『軍師官兵衛』 第11話「命がけの宴」

信長が、桶狭間今川義元を破り、長篠では武田の最強騎馬軍団を鉄砲でコテンパンにやっつけ、意気盛んに「天下布武」を唱え、金ピカの安土城を築いて舶来品に囲まれ、将軍義昭を奉じて上洛したかと思えば足蹴にして追放し、広い日本のあっちこっちに兵を出して……でも、実はあっちにもこっちにも敵を抱えてニッチもサッチもいかない状況だというのは、けっこう興味深いところなんですよね。一直線に天下統一に向かっていたような印象を持ってる人も多いんじゃないかと思うし。信長って、勝ち戦や、比叡山焼き討ちみたいな「やった」ことが有名じゃないですか。でも実際、「やられた」ことも多いっていうか、結構ちょいちょい負けてる人なんですよね。天正4年に至っても(本能寺は天正10年)。

で、本作を見てると、ほんと去年の大山巌邸なんてメじゃないね、ってな具合の外国かぶれ且つセンス皆無の城内のしつらえといい(週を追うごとにひどくなっていっているのがまた可笑しい)、柴田も丹羽も滝川も秀吉以外全員バカないしは無能に見える家臣団といい、そもそも信長本人がアレなことといい、「うん、これじゃ簡単に天下統一とはいかんよなあ…」と妙な説得力があったりするんですがwww

かといって、面白いかっていうと、そうでもないのがねぇ…。毛利の強さ・おそろしさが伝わってくるでもない(たとえば『毛利元就』での序盤の尼子家は視聴者がびびるほど強そうだった)。播磨が小雄割拠で毛利になびきがちという説明は再三あるのだけれど、何か切迫感が感じられない。小寺の殿様はのんびり将棋うってるか家族団らんしてるかだし、恭平パパは『平清盛』でのエンケン時政と競うがごとくに、超おいしそうな野菜の宅配に精を出してるし。

だから、一人でピリピリしたりイライラしたり怒鳴り散らしたりしてる官兵衛がものすごく浮いてて、ついていけん。てか、この人、回ごとにキャラが変わりすぎじゃね? や、人間、失敗もあるし、「まだ青二才」って描写なのかもしれんけど、今回なんて無能&単純バカすぎて…。だってもう30過ぎてるやん? 信長だったら桶狭間も終わってるころよ? そら信長は(このドラマではともかくw史実では)英雄だけども、30過ぎて青二才って、戦国時代だったらただのバカでしょ? こんな演出で視聴者が楽しめると思ってるの? 岡田くんのファンが黙ってると思ってるの? ねえねえ?

あれだけ大口叩いて織田についておきながら、織田軍が来るのを待つことしかできない、そして来なかったらぶーぶー文句言ってイライラうろたえて、何なのその醜態? 織田軍が来たら毛利軍だってやってきて、それで戦になるか、あるいは織田軍と一緒に行軍させられたあげく、地理に詳しいからとかいって先鋒つとめさせられるとかさ。どっちにしても、リスクあるでしょ? 米国の核の傘に守ってもらう日本かよ!ってぐらい、「早く来て〜守って〜」の連呼。これどこの戦国だよ。

光も光で、「あなたにもしものことがあったら息子は」とかさー、そら気持ちはわかるけど、でも手をこまねいてるうちに戦にでもなったらそもそも一族郎党滅亡の危機でしょ? 本願寺のスパイかもしれん侍女たちには無警戒だし、この奥さんを賢妻とはとても思えんくなってきた。あーあ、「不快感がない」ってのがこのドラマの数少ない美点だったのに、普通に不快になってきてる(不快不快と言いながら大河というだけで見てしまう自分がイヤだwww)。

あと、善助とおミチ?の恋バナね。こんなぬるくてチョロい恋バナやる必要ある? いくらなんでも「隣の村の出身」「行くあてのない“ぼっち”同士」だから結婚します、と言われても、「あーそうですか(棒)」としか言いようがない、そこに何の感動の生まれようもない。同じく小者どうしの恋でも、『風林火山』の伝兵衛と葉月にはエピソードの積み重ねがあって、すごくユーモラスかつ切なさもあって、すごく面白かったのに〜〜〜〜

陣内孝則宇喜多直家生田斗真高山右近。どちらも飛び道具っぽい使い方しかされそうにない。吹越=バカ将軍、鶴太郎=バカ殿、陣内=バサラ、そして竹中=秀吉って、ほんと、過去作から少しの工夫もする気のないドラマだな。だしっ子ちゃんは、村重から右近に乗り換えたようにしか見えないし…。

あ、「命がけの宴」も安定のサブタイ詐欺でした。命がけ感、特に感じず。豪勢な宴の画は見てて面白いんだけど、「そこを作りこむより、そもそもだな…」と思えてならんし。秀吉の見せ場、てのを超して、官兵衛が食われてるようにしか見えんし。長浜に帰ってきた秀吉に「どうなさるおつもりですかァ?」みたいな一言目をかけるおねの口調がバカっぽすぎて萎えた。あれも絶対賢妻じゃない。ただし、ピエール瀧が両兵衛に向かって「わしはなー、おまえらみたいなしたり顔をした奴らが大嫌いじゃー!」と絡むとこは面白かった。「今度バカ騒ぎするときは俺も呼べ」な信長のデレも、迂闊にもちょっと萌えてしまった…。