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『花燃ゆ』 第23話 「夫の告白」

何かのオタクをやってるっていうのはもちろんそれがすごく好きだからなんだけど、それについての良いところだけじゃなく、良くないところも、普通の人よりいっぱい知ってるってことでもあります。

なので私は大河ドラマが歴史に対して良くない役割を果たしてしまうところもこれまでたくさん見てきました。大河は歴史や歴史上の人物に対してすごくかわいそうな、ひどいことをするものです。『八重の桜』の会津戦記」もそうでしたね。おい高等遊民、マッサンに謝れ! ・・・って、2年も経つとおかしな話になってきますが、実際、けっこう久々に思い出したけど、やっぱりまだピキッとくるもんだなw

なので今作だけが専売特許でひどいとは申しません。去年の官兵衛だって、役こそ岡田くん(かっこいい、時代劇経験値高い、歴史大好き)がやってたし、「すごい」「おそろしい」「さすが官兵衛」とやたらセリフで持ち上げられてはいたけど、見てるこっちは凄腕の軍師だなんてとても思えないかわいそうな黒田官兵衛でした。

しかし今、「官兵衛なんて、セリフでは持ち上げられたんだからいいじゃない」と思えているのも事実・・・。久坂さんが哀れすぎて・・・

先週に引き続いての女台場。雅が「高杉から手紙が来たんですけど」と言うので、

「おっ、『女台場なんてあんなみっともないとこ、おまえは行くんじゃないぞ』って手紙の史実をここでフォローするのか? 行くなって言われたけど退屈だから来ちゃうもんネてへぺろー、みたいな具合に?」と思ったら、「久坂さん心配でしょ? 奇兵隊のみんなと袂を分かって」ですって。

袂を分かつ”という語彙をハッキリと使った。ガンダムの人のナレーションでも、「敗戦の責任をとって」という語彙を使ってた。うそ。どっちも嘘だー! 久坂玄瑞が化けて出るぞー!!

史実パートも改ざんだらけなら、オリジナルの色恋パートも散々です。イヤな予感はしてたけど、そんなつまらん感じで辰路と寝るんかい! 

「ついてない男」設定をここまで引っぱってうまくやったつもりかどうか知らんが、布石どおりに運べばいいってもんじゃないんだよ。面白くなけりゃ意味ないの。


あんなに巧い鈴木杏の、キリッとした芸者の啖呵「芸者として名を挙げたい」は、結局わけのわからん薩摩者のための嘘でしかなかったんかい。萎えるわー。とっつかまって身の上話を滔々と語りだす辰路に超引いた。知らんし、そんな話。いきなりされても、何の感情移入もできんわ。しかも何の工夫もない、どこまでも凡庸な不幸ネタ・・・。薩摩の阿久根って誰だよ。ばか。

「天下の志士を手助けして、さすが辰路やと言われたい。芸者の一世一代の誉になる」。それがまぎれもない本音で、そのために、志士から志士へと渡り歩いて手玉に取り、ようやく見つけた惚れ抜ける男が久坂玄瑞だった・・・。そのほうが、どんなに潔く、かっこよかったか。粋な芸者を妾にしたほうが、久坂の男もどれだけ上がったか。ひいては、一流の芸者を妾にできる夫をもった文の女も、どれだけ上がったかって話ですよ!!

何なん、あの、「あんたの奥さんにはあんたの淋しさがわからん。うちにはその顔、見せてもいいんえ・・・」→ガバーッ!!って。西門悠太郎だってようせんかったわ、そんな野暮な真似。しかもやったあとで「俺は最低や・・・」(うじうじ)って、知らんし。八月十八日のあとやし! 早く七卿の都落ちの世話に行かんかい!!

平清盛』における頼朝の十数年に及んだウジウジのイラッと感を、数日のウジウジで超えてもうたわ、この久坂。

しかも、しかもですよ! 妻に会ったら「見るな!」→「京の女と情を通じた・・・(暗澹と)」。サイテー。もうサイテー。『篤姫』でのナヨ五郎こと小松帯刀(瑛太)だって、これよりは随分しっかりしてたわ。コメディ仕立てで嫁(ともさかりえ)に告白してたからね、芸者の妾のこと。

こんな長州の志士、見たくない。ありえない。志士に妾の一人や二人、いて当然なの。いい女と寝るのがいい男なの。ちょっとかわいい小間使いがいたら手ェ出すもんなの。凄腕の芸者には武家の奥方にできない仕事があるの。そういう世界なの。浮気とかじゃないの。そりゃ奥さんはいい気はせんかったろうけど、それであんなセカイノオワリみたいな事態になったりしないの。

京で志士としてブイブイ言わせるってことはそっちのほうもブイブイ言わせてるもんなの。なんでもかんでも現代のモラルを持ちこみゃいいってもんじゃないんです。「昼顔」にだって需要があったでしょうが。フィクションではフィクションの世界にふさわしい成り行きが見たいものなんです、視聴者は。

だいたい、京でブイブイ言わせてたころの久坂の、何がどうすごかったのかも全然描かれないから、8月18日の衝撃も伝わらないし、ただ単に「ついてない男」だから失敗したってだけ。七卿の都落ちを今様で励ましながら長州までお供したのは久坂の見せ場のひとつだというのに、せめてそれをやるから三条実美が上杉祥三なんだと思ってたのに、全部スッ飛ばしてやってることが「京の女と情を・・・」。サブタイトルは『夫の告白』。歴史やる気ないんだったら使わないで返してよォ、大河の枠!

で、こんな浮気ネタを大々的に取り扱っておきながら、文-久坂の夫婦の情がひとつも伝わってこないのね。お母さんやら、誰彼相手に、久坂への思いを割としょっちゅう語ってる文ちゃんだけど、あれだけ言葉にしてるのに、彼女の気持ちはサッパリ胸に響いてこない。ダラダラ喋ってる文ちゃんの首や目線、口元の動かし方が「江戸時代の人じゃないなあ・・・」って気になってしょうがないだけ。


だって文ちゃんは別に幸せそうな女じゃない。兄ちゃんは刑死してるし夫にも恵まれてない(そうとしか見えない)。「ついてない久坂(辰路)」に対するところの「ついてる文、運の強い文」には全然見えないんだよね。その対比に説得力ないんです。「みんなにおにぎりを作って食べさせてればハッピー♪」って女性の、どこが魅力的なのかもわからんし。

むしろ、「うちの妻って何か暗いから、おまえみたいにキリッと潔く自分の仕事してる女を見るとクラクラきちゃうぜ」ってほうがしっくりきたよ。


そして異国と戦うはずの奇兵隊を止めにやってくる小田村。久坂は大丈夫だと文を慰める小田村。見つめ合う義理の兄妹。気持ち悪すぎる・・・。コイツが単独でお殿様と話してるのも癪に障るが、周布さんと並んでモノ申してるの見るとまた許せんもんがあるな。コイツの職掌は何なのよ!!


弟、敏三郎。この人の演技はいつもすばらしいですね。役どころもあまり毒されてないし・・・。(←ここしか褒めたくなるとこがなかった)


口直しに、『八重の桜』における八月十八日の政変回の私の舞い上がりっぷりを置いておきます。

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