『海辺でロング・ディスタンス』 川島誠

トラック種目である5000mを専門にする男子高校生が主人公で、LSDが入ってる題名からも、スポーツ小説陸上モノ!みたいな感じを想像して読んでもおかしくないんだが、そうするといたく失望するかもしれない作品。主人公ときたら、高校生なのに兄弟や友だちで酒は飲むわ、無免許運転はするわ、恋愛感情もそこそこにセックスするわで、そのノリはいかにも1980年代なのであります。

しかし、それこそが川島誠ワールド。軽くて不真面目のようで、何かしらの喪失感とか、「大人の世界って」「この町って」みたいな気づきからくるやるせなさ、そしてそれ微妙な前向きさで受け入れていくことが、不思議に薄っぺらくなく描かれてる。小一時間で終わる軽い読書だったけど、求めていたものが得られて満足しました。