葉月の十

●8月某日: 友だち親子たちがやってきて持ち寄りランチ。メニューがかぶらないように、事前にメールで申告しあうのだが、「唐揚げ」「豚の角煮」「餃子(私)」と、なぜか今回、やけにヘビー。4人めの友だちが「えらい肉肉しいね。野菜メインにするわ…」と調整。集まってみると、ゴーヤの素揚げ、ゴーヤの浅漬けふう、そしてゴーヤチャンプル(私)と、申告していないサブメニューにゴーヤが頻出! なのに調理法がかぶってなかった! 奇跡だ! 懸案の私の餃子もそこそこうまく焼けてよかった(我が家では普段、夫が餃子係で、久々に焼いた)。大人4名、子ども5名、終始、賑やかに過ごす。帰宅後、友人がくれたメール中の「血の巡りが良くなるような」という表現にそうそうそう!と思えるような楽しいおしゃべりであった。夜、2日連続で夫が飲み会。「パパ、かえってこないの〜?」とわめきながら寝落ちるサク。夫はエラい人を迎えての会食でやや興奮ぎみに帰ってきた。今日も軽く二次会。

●8月某日: サク、日本脳炎の予防接種へ。特に前情報を与えず、いつも通り・・・てな風情で家を出る。病院へ続く角を曲がった瞬間に「きょう びょういん いくの?」とサク。「だれがいくの?」 「うーん、サクだね。うん、まあ、心配しなくていいよ」。かれこれ9か月くらい(インフルエンザ予防接種以来)は病院に行っても注射していないので、とくだん警戒せず、慣れた様子で入っていくサク。名前を呼ばれては「はーい」と元気に返事して診察室に入り、聴診器、おくちアーンなど、こともなげにこなしたが、上腕部をつかまれてアルコール洗浄されるに至って「?!」と顔色が変わり、「ちょ、ちょ、やめてよー!」とジタバタしだした。「すぐすむからねー、痛くないようにするからねー」と笑顔の常套句でブスッと先生。「うあー!」と叫ぶサク。「はい、痛くないシール貼ったからもうだいじょうぶ」確かに痛いのは一瞬で去ったが、「聞いてない…俺はこんなの聞いてない…」的に釈然としない様子であった。夜、夫、とある商取引の会計処理について経理に問い合わせたが心もとなく(現在、諸事情で経理が戦力ダウンしているらしい)、一緒にあれこれ調べてみたがどうもよくわからない、と、ぼやく。ふむーあったな、そういうの、と思い出し、簡単な数字にして、いくつかのパターンに分けて紙にまとめてみた。まる3年以上遠ざかっているが、意外とまだ忘れてないもんだな、と思った。

今日のサクの小芝居。昨日、友だちが来た時に遊んだ風船を、「わー!」と叫んで上に投げて、パチパチパチ、と拍手。「やきゅう だよ」。ドーム球場で7回の裏、ラッキーセブンの攻撃の前に応援歌を歌って風船を飛ばすイベントのマネらしい。確かに2週間ほど前、見に行ったのである。なるほど、よく覚えてるな、と見てると、サクが座っている私の背中に回って、「ママ〜、“ふうせん いやだいやだ”って言って」と要求してくる。意味がわからないままに「風船やだよ〜やだよ〜」と言うと、サク、背後から私の肩をトントン、と叩いて「だいじょうぶ。ふうせんは こわくないよ」と、やけに鷹揚に言って、すでに膨らんでる風船に、フーフーと息を送り込む真似。そして先ほどのように「せーの、わー!」と叫んで上に投げてパチパチパチと拍手したあと、「ね? もう ふうせん こわくないよ。とんでいったからね」と肩越しから私の顔をのぞきこんで優しく言う。こ、これは…! 私=ドーム球場でのサク。サク=ドーム球場でのパパママ、という風景の再現か。確かに、あったよ、こういう一幕が…! 主旨がよく理解できたので、応援歌の最後のフレーズ「♪われらの われらの ソフトバンクホークス〜」を教えるなどして芝居を練り上げ、この面白さを理解してくれる唯一の人物、夫に、夜、披露する。