卯月の十一 / 中学校の制服をジェンダーフリーに

●4月某日: 夜、Terra cafeに参加。

夫も仕事の一環で講演会だったらしい。

市民と弁護士の憲法学習会、terra cafe kenpou
4/23のテーマは 【 LGBTと制服 】講師は弁護士の後藤富和さん。

中央区の警固中学校。この4月から、昔ながらの詰襟の学生服/セーラー服 → ブレザータイプの標準服に変更。

ネクタイ、スカーフ、ジャケットのフォルムなどなどを含めると40種類以上の組み合わせが実現し、「自分が着たいものを選んで着る」。もちろん、女子がスラックスを選んでも良い。スカートとスラックス両方を購入し、気候や気分によってその日に着るものを選ぶ子もいる。

f:id:emitemit:20190731002618j:plain


ある日突然(←本当にある日突然だったらしい)PTA会長に選ばれた後藤富和さんが制服の改定に乗り出したのは、トランス男子の中学時代の話を聞いたのがきっかけだったという。彼にとって、セーラー服の着用は体中に重い鎖が巻きつけられるような激しい苦痛。制服を着なければ校内に入れてもらえない中学校で、彼は不登校になり、勉強も部活もできなかった(※警固中の子ではなかったようです)。

憲法上、すべての子どもには「教育を受ける権利」があるし、さらにはどんな服を着るか・着ないかも「表現の自由」「自己決定権」として保障されている。本来、制服には何の拘束力もない。ユニクロしまむら等で安く機能的な衣服が買える時代、制服はなくなってもいいはずだ。

けれど、長年続いてきた制服を一足飛びに廃止しようとするのは、あまりに非現実的。
廃止を掲げて十年かかったら、いま苦しんでいる中学生にとって何の意味もない。
ならば、まずはいろんな子たちが苦痛なく選び、着用できる制服を1日でも早く作ろう。

後藤さんたちの制服改定プロジェクトはそんな深慮で始まった。


プロジェクトの進行については、あまりに最近のあまりに生々しい話になるのでSNSに詳細を書くのは控えますが、とにかく、物事を変えるのはものすごく大変! それに尽きる。プロジェクトというか「戦い」に近い。

それでも後藤さんと古賀校長はあきらめなかった。LGBTの当事者、弁護士、支援団体、市議、PTA、地域、制服メーカー、そして生徒たち…さまざまな人々と連帯しながらプロジェクトは進行。

「物事を変えたい、でも、どうやって?」という疑問に対するひとつの答え。ぞくぞくした。小学生の親として学校やPTAにある種のモヤモヤを感じている私にとって、後藤さんがPTAを巻き込んで変革していくくだりは特に感銘を受けた!

LGBT、外国ルーツ、ハンセン病被差別部落…差別の話を聞くと、たいていの人は「人権無視だ」と言う。けれど

【人権とは、「遠くにいるかわいそうな人の話」という感覚にとどまりがち】

だとする後藤弁護士の指摘は鋭い。耳が痛い気分にもなる。

先日、セクハラやミソジニー(女性蔑視)についておしゃべりしている中で、友人が「とはいえ、私にも差別や偏見の心はあると思う」と言った。大きくうなずく。私自身も同じだと思う。

“遠くにいるかわいそうな人の話 ” に泣いたり、“大きな権力の横暴の話 ” に憤ったりするのは、よくできた物語を消費したり、日常の鬱憤のガス抜きをしたり、正しい自分に酔ったりするような、自己都合・自己陶酔の部類に近くなりがち。いつも自覚的でいたい。

かといって、「LGBT、外国ルーツ…。当事者じゃない私には何も言う資格がない」といって完全に線を引いてしまうのも違うと思っている。

ここが難しいところで、「半径5mの人を大切にします、私にはそれしかできません」というのは正論かつ現実的なようで、無知の知に陥る危険がある。なぜ無知の知が危険かというと、差別や権力の横暴に知らず知らず加担してしまう可能性があるからだ。その罪は、回りまわって自分のところに返ってきたりする。

話はPTA会長に就任して最初の入学式に遡る。そのときの後藤さんの挨拶。

「慣れない制服を着て窮屈に感じている人、自分には似合わないと悩んでいる人は、(中略)どうすれば良いのかを周りの大人と一緒に考えましょう」

のちに、後藤さんはこの発言を後悔するようになったという。

「相談してください」「一緒に考えましょう」と簡単に促すことの残酷さ。
カミングアウトしなくても心地よい社会でなければならない。

勉強会には、息子が通った幼稚園で長年 給食を作っているNさんが来てた。
「井上さんだよね? 久しぶり~! どうしてここへ?」
互いに驚き、おしゃべりしながら一緒に帰る。
「なかなか、女には出かけにくい時間だけどね」
とNさん。私は息子を、Nさんは介護中のお母さんを、それぞれの
夫に頼んでの参加だった。

息子が年少のころだから、5年近く前か。Nさんが携わっている「教育を考える会」の活動について初めて聞いたときは、正直なところ腰が引けていた。今はむしろ前のめりでいろいろ質問w また遠からず、どこかでご一緒する気がしている。

夫が参加したほうの講演会。夫のざっくり感想がおもしろかったのでメモ。

佐々木かをり
夫「バイタリティがすごい。積んでるエンジンが違う」

岸博幸
夫「さすが、話がうまい。手抜き感あるけど」

●伊藤羊一氏
夫「ジーパン」

それぞれ、詳しい感想は聞いときました。
働き方改革についての所感で意見の不一致をみるw