『博多チンチン電車物語』

図書館で借りた本。

博多チンチン電車物語

博多チンチン電車物語

かつてはこの福岡・博多の町にも路面電車が走っていた。この本は、昭和30年代にその運転士さんだった人が書いたものである。

路面電車のルートそのままの順序で町の風景を切り取った文章を読んでいると、自分がその電車に乗って当時の福博の町を走っているみたいな気持ちになる。その想像が意外と容易なのは、今でも残る町並みがあるからというだけではない。バスにとってかわられたとはいっても、そのバス停も運転ルートも、かつて路面電車が走っていたものを基本的に踏襲しているからだ。

大学時代、六本松から箱崎九大前までという、比較的長いバスの旅をしばしば楽しんでいた(?)私は、天神まわりの20番、博多駅まわりの10番と、路線はおろか、路面電車の時代から運転系統番号までが変わっていないことになんか感動。

逆に、今では毎日渋滞してしかたがない城南線と渡辺通り入り口の交差点に、昔はビルのひとつも立っていなくて、ただ縦横に行きかう路面電車を安全に仕切るために人が信号を出す操作所(? もう本を返却してしまって名前を失念)とやらがポツーンと立っていた、というような、今とはまったく違う風景の場所ももちろんある。

また、県庁が今のアクロス福岡の位置にあったこと、ソラリアプラザの場所には福岡スポーツセンターという名で親しまれた建物があって大相撲九州場所をここで行っていたことなど、今ではすっかり変わってしまっている、私が小さな子供だったころの天神の風景を久しぶりに思い出しもした。

考えれば、うちの両親は昭和40年代初めには既に天神の町で働いてたんだよね。もちろん路面電車にも乗っていたという。今度、そのあたりの話に水を向けてみよう。