『坂の上の雲』第1話

もう永遠にお蔵入りになるんじゃないかとすら思っていた(私だけじゃないよね?)「坂の上の雲」、ついについに始まりました。

で。

予算が潤沢って、いいよねーーーーー! と、長年にわたる大河ドラマファンとしては叫びたくなるってもんですよ。これ5回も見せられたあとに始まるって、それはちょっと、「龍馬伝」の分が悪すぎやしないかい?

や、もちろん、予算だけではなく、すばらしい出来だった。「美しい」とか「すばらしい」とかいう語彙を気軽に使うたびに、我ながらよしもとばななの文章による影響を思うが、だってすばらしい出来だったでしょ? 見たみなさん。

同じように「NHKスペシャルドラマ」と銘打っていても、実験的で技巧的だった「白洲次郎」と比べると、すごく正統派な作りだった。しかし、それがまたいい! 「不毛地帯」といい、奇をてらわない脚本・演出に作り手の自負を感じる。脚本の野沢尚さんは自死されたが、どのくらい書いていたのかな・・・。脚本の監修には池端俊策の名があり、また、監修として関川夏央松原正毅、宮尾登美子ら、そうそうたる大御所が名を連ねていた。志、知、予算・・・・あらゆるものの結集をつくづく感じます。

そして俳優陣、「おくりびと」すら未見の私なので、モックンの演技を見るのはいったいいつぶり?て感じだったけど、いいねぇー! なんと母性本能をくすぐる若さを出してくるのだ。天地人においてつまぶきくんが繰り返し踊っていたドジョッコホイ!なんて、モックンの前には思い出すだけで赤面ものだ。香川照之正岡子規はさすがの安定感で、志半ばにして郷里に帰る将来を知っているだけに今から胸が痛む。菅野美穂、若いよーとても年上とは思えないよー! 松たか子、久しぶりに見られて感涙もんです。阿部ちゃんはいつもどおりだったけど、ま、あれがあの人の味ってもんでしょう。あと、子役っていうのは無尽蔵なんですか? みんなうますぎ。

原作者の司馬遼太郎といえば明治礼賛家(同時に昭和批判家)という印象が強く、渡辺謙によるナレーションでも、原文であろう「明治=楽天主義の時代」ということが語られていたが(まぁ、目頭が熱くなるような、さすがの名文であったよ)、ドラマの中では、モックンの両親(伊藤四朗竹下景子)がいくつかのシーンで「辛抱しなさい」と言ったのがひどく心に残った。

辛抱。今では、ドラマでも、また日常生活でもなかなか聞かない言葉だが、私なんかは子どもの頃にその概念を体で知ってた気がする。「しかたないでしょ」とか「我慢しなさい」と言われるようなことは、子どもながらに割と素直に受け入れていたし、それらは本当に「我慢するしかしょうがない」ことで、だからといって、ことさら卑屈になる必要があるわけでもないってことも親の態度からなんとなくわかっていた。

今日のドラマの両親、子であるモックンの様子もまさにそんな感じで、なんかしみじみしてしまった。日本人の姿じゃのう・・。そして、口では辛抱しなさいと言いつつ、子どものためになんとかしてやりたいとか、なんとか幸せになってほしいとか心から願ってるのが親ってもので、親の無理や心配を察しつつも、新しい広い世界へ旅立ってゆくのが子どもってもんだよねえ。