『ブス論』 大塚ひかり

- 作者: 大塚ひかり
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/07/07
- メディア: 文庫
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なんたってこの人を知ったのは、昨年あたり、ちくま文庫から刊行されはじめた「源氏物語」の訳本だった。源氏の訳者や研究者といえば、著名な人はほんとに著名だ。大塚ひかりって聞いたことないなーと思って、平積みになっているその1冊を手にとってびっくり。巻末付録として、「この巻の光源氏のセックス年表」なるものがついていたのだ。
そりゃあ、これは光源氏の女遍歴の物語だし、研究者の世界では、藤壺の生理日(!)までわかっているとか聞いたことがある。それにしても、ちくま文庫でこんなあけすけなことやっちゃうんだ・・・という思いがあって、覚えていたのだ。そして、図書館で見つけたこの本「ブス論」。でーんと迫ってくる、表紙の鎮座したおかめ。目次をひらくと、
- 太古、ブスは女神だった―はじめにかえて
- ブスの呪い
- ブスである罪
- ブス革命
- 美女の零落、女の零落
- 図に乗るブ男
- ブス殺しの説話
- ブスの妖怪化
- その後のブス
といった具合で、こりゃもう・・・という思いで借りました。ふざけるでもなく、フェミニズムに走るのでもなく、淡々と古今の日本(インド、中国等、仏教の影響ある国も含む)のブスの歴史を紐解いている本。
イザナギ・イザナミが兄妹にして夫婦たる神であり、国産み、神産みを行い、イザナミは火の神を産んだ際に陰部が焼け爛れて(!)死んだとこまでは知っていたけど、その後の顛末。恋しさのあまりに黄泉の国まで追ってきたイザナギは、死によって腐敗した妻イザナミの姿を見て恐怖と嫌悪のあまり逃げ出す。イザナミは怒ってそれを追いかけすさまじい力をふるい、「おまえの国の人を1日1,000人殺してやる!」という。対してイザナギは、「おまえがそんなことするなら、俺はこの国に1日1,500人の人が生まれるようにするもん!」と答える・・・という話。すげー。
古事記や日本書紀って、ところどころ断片的にしか知らない。やっぱりいつか一度、とおして全部読んでみたいな。日本の古き神々のはっちゃけぶりを。
あと、源氏物語のブス代表、末摘花が、当時いかに画期的な(笑)ブスだったのか、ってのも面白かった。宇津保や落窪といった、読んだことのない古典についての解説も興味深し。