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震災と芸能人 4(完)

さて、AKB48グループである。復興支援を目的とした「誰かのためにプロジェクト」によると( http://www.akb48.co.jp/darekanotameni/ )、震災発生3日後に義捐金口座を開設し、5日後に5億円+ファンから集まった義援金1億円超の寄付を実施、その後も、握手会やイベントで募った義捐金、復興支援ソングの売り上げ等で6億円超の寄付を実施しているほか、2011年5月から月に1度のペースでメンバーが被災地を訪問しステージを披露する活動は今も続いている。

AKBのプロデューサーである秋元康がこういった活動に熱心な理由のひとつには、以前にも書いたとおり( http://d.hatena.ne.jp/emitemit/20130330#1364647347 )、彼が1998〜2004年にかけて、NHKの仕事で全国をまわって地方の人々と交流し、作った歌をみんなで歌うという「地味でお金にならない仕事」をしていたからだ、という指摘がある(『AKB白熱論争』(2012、幻冬舎小林よしのりほか共著)。秋元は2013年4月、「復興へ向けた人材を育てる」をテーマにしたNHKの番組「東北発未来塾」に講師として出演し、若者たちに直接、講義やゼミ(のようなもの)を行ってもいる。

彼女たちは大物プロデューサーありきで活動しているし、前述したSMAPはじめジャニーズ事務所のアイドルと比べても、いかにも若く、未熟な雰囲気が漂う(それをセールスポイントにしている部分もある)。「若くてかわいくて、着飾って人前でニコニコするのが好きな女の子」ってだけで、「はい頭カラッポ認定!」て感じに軽侮する向きも、世間にはある。

彼女たちには、若いだけに右も左もわかっていないような危なっかしいところも見られるし、たとえば学校生活なんかがうまくいかなくて、こういう別の道に進んできた子もいる。私自身、彼女たちを基本的に応援しているけれど、あのシステムを無条件に肯定できないなとは思っている。ただ、そもそも、感覚的にスレきってる子はアイドルなんてやらないと思うし、自己顕示欲だけ、華やかな世界への憧れだけでやっていける世界じゃないはず。

彼女たちが、復興支援に携わることから得ているものは大きいだろう。がれきの山をその目で見て、避難所で暮らす人々の声をその耳で聞いているのだ。そのうえで行う慰問のためのステージや、復興支援ソングのレコーディングに、気持ちが入らないことがあるだろうか。若いからこそ、鋭い感受性や、柔軟な考え方ができるのであって、彼女たちの人格形成に、こういった経験はきっと大きく影響する。実際、彼女たちはブログ等で東北の現状や復興について言及することも多い。それらの多くは、お仕着せでない、自分の言葉で綴られている。

こうして書き連ねていくと、私は、彼ら・彼女らの誠心誠意ってやつを感じて、信じているんだなあと思う。というか、それは、現代のアイドルがアイドルたるべきために備える必要条件になっているのかもしれない。

昔は、光GENJIが好きでも、彼らに社会性を感じることはなかっただろう。もしも1980年代に大きな災害が起きたとして、当時のアイドルが熱心で継続的な支援活動を行う姿は想像できないし、それが求められることもなかっただろう。今は逆で、「そういうことは畑違い」という態度では、トップアイドルではいられない気がする。

かつて、社会性、批評性のあるメッセージをこめたフォークソングやロックが時代精神的に廃れた結果、華々しい脚光を浴びるようになったのがアイドルだったのだろう。つまりアイドルは「かわいいだけ」だからこそ、もてはやされた。けれど時代が下って、今はアイドルにこそ、モラルや社会性や献身的態度が求められている。それを社会の成熟とか、アイドル文化の成長とかいうべきなのかは、私にはわからない。SMAPを始めとする息の長いアイドルたちが、そういうふうに時代を導いたのか、あるいは時代の雰囲気、要請があって、アイドルという存在がそういうふうに変化したのか。

どちらにしても、同じくアイドルと呼ばれ、同じく若くて、キャーキャー言われているからといって、20世紀のアイドルと現在のアイドルとでは、あり方がだいぶ異なっているのは確かだと思う。

そりゃ、いくら復興を支援したって、アイドルにできることは限られている。彼らの笑顔や言葉で、すべての人が励まされるわけではもちろんない。支援のやり方や個々の活動には問題点があることも考えられる。また、膨大な仕事を抱える彼らにとって、支援活動は優先順位が低いものかもしれない。

それでも、こういうことは、「とにかく、やる」「少しでも、やる」「やり続ける」ことが大事なはずだ。Eテレでも放送された「東北発未来塾」の企画。秋元康は集まった東北の若者たちに向けて、AKBの『風は吹いている』の中から「傍観者にならない」という歌詞を挙げ、「恥をかいても、バッシングされても、何もしないよりはいい」と言った。

そう、自戒を込めて書くことだが、震災から2年が経った今、「何かをしている」人間ってそう多くはない。優先順位が低かろうと、片手間仕事だろうと、あるいはブランドイメージのためだろうと、支援に携わり続けるのは意味のあることだ。

復興の途上にある人々を直接励ますこと。その様子がメディアで流れたり、彼ら自身がSNSで発言したりすることで、全国に話題を提供し続けること。その結果として、被災した人々と、それ以外の人々をとつなぐこと。大衆的で、露出が多いアイドルだからこそ、果たせる役割は大きい。歌ったり踊ったり、華やかに装ったり、あるいはバラエティでバカやったり、そういう「本業」の一方で、支援も続けている姿は、「両立」とか「できることをやる」とかの体現でもある。彼らの支持者には若者がたくさんいて、彼らはニュースも見なければ新聞も読まない(まだ読むのが難しい年齢)かもしれない、けれどアイドルがいるから震災を思い出すこともあるだろう。

この国の、今のポップカルチャーが好き。アイドルがいてよかったと思う。

そして、その魅力や価値、問題点まで含めて描くアイドルドラマが、現在、絶賛展開中! もちろんクドカンの「あまちゃん」のことです。これに毎朝元気をもらってる人が続出・・・・・・て時点で、アイドルの価値なんて丸わかりなんですけどね! (おわり)