『民王』 第5話・第6話
●5話
4話では中身は若者な激渋オッサン2人の保健室&ほっぺすりすりが良かったが、この回は中身がオッサンなイケてる若者たちのシーンがイイ!イイ!
菅田くんと知英の「青春貴族」!! 菅田くんといえば近作『ちゃんぽん食べたか』で弾き語りの巧さを見せつけてくれたばかり。あちらの8話、即興で作った「パンが固くて食べられない」的な歌の弾き語りのエモーショナルさ、切実さには度肝を抜かれて録画を消せずにいるのですが、この「青春貴族」では、同じ弾き語りでも全然違う味。ほろ酔いのおっさんが若いころの熱い気持ちを思い出して調子よく歌ってる感。たぶんわざと多少音を外し気味にしてるんだよね。
この回、細かい演出過多で(新田くんのイントネーションとか)ちょっとうるさいな、って感じもあったんだけど、見た目若者なオッサン2人の居酒屋シーンは、店に入ってきた知英をドブ川みたいなひどい顔で迎えるとこからすべて完ぺきだったと思う、個人的に! 知英も、いちいちおじさんくさくてイイ! 長い髪の毛を手でつまみあげてサーッと落とすとか、左右の手を頭の後ろと腰にあてて胸を張るとか、若い娘が絶対にやらない仕草w 「青春貴族」のかけあいで、うまく歌いすぎないところもいい。「若さは恋と革命だよなあ!」「そうだ、恋と革命だ!」「そうだー!」「そうだー!」「おやじ! ギター借りるぞ!」ああ、いい脚本。
菅田くんが親父くさーく靴下を脱ぐシーンに激萌える。アグリなんちゃらな会社で、「大事なのは心、企業理念でしょう!」と言いながら拳で自分の鎖骨あたりをゴンゴン、と叩く所作もすごくよかった、頭の角度とか。「あんまり学生を失望させないでもらいたい」からの、抑えた口調で怒りを表現する芝居もうまくて、ぜひ時代モノで見たいと思う。
この回の貝原さんのツボは、アグリなんちゃらな会社の面接を終えてエスカレーターを降りてきた泰山(見た目は翔)を迎えるシーン。ひと眼で見抜いて「まさかまた失敗したんですか」と聞き、答えを聞く前に表情で察して天を仰ぐ姿。その後「ジャカランダ」を2回言うんだけど、2回目の顔の傾きが絶妙だった! 「貝原急げー!」「一限ってけっこう速いんですね!!」の疾走も面白かったね。大学で蔵本(見た目はエリカ)にからかわれるシーンも面白かった。ほっぺツンツンされて、ひきつった顔であとずさったあとになぜか微笑む挙動不審w
政治のジレンマについて翔(見た目は泰山)が疑問を募らせる様子も見どころ。
・「最大多数の最大幸福」とベンサムの言葉を引く泰山(見た目は翔)。
・「病気をした子どもはどうするんですか」「それを救うシステムはちゃんとある」「そのシステムからこぼれ落ちた人はどうするんですか」。
・「何年も何年もかかって何もできないなんて、全然わからない」
こーゆーことやってても、見てて鼻白まない。脚本演出がうまい。
●6話
回を追うごとにエスカレートしていった貝原さんの暴言・暴リアクションが「私の神経も限界でしたから」の一言で説得力のあるものに。脚本ほんとうまい。そうだよね、この状況って当人たちだけでなく周りにも相当なストレスだよね、と。入れ替わりがいったん元に戻ったときに泰山(見た目も泰山)につき従う本当は有能でソツのない秘書ぶりを見るにつけても、入れ替わりさえなければこの人こうなんだよな、って感じた。ま、入れ替わったから、愛すべき貝原さんの言動あれこれが見られてるんだよねw
入れ替わりドラマってどの作品でも、元に戻ると、なんだかそっちのほうが不自然なような、なんだか物足りないような感じがする。今回もそれもありつつ、演じ分けのうまさを堪能。元に戻った菅田くんが、セリフなく黙っていても、ひと目で翔と分かる表情をしているのに目を奪われる。記者会見の途中で翔になってしまった遠藤憲一も。セリフ回し以前に、発声や表情の作り方が2人とも最高。それにしても、あの入れ替わりの前兆シーンはなかなか大変そうだ、顔のあちこちの筋肉を動かすのが。
真衣センパイに優しくされて心奪われる大学1年生の翔を演じてるのもかわいかったけど、あんな若者顔して峯村リエを「綾」と呼び捨てし「あいつを産んでくれてありがとう」とストレートに礼を述べる倒錯感ですよ!!(鼻血)
最後、病院から自宅での一連のシークエンス、菅田くんの演技にずっと釘付けだった。泣き崩れる真衣に謝り、蔵本(見た目はエリカ)に「入れ替わらずに自分が生き残ること」を示唆された後に「おまえが俺でも同じようにするだろう」と言い、妻に感謝を述べて・・・。辞世の歌が伊達政宗、という小ネタの挟み方もさりげなくて面白かったw 泰山の心拍数がゼロになった瞬間、貝原がわずかに息をのんで身を乗り出すのもよかった。あー来週が待ちきれない!
予告では連立与党の冬島が悪役にされてたけど、彼が黒幕なんてショボすぎるから、やっぱり西田敏行なのかなー。ま、そういう謎解きとか、暗殺シーンとかがショボくてもそれが何の欠点にもならないのがこのドラマ。総理といえど、何かあるとすぐに党の大幹部に呼びつけられ、下のほうに正座してお達しに平伏しなければならないシーンを幾度も描いているのは政治批評的でもあり、面白い。