『おんな城主直虎』 第41話 「この玄関の片隅で」
はぁ~。もう41話だなんて! 虎松の物語はまだ始まったばかり。ここからあと1年やってもいいのよ? やるべきじゃない?!
材木というネタをここまでやりぬくと、当初誰が想像したでしょうか。また材木! いいよいいよ。材木、それは、近藤との因縁の発端だった。あのとき、直虎は(かしらを助けるため)結果的に但馬と結託して近藤をだました。今回は、近藤に筋を通すために、井伊の名を継ぐ万千代の手柄を潰した。
「今ここは近藤の領地。杉一本たりとも勝手に切り出すことはできない」という手紙の文章が切ない。その文章が読まれながら、画面には、「近藤の名において」供出するために、立派に育った木に印をつける作業をする直虎が映る。以前、之の字が「これらの木はご先祖様たちが遺してくれた大事なもの」みたいなことを言う場面があったよね。
その手紙を方久に託す展開がまた、いい。あの戦のとき、直虎に黙って今川につこうとしたのち、徳川に泣きつき、結局徳川からも見捨てられて、城内の者をほぼすべて死なせた方久。カーンカンカンと鳴いて見せるものの、目が一向に笑っていない。直虎の手紙に驚き感嘆する家康に、「井伊が今の形で収まるまでにはさまざまなことがありました。家臣を死なせ家を失い私怨を乗り越え・・・・」というセリフ、ちょっと泣けたわよ。
今回、直虎と家康とは相似形なんだなあとあらためて思った。今、感情のすべてが顔に出る、浅はかな虎松。でも直虎も昔はそうだった。とても未熟なまま領主になりたくさんの失敗をした。家康だってそうだ。人質生活が長くて家中をまとめる器が足りなかった。未熟な2人が交わったのが、あの戦のときだ。直虎は政次を死なせ、家康は戦にこそ勝ったものの、家臣を制御できず、壊れゆく井伊に対して一言も発することができなかった。
今、直虎は成熟し、実際に領主だったころよりも良いはたらきをしているかもしれない。同じ成熟が家康にもある。虎松と相対する家康の貫禄。虎松から見ると、優しく立派なだけではなく、おそろしさも感じるだろうなという芝居を、阿部サダヲがうまーくやっている! 阿部サダヲは本当にすばらしい!!
虎松が最後に「2人まとめて殺ーーーす!!!」と叫びじゃくっていたとおり、直虎と家康とは2人して、虎松の慈父であり厳父なのだなあと思った。大きな心と長い目で見守り、時に壁として立ちはだかる存在。この2人に育てられて成長していくのだね。井伊直政は一日にしてならず。
それにしても、虎松=万千代=菅田くん。すっばらしいね(by 過保護のカホコ)。感情のすべてが顔に出る演技が、ほんとにくどくてやりすぎなんだけど、それがイイ。あ、私はこれから最終回まで、むやみやたらに菅田くんを褒めて愛おしむと思うので(ファンなので。)、めんどくさい人は適当にスルーしてくださいねw
森下脚本の登場人物って、とにかく、主要キャラにおバカだったり鬱陶しかったりこざかしかったりという負の側面を与えまくるもので、そこにハマれるかどうかが大きいんだけど、万千代くんもその最たる例でありながら、このチャーミングさはどうでしょう。
家柄のしっかりした小姓さんの話を聞いて、掃除しながら、顔が、顔が鬼瓦になっとるぞww 大久保忠世さんのぼやきを聞きながら、顔が、顔が悪巧みをするガキんちょにww 縁側の下に潜んで主君の草履の鼻緒を切るという小細工が似合うことw
そして、「私はもう15です」とイキガった舌の根も乾かぬうちに、「15の健気な息子の頼みを~!!」って、ほんっとうに、これだから子どもはwww 「裏から手をまわしおって~!!」って、それ、君が松下でなく井伊を名乗るために使った手と同じだよww
じたばた暴れるのを亥之助にずだ袋みたいなので押さえつけられて、それでもなお暴れる図、これほんとすばらしいよね。見えてるのは細っこい腕と脚で、その頼りなさと裏腹に、はちきれんばかりの荒ぶる魂が見える。そして亥之助のことをめっちゃ応援したくなるw
ノブこと本多正信が加入した玄関。人の真価は見た目ではわからないこと。唯一絶対はなく、いろんなやり方があること。情報の取り方。そんなものが見えた。万千代はたぐいまれなる上昇志向とバイタリティ、才気を持っているけれど、そんな才ある若者に対して年長者の一日の長を一貫して描くのがよい。おとなしく鈍重で凡庸で…のような六左衛門も、身を粉にして誠実に働いてきた長い月日の経験があるから、己を生かせる道が見つかったのだ。
それにしても材木。延々とやってきた材木ネタが、長篠の柵につながるなんて、ほんっとうに構成に長けた脚本だよな!!!!
片翼同然だった但馬を喪わされ、家を失い領地を手放してもなお、近藤とうまくやっていこうとする直虎は、「ごちそうさん」め以子とヤミーのくだりのその後に見えて胸が熱くなる。
近藤を立て続ける直虎は過去の凄惨な歴史を知るからこそ現状の平和(憲法)堅持、過去とか知らんし、英霊を思えばこそ、自ら戦える井伊を再びと奮う若い虎松(改憲も視野に)…みたいにも見える。虎松の出世という史実があるからこそ、どのような道筋でそれを描くのか楽しみ。#おんな城主直虎
こういう見方を嫌悪する人も多そうだけど、名作といわれる物語は、そこで語られていることから様々な事象を想起させる象徴性や普遍性をもっているものだと思うし、人間と共に社会についても厳しさ温かさ両方の眼差しで描き出すのが森下さんの作家性のすばらしさだなーと思ってるです。
サブタイトルは「この世界の片隅に」からだよね。こんな新しい作品も入れてくるなんて、目配りがさすが。