『坂の上の雲』第7回「子規、逝く」

実際、放送が1年あいたわけだから、至極もっともな感想ともいえるのだろうが(笑)、じゅんさん(本木雅弘)とノボさん(香川照之)、りーさん(菅野美穂)の3人を見て、松山で無邪気に駆け回っていたころからずいぶん時が経ったんだなあとしんみりした。

病床で「死にきれんぞなもし」と泣くようにすがる子規、彼の痩せた体を受け止めて頬をさする真之が真に迫っていることはもちろんだが、そのふたりの様子を背後から見ている菅野美穂の表情がものすごくリアルだった。弱っていく兄に対する哀しみや憐憫、看病の疲れ、立派になった幼馴染に弱音を吐く姿に対する嫌悪や恥ずかしさ、いろんなものがないまぜになった複雑さをたたえ、やがて彼女は席を立ってふすまの向こうで唇を噛みしめる。

そのあと真之とふたりで歩きながら彼女が話す「兄さんはもうじゅうぶん苦しんだ、短いけど濃密な生だった、だから死んでもええよと思う」も、臨終の際の「兄さん、もどってきてください・・・!」も、49日の過ぎた墓前での「兄さんがいなくなってようよう肩の荷が下りた。せいせいした」も、何もかもが真実の言葉であるという人間の複雑さを、納得させる菅野美穂の演技だった。

「じゅんさんの人生は広い。あしの人生は深いんじゃ」という子規の言葉が印象に残った。そして、あまりにも違った生活を送るようになった二人に、最後までああやって親愛しあい尊敬しあう友情が続いたのが本当だったとしたらすごいなと思った。

夫が「モックン、かっこえー」を連発。乃木大将に柄本明っていうキャストはなかなか斬新な気がする。どういうふうに描かれるんだろうか。あ、私、原作は未読です。旗本のお姫さまだった松たか子がすっかり世話焼き女房になっている。時代も変わりましたね。