『花宵道中』 宮木あや子

花宵道中 (新潮文庫)

花宵道中 (新潮文庫)

江戸吉原の遊女たちの哀歓を描く連作短編集。もともと、吉原モノには敏感なうえに、なんかこの本、「女による女のためのR−18文学賞」とかなんとかを受賞したってんで、好奇心もあって買った。確かに、表紙からして、女性読者を念頭においている。

思ったよりスイーツ(笑)ではなかった。吉原という舞台設定を借りた少女マンガ的恋愛小説かなーという予想は、ありがたいことに外れた。時代小説としても違和感なく読める。ただ、この人のテーマ自体はとても普遍的なものだと思うんだけれども、その表現の仕方に夢中になれるほど、私は若くないのだった、残念ながら。女のためのR−18と銘打たれても、エロティックさにうっとりすることもなく・・・。いやね、30過ぎた既婚者って。

あと、すべての短編で登場人物がからみ合ってるんだけど、ちょっと無理して繋げすぎな感じがあって、イマイチ入り込めない。1冊通じてひとつの妓楼を舞台にして、あっちの話の脇役がこっちの話では主人公、みたいにするのは、ふだん時代小説を読まない人にも少しでもとっつきやすくしたかったんだろうし、その意図なら成功してるんだろうけど、小説としては必然性が感じられないというか、そのせいで少し精度が落ちたんじゃないかと思う。あっちの話でああだった人がこっちの話でこんなことして、というのが、なんか別人みたいに感じられたりしたんだよね・・・。

でも、中学高校くらいのときに読んだら、間違いなくポーッとなっちゃってたな、というようなお話でした。あ、R−18だから中高生は読んじゃいけないのか。