの人、事前に「何か持って行きたいものがあったら言ってね。そうだ、書きだしてみたら?」という私の提案に、UNOとか折り紙とかはまだいいものの、本を5冊(飛行機&新幹線の図鑑、地図の絵本、お気に入りのマンガ『よつばと!』)とか、トミカを10個とか、なんかどうなの(笑)。たった2つ寝るだけだよ、と言っても持って行く本をなかなか絞れない。私の血っぽいわ…。

 

さて正午ごろ羽田に着。お弁当を買って、離発着がよく見えるデッキ(というの?室内だけど)で食べてから、モノレール。浜松町から山手線で東京駅。新丸ビル6Fのテラスから東京駅の駅舎と、そこから伸びる線路を見る。今日の東京は13度くらいでずいぶん寒いが、子どもは喜んでテラスに滞在。

15時、八重洲口からすぐのメトロポリタン東京にチェックイン。JRがやっているホテルらしく、ロビーには東京駅周辺を模した模型が展開されていて、電車と新幹線が動いている。over30階の部屋からも、ほぼ真下に線路が見えて、滞在中、飽きずによく見ていたサクだった。

熱は下がったけど体力の回復はイマイチな私はいったんここで力尽き、部屋で休憩することに(寝た)。夫とサクはしばしして、入場券を買って東京駅の新幹線のりばの見学に。そこで、博多駅はじめ九州ではお目にかかれない、E5系やらE6系やら7系、そしてそれらの連結シーンが間近に見られ一緒に写真も撮れて、夫いわく「久々にサクの本気を見た」。興奮のあまり、ホームをダーッと疾走し始めたらしい(良い子はしちゃいけません)。

6時、再び新丸ビルまで歩いて、予約していたお店で夜ごはん。さすがにここでサクが疲れを見せたので、大急ぎでビール・ワイン赤白飲んで、自家製ソーセージやらパンやらアヒージョやら食べて、部屋に戻る。(そして部屋で飲み直す)

 

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卯月の四

●4月某日: ゆうべは38度5分まで熱が上がり、苦しくてなかなか熟睡できず、朝起きても37.9度。うーむ。夫が出勤前に、ポカリやら果物やら当面の必要物資を買いに行ってくれて、サクに朝ごはんを食べさせてくれた。

なんとかかんとか起き出して病院へ。「おかあさん、おれをじてんしゃにのせるの、きつかろ? おれ、じぶんのじてんしゃでいくけん」と、自分の自転車ドライブに意欲まんまん。うん、そうね、おかあさん寝てばっかりでヒマだもんね、それぐらいしないとね・・・。間が悪いときに行ってしまい(個人病院でさほど混んでなかったんだけど、私の直前が何か面倒そうな(性格的に)患者さんで時間がかかっていた)、なんだかんだで1時間ほどかかる。うう、きつい。そしてめぼしい絵本などは見終わったサクも退屈してる。私の診察に付き添ったサクは、チクン(注射)があるかとワクワクしていたようで、「はい、じゃあいいですよ」と無罪放免(?)される私にちょっと不満げだった。1週間ほど前、まさにここで彼は血液検査のため腕に針を刺されたのだw 

熱は少しずつ下がるも、午後も布団の住人。サクも私を心配しつつ、やっぱり退屈で「おかあさん、まだねると?」とつきまとうから、折り紙の作品を見てちょっとお客さんになってやったり、絵本読んであげたり。全然寝れん・・・。でも、かわいい手紙をくれたりして、かわいい。夫が帰ってきてサクと夜ごはんを食べている間、1時間ぐらいクーッと寝たら汗が出て結構いい感じになった。