『八重の桜』 第9話「八月の動乱」

秋山さんの着流し萌え〜と思っていたら、いきなり高崎佐太郎(正風)キター! 今週もアバンタイトルから歴史が動きます。公用方である秋月さんが京都の三本木かどっかの料亭で飲んでた時に密命を帯びた高崎がやってきた、てのが定説みたいですが、その場があんつぁまと二人だったのは創作ですね。もちろんOKだと思います。

タイトルバックがまたマイナーチェンジ。どうも毎月やるようで。NHKスペシャル?て感じに見えました。まあそれより私が全力で気にしてるのは役者クレジットです! 前回まで「照姫」だった稲森いずみが、なぜか今回から「松平 照」に。なんかちょっと違和感あります。じゃあ、身罷られた敏姫は松平敏で、篤姫は島津篤で、斉彬の正室の英姫は島津英なんでしょうか? あのころのお姫さまは名字なしのほうがキマると思うんだけどな…。容保の奥方でもないし、どこの姫かわかんないってクレームでもきたんですかね?

あとクレジットではピンクレ人数の多い中Gに何枚かの連名クレで仕切りをつけた感じ。前半が若手会津藩士(プラス、トメに篠井さん)で、後半がベテラン勢ですね。初登場の宮崎美子はトメGに入りました。

さて本編、秋月さんは会津本陣に持ち帰って殿に相談。いちお「長州は討幕すら考えているから、過激志向を除かねば」て雰囲気もあったにせよ、最終的には帝の玉顔を思い出して決断する容保。政治性とかカケラもありません! ザ・恋で身を滅ぼす男。いちお藩主なんだから、そのほっそい双肩に会津23万石がかかってるの忘れないで!! なんかもう、頼母さんいないとホント殿の鶴の一声状態で…。とまれ、秋月さんの活躍はうれしい。や、史実の秋月悌二郎さんに思い入れは全然なかったんですけど、北村有起哉の魅力がすごい。

で、入念な支度をしつつ勅命を待つ会津本陣がまじイケメンパラダイス。西島秀俊玉山鉄二に斉藤工に池内博之って誰見たらいいんだよー目が泳ぐったら! 大河にイケメンはつきものだけれど、同じ帰属先、同じような身分にこんだけ集まってるのも異例では。NHKの本気ェ…

参内して経過報告する殿もまじカッコよす。「たのむぞ、中将!」てな帝の激励にうるうるしてるけど、「それがほしくて参内したんだろ容保!」とヨコシマなツッコミが思わず私の口をついて出ます。天上天下にこの人ら二人きりだったら何の問題もなかったんだけどねぇ…(泣) にしても、染五郎さんの孝明天皇、もはやこの人以外考えられないレベルだな。やんごとなきお育ちで政治的に実権を握っているわけでなくても、決してひ弱でなく、意志のある帝、って感じがぴったり。

そして迎えた8月18日。深夜の進軍がスリリング。門前でにらみ合い、のち長州退却。長州がもうちょっと悔しそうにしたほうがわかりやすかったんじゃないかと思う。のちの因縁を考えても。久坂の存在感が薄い…。てか、久坂が会津本陣にいる気がしてならないww 薩摩側も、事前事後とも大物は誰も出てこなかった。このころ西郷さんは沖永良部島だから仕方ないのか…。帯同していたはずの他藩も出なかった。福岡人としては平野国臣を…なんてのは、高望みがすぎましたね。

でも、ほんと、意外にあっさりの感があった。まあ、帝への忠義心のみで動いてる会津目線では、こんな感じだったのかもしれんね…。ということで、ここでちょっと、司馬遼太郎がこのあたりについて書いていることを引用してみたいと思います。

薩摩藩士高崎佐太郎が、京都から長州勢力を駆逐するための薩会同盟をもちかけてきたので)会津藩秋月悌二郎らは、事の重大さに緊張し、その夜、料亭から駕籠を走らせて、黒谷の会津本陣にもどり、藩主松平容保と相談した。
容保は、薩摩と手をにぎる肚(はら)をきめた。常日ごろ警戒してきた薩摩藩が、まるで当方がいいそうなことをいってきて、しかも同盟しようというのだから、ひどくよろこんだ。
このあたりが、東北人の世に擦れぬところであろう。
薩摩藩はなんといっても、京都政界に明るく、手管は擦れている。
みごとに、会津藩を利用した。
こののち数年後に、こんどは、叩きおとした長州藩と秘密攻守同盟を結んで、会津藩をたたき、幕府を倒し、人のいい会津藩若松城に追いつめて、例の白虎隊の惨劇で知られる会津討伐戦を演ずるのである。その政治能力のみごとさは類がないといってよく、薩摩藩の目からみれば、会津藩長州藩もこどものようなものであった。
(文春文庫『竜馬がゆく』四巻「京の政変」より)

さ、薩摩めェェェェ!!!! でも、会津も人が良すぎ!!!!!! てか、龍馬やら薩摩やらから見るとカタルシス絶頂の薩長同盟だけど、会津に心を寄せて見てると、悪魔の所業だな!!!!!!

結局、矛を交えたわけではないのに、兵のみなさんすげーホッとしてるし、藩主みずから門近くに来てねぎらいの言葉をかけて勝どき…なんて、ちょっと大げさな気がせんでもないけど、実際、いくら武士で鍛錬とか演習とかしてるからって、この人たち実戦経験ないんだもんね。てか、日本じゅうで大きな戦なんて200年以上なかったわけで、それ思うと、これ以降の幕末の諸戦がことさら痛ましいな…。

蛤御門を堂々と通過する場面しかありませんでしたが(笑 でもこの場面かっこよかった。いかにも胡乱で)この政変の功をもって、無事、新選組の名を授かります。沖田どこ行った。てか、たびたび映るドラゴンアッシュ(とも認識してないだろう)を沖田と思って見てるご高齢の方々は多そうだ。七卿落ちしてく篠井さんの落魄っぷりが期待通りでしたww 

もちろん会津にもご褒美があり、こちらはなんと、帝からのご宸翰を賜ります。藩主も上座を降り、一同でカラッポの(文書はあるけど、無人だから…)上座に向かって深々と平伏。繰り返されるこのシーンに、会津藩の気風が(良くも悪くも)象徴されてるんだと思う。他藩にも思想や理想があったにせよ、忠義心のみで動いていて、政治性は全くなく、それでいて国力・武力に優れていた点で、会津は突出してる。

ここでまたもや目を赤く潤ませて、感に堪えない演技の綾野くん…この役、ほんと疲れそうだなww 純度の高さがすごい。清すぎて魚も棲めません、てこれだよね。ちょっとそろそろ別パターンも見たいけど待ち焦がれるまでもなくどうせもうじき維新(泣)

「御衣」から仕立てた自慢の陣羽織をおめしになった写真が照姫さまに届きます。な ん て 美 し い !! 電話もメールもない時代、こんなもんが届いたら、ホント落ちますよねぇぇぇ。ここにも恋なんて言葉じゃあらわせない、深い深い思いを抱いて生きている人がひとり…。そら、ハードスケジュールもこなしちゃうってもんです。

ちょっと気になったのが、なんでこのタイミングでずっと江戸詰めだった姫さまがお国入りをするのか?ってこと。万事行き届いたこのドラマにあって、説明がなかったよね。あと、「もう、姫様ったら頑張りすぎるんだから…」みたく言いながら、侍女が姫さまの肩に両手をおくのがもっと気になりました。考証しないはずない所作だと思うんで、あれは非礼ではなく、当時のごく普通の動きだったってことですか?!

とにもかくにも、会津唯一の姫さまが来られるってことで、女衆はみんなソワソワ。当日の道場に西郷千恵が登場して、「蟄居者の妻は引っ込んでろ」的なやりとりがあるのは面白かったですね。家格も分別もありそうな秋吉久美子が出てきて、庇うのかなーと思ったら、「お気持ちはわかりますけど引っ込んでて」っていう。女衆はみんな、自分の夫(父)の意に従って振る舞うもので、それに捉われずに発言する八重は、異端だからこそドラマの主人公になってるんだけど、まだ会津というシステムが平常作動してる現在では、その発言は一顧だにされない、ってのもちゃんとしてる。

しっかし、「夫がいつも通り過ごせって言ってますから」ってのもある意味すごいよな。殿にお仕えしつつも膝を屈しないのは、藩主保科につながる血統である西郷家の矜持だと思うんだけど、そこの説明はしないようです。まあ、頼母さんは、殿に仕えているというより「会津に身を捧げている」わけですよね。

んでもって、道場にやってきた照姫さまの貫録パネー! こんなに完全無欠のお姫様やれる人いる? おんなじ日本人、21世紀人がひとつの場にいて、こんなにも住む世界の違いを感じさせるって、ある?! キャスティング知ったとき、「いくら何でも綾野くんの姉にしては年離れすぎだろ…」とか思ってすまんかった。会津の娘っこたちの頂点に、端然と、艶然と、そして決然と君臨しなければならない役柄として、またとない人材。「優しく勇ましく」、それはまさにあなたです!! いやあ稲森いずみ、もはや時代劇に欠かせぬ人材。常盤御前→滝山→照姫 と、身分のランクアップぶりもすごい。

そら、ガンオタの八重さんやぼんやりの時尾さんもはりきってお勉強するってなもんです。あんなお姫さまのおそば近くでお仕事できるなら、私もお城に上がりたいよ! 吉屋信子の世界ですな(←読んだことないくせに)。先生役の尚さまがステキー!!! でも、あれ?挙動不審? これ以上は教えないし本すら貸してやらないって、子どもかww(そんな尚さまかわいいよ尚さま) てか、八重親! 嫁にやるの半分あきらめてるじゃねーかwww  

まあ、実際そうでもなけりゃ、他藩の男(のちに会津帰化(?)するにしても)と娘を結婚させないかもね…。八重さんがガンオタすぎて嫁の貰い手がなくて、灯台もと暗し的に尚さんに白羽の矢が立った、というのは、案外、実際のところに近いのかもしれません。近くにいれば、当然、親愛の情が芽生えていても不思議じゃないし…。でも、結婚するころには、そんなのんびりしたこといってられない世情だったのかな…もっと切羽詰まった感じで家のために結婚したのかな…

と、想像はさておいて、サクラチル。右筆に選ばれたのは時尾さんでした。これ、八重さんは「時尾さんはつつましいし気が利くし…」的に人となりを挙げて納得してて、それはとても美しいまとめなんですが、山本家と高木家の家格の違いについては触れませんでしたね。男性陣は、お役目や藩主との距離などで身分差を描いているけど、女性陣は、あんまりそこに触れないよな。意図的なものでしょうか。

夜の角場。落ち込む八重さんに、尚さまが優しく微笑んで「勝手ながら、私は少々ほっとしています」の一言を発した時に、すでにわたくし、ドッキンドッキン。「八重さんの代わりはいない。これはあなたにしかできない仕事です」って、この殺し文句の切れ味よ!!!

尚さまって、象山塾で学ぶほど優秀で志もあるだろうに、自分の藩に戻らない覚悟で会津に来て(まあ元々身分も低いし長男でもなかったんだろうけど)、会津ではもちろんよそ者だし正式な藩士にもしてもらえないのに、腐らず飄々と仕事をしてて、八重の銃にかける思いや技量も身近で見ていてよく知ってる。なんか、ある種、未来から来たんじゃないかってぐらい、フラットな人に見えるんだよね。そういう人がサラッとした口調で言う「あなたの代わりはいない」っていう人格全肯定に、なんだか、字面以上の重みというか、真心が感じられてねえ(涙)

「ありがとなし」と素直に喜んで泣く八重さんの細い肩を、現代劇ならばそっと、あるいはガッと抱き寄せるとこなんでしょうが、それをしないのが武家の男女の良さ、時代劇の良さですよね〜。でもね。自分の言葉に涙して、小さく揺れる頼りなげな八重さんの肩を、それ以上なすすべなく見つめているあの時間に、尚さまは自分の八重さんへの恋心を認識したんじゃないかと思うの。

それまでは、お城に行ってほしくない気持ちはあっても、それはやっぱり単なる寂しさとか、覚馬に続いて八重という同志まで失うことへの不安としてしか捉えていなかったんじゃないかと思うの。あの夜に、これが恋だと気づいたの。わたくし的にそういう妄想なの。

あーもう、尚さまと八重さん、ずっと添い遂げてほしいよ〜! 尚さまとの離別からジョーとの再婚まではそうブランクがないはずなんだけど、八重も尚さまも悪者にせず、視聴者の反感をかわずに、むしろガツンとジョー萌えにもっていく方向で、ちゃんと書いてくれるんでしょうね〜脚本! 今回を見てても、ゲゲゲでムカイリに多大なる貯金を与えていたのを見てても、人と人とのあたたかく切ない関係を描くのはお手の物の山本むつみだろうけど、そこんとこほんとお願いしますよ。来週、ふたりの関係に多少の変化があるのか、すっごく楽しみ………エ?! 来週、ジョー出るの?!

ということで来週は「池田屋事件」なんですが、これはもともと予定されていた「象山の奇策」というサブタイトルから変更になったもののようです。多少、視聴率が下落傾向にあるので(今回はWBCもあったし、来週はフィギュアワールドの放送あるのかな?)、例年のようにわかりやすいサブタイにしていくのかな。