ルーマニアのチャウシェスク政権
家に帰ると、「ベストハウス123」とかいう番組をやってた。初めて見た。これもロンブー淳が司会なんだね。ルーマニアはチャウシェスク政権で悪名をふるった女帝として、エレナ・チャウシェスクのことを取り上げていた。1989年の革命により、ごく簡易的な裁判を経て処刑されるまでの様子、遺体の死に顔までが映された。これは当時も世界中のテレビで公開されたものだ。
1978年生まれで小学生だった私も、銃殺に処せられたあとの遺体の写真が翌日の新聞の一面に大きく掲載されたのをよく覚えている。それこそマイケル・ジャクソンの「USA for Africa」が歌うWe Are The Worldによって、アフリカの子どもたちの飢餓のことを知ったり、ゴルバチョフが登場してペレストロイカがどうだとか、子どもながらに1980年代の世界の激動をおぼろげに感じとりつつあったが、一国の大統領を公開銃殺するなんてことをリアルタイムで伝えられたのは初めてで、けっこうショックだった。“彼らは独裁者だったのだ” “ルーマニア国民は悪い人をやっつけたんだ”と子どもらしく白黒つけて自分を納得させようとしたけど、どうにもすわりの悪い感覚が残ったものだった。
あれから20年か。「ベストハウス123」は、あれはバラエティ番組なんでしょうかね、情報番組なんでしょうかね、そのコーナーをナビゲートしてたのはジャーナリストの池上彰だったし、それほどふざけた番組ではなさそうだったけど、報道系でもドキュメンタリー系でもなかったことは確か。20年も経つと、世界を震撼させ、一国の運命を変えた政治上の大きな事件も、ああいう番組でできるようになるんだね。なんか、なんとも言えない気持ちで見た。
そのあとネットでいろいろ見てたら、チャウシェスク政権下で堕胎を試みる女子大生の姿を描いた映画が、カンヌでパルムドールを獲ったらしいね。2007年のこと。当時のルーマニアでは、堕胎どころか、避妊までも禁じられていた。宗教的な理由というのではなく、富国政策として。堕胎したことが明るみになれば実刑を受ける。貧しい国であるから、孤児院には子どもがあふれ、栄養失調の子どもにたんぱく質を補給するため輸血を実施するも、それによってHIVの子どもへの感染が大流行したという。そんな時代を色濃く背景にした映画。いつか見たいかも。見きれないかもしれないが、見たい気がする。