『平清盛』第10話「義清散る」

ほんまに視聴率がヤバいらしく、危機感をおぼえた局側の対策が随所に見られるようになってます。

そんでもちろん、私には、そのことごとくが気に入りません。アバンタイトルのさらに前の「今日のみどころ」ってなんだよ! なんつー興ざめ。そーゆーことやりたけりゃ、プレマップでやれ。百歩譲って、7時59分からやってくれ。

演出も、今回など、妙にストレートになってきたというか、ちょっと美意識、繊細さに欠けていたように思います。桜吹雪の盛りといい、いかにもなBGMといい。今の清盛の展開で、脚本・演出をわかりやすくすると、なんつーか、つまり単なる昼ドラになってしまう(というと昼ドラに失礼ですが)。ここは迎合せず、志を死守してほしいところです。

公式サイトに、制作とは何のかかわりもなさそうな玉三郎のベタ褒めインタビューを載せているではないか。

今、時代劇を制作するのはとても難しい時代です。それが、配役、脚本、美術、衣装、かつらなど、すべてにこだわっていて、これほどのことは映画でもなかなかできないと思いましたね。

私からのお願いは、監督や人物デザイン、スタッフのみなさんが、世間の風にあおられて揺らいだり、迎合したりせず、いまの姿勢を貫き通して最後までやってもらいたいということです。そしてそれを真剣に見守りたいと思います。

玉サマもこうおっしゃっておるではないか〜! スタッフよ誇りをもて! お偉い方と世間の圧力に屈するでない!

まあ、今回、作り手の矜持を感じたのは、義清の出家について説明しすぎなかったことですね。ズバリ、巷間伝わる「愛娘を縁側から蹴落として出家」エピソードを削らなかったこと。たぶん、あれには局への批判が数千件はきていることでしょう…そしてまた、口さがない週刊誌なんかがそこだけを取り上げて叩くことでしょう…そんなことは十分承知の上での、あのエピソード選択だったのだと推測します。

藤木直人という役者もなんだか見なおしました。“文武にすぐれたイケメン”という、いかにもこの人らしい属性を背負ってのキャラクターかと思っていたら、実は清盛もびっくりのエゴイストだった、ってなオチ。「救いたいなどと思うことがおこがましいのです!」と、ビシッと言ってくれたりょう@堀河にスッとしたよ。本人には全然きかなかったけど。

たま子様に求愛し、叶わないと知るや一気に首を絞める(山本“副長”頼長が「狼藉」と表現していたが、まさに狼藉としか言いようがない)あたり、もう完全に壊れてて、おかげで足蹴のシーンも、ほんと娘ちゃん可哀そうすぎて目を覆ったけど、飲み込めたもん…。コイツはもうだめだ、って。

あれってつまり、義清側、妻子側、双方未練を断ち切るための乱暴、って解釈を含んでいいんですよね?このドラマ的に。んで、あのあと、清タンが桜吹雪の下で10発くらい本気殴りしたのは、暴力男への視聴者の怒り、って解釈を含んでいいんですよね?

なんにせよ、全体に、義清の出家を映像で見るのは初めてで、新鮮ではありました。この調子で歪んだ愛の劇場を延々とやられると食傷しますが、ここからは涙、涙のエピソードを挟んで、徐々に保元の乱に向かっていくんですよね。

さて、今日のその他。

●今さらながら「王家」問題についてちょっと触れておくと、私は「王家」大賛成派です。そもそも歴史学的に「王家」表示は間違っていないと思うし、不敬だなんだ、って言ってた人も、ここまで荒んだ内裏・院御所内部の状況をみると、これを天皇家と称したほうが、100倍不敬だ、ってよくわかったでしょう?笑

●若いお妃に言われるがまま、根こそぎ菊に植えかえときながら、せっせと水仙見物に出かける鳥羽タン。お庭の片隅に残っていたわずかな水仙に涙するたま子タン。初回からの水仙エピソード、見事に使ってるな。んで、それでも「朕の心にはさざなみひとつ立たぬ」って、もうこの人たち、なんたる倒錯ぶり。どーせ鳥羽タン、あのあと部屋に戻って、嗜虐の快感と被虐への渇望に身悶えてたに違いない…。

●今日の鳥羽タンは、なり子に「あんたなんかあてにしないわよ」とキレられ、堀河に「あなた様はお逃げになったのです」と糾弾され、頼長には慇懃無礼な口を利かれ(結局、鳥羽タンの歪みきった愛の発露の前にはカタナシの頼長であったが笑)、けちょんけちょんでありましたな。いや〜やっぱり「王家」で正解でしょ。

●りょう@堀河局のキャラクターが面白い。義清がたま子を夜這いしたのがわかった時点で、聡明なこの人なら当然、「あたしったら“将を射んとすればまず馬を射よ”の馬だったのね」と気づいたのだろうが、そこでわかりやすくキレたりしないのよね。義清に対してもたま子に対しても怒りと愛憐の両方の気持ちをもっており、また高位の女官、つまり公人としての誇り高さもある。

●「わが祖父、為義も、それなりに励んでいたのであろう」やっと武士らしく勇ましいところを見せてたのに、頼朝ナレーションの為義サゲがひどいwww

●超オフィシャルな儀式だっつーのに、踊り子までスタンバイさせといて下々で流行っている舞をゆうゆうと舞う翔太@雅仁親王が素敵すぎ!