『結婚しなくていいですか。』益田ミリ

結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日

結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日

実は、最近でいちばん、いろんな人に読んでみてほしい本かもしれない。この本を読んであなたはどう思いましたか?といろんな人に聞きたい。

自分がこれまでの人生で出会った人々を思い浮かべると、「ぐっときた。」「あるよ、あるよ」と言いそうな人もいるし、あるいは「全然わかんない」と言う人、さらに「くだらない」とさえ言いそうな人もいる。もちろん、私の各人への勝手なイメージだし、たとえば、私が知っている3年前のその人と今とでは違った感想をもつかもしれない。

強い印象を残した箇所も、かなり分かれるんじゃないか。とにかく、千差万別な感想が聞けそうな気がして、そういった類の“良書”だし、また、その感想によって、ある意味自分をうらなうこともできるのではないかと思う。

ちなみに私は、子どもがベビーカーで寝ている間に本屋で立ち読みした。もともと読むのが速いほうではあり、20分くらいでダダダダーっと通読。細かいニュアンスなんかは捉えそこなっている箇所もあるかも。

その上での感想だが、読み終わった当初は「あああああああ・・・」と頭を抱えたい感じだった。家に帰る道すがら、すーちゃん、さわちゃん、まいちゃんそれぞれの述懐が次々と浮かんでくる。あの素朴すぎる絵もボディブローの効き具合に一役かってるんだよな。気分は暗いほうに傾き、読まなきゃよかったかも、とまで思った。

タイトルにもなっているくらいだから、ものすごくざっくりと「30代独身女性の不安や怒り」をテーマにした本であるという紹介も可能かもしれない。よって、既婚者で子どものいる私がダウナーになるのを不可解だと思われる向きもありそうだけど、生きていくことの心もとなさや空しさなんかって、結婚してるかしてないかだけが関わってくる問題じゃないし、「心の持ちよう」だなどと断じるのも乱暴な話で、人の性向は容易に変えられるものでもないのだ。バイオリズムってのもあるしね。

私がいちばんドキッとしたのは、『遠い未来が今の私を窮屈にしている』といった意味の、すーちゃんのモノローグ。

まあ、そんなすっきりしない読後感も、こまごまとした、わやわやとした日常に埋没させていくわけだけどね。逆に言えば、ふだんはあえて正面切って向き合わないようにしている心もとなさや空しさが思い起こされたということ。つまり、もともと胸のうちにそういったものを持たない人には、なんてことのない本なんだろう。私自身、何年か前なら、もう少し軽い受け止め方をしたと思う。私の場合、その何年か前が独身だったわけだけど・・・。

この本にギュッと胸つかまれる人とは、私は分かり合えるところがあると思う。けれど、この本をなんとも思わない人の強さとか、いい意味での能天気さもすごくうらやましい。なんだかね、不思議な問題作、かつ良書なのです。