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3/24放送 NHK BS-hi プレミアム8 市川亀治郎特集

亀さん、1年ちょっと前「情熱大陸」に出たときもそうだったけど、取材の人に対してなんてエラそーな(笑)。まあ、彼より年下の人っぽいけどね、音声とか聞いてると。確かに質問もアレだし・・・。

それにしても、CMなし90分のこの番組。単純にいっても情熱大陸の3倍以上の濃度です。

ジャニーズのコンサートと同じように(笑)、主演をつとめる役者は演出面でもかなり中心的役割を担うんだな。衣装、かつら、音楽(ていうのかな)、そして宙乗りなどなどの舞台装置や、共演者の演技。すべてに目配りをしておおぜいのスタッフ・職人たちに指示・依頼を出す。まさに総合プロデュース。かなりハード。かなり責任大。でもかなりの充実感、達成感だろう。30代半ばであれだけの裁量をもって仕事ができることって、そう多くない気がする。

博多座の2月花形歌舞伎、『金幣猿島郡』『双面道成寺』についても舞台裏を取り上げていた。実際に舞台を見たので興味関心は倍増。忠文が鬼になるときって、舞台の上で鬼の隈取を描いてたんだー、とか。稽古で、お坊さん役の死に様(けっこう身体的にきついポーズ)を以前の上演どおりに、と指示したときの中村獅童の反応とか。(「ほんとにー?いま作ったんじゃない?はめてない?」)

『双面道成寺』で升六と花子という男女ふたりに扮し次々に早変わりしながら踊り続けるシーンがあるんだが、舞台衣装での踊りと同時に、黒いぴっちりしたTシャツとスパッツみたいなので同じ踊りをするのを写していてすごく面白かった。体がどういう動きをしているのかよくわかる。ゆっくりした動きのように見えて、ものすごく肉体を酷使している。太ももの外側の筋肉が、まるでバレエダンサーのように美しく張り出しているのもよくわかった。

そして、梨園の御曹司というものについて。基本的に世襲の世界であるということに抵抗感を覚える人も少なくないだろう。どんな世界でも(世襲制の世界って意外と多いよね)、世襲制に弊害があるのは事実だと思う。ただ、「芸」の分野であればこその、その逆もあるだろうと。(弊害の対義語って何?!)

物心つくやいなやのころに初舞台を踏み、毎日楽屋裏を遊び場にするような「歌舞伎の家」の子どもたち。稽古量はもちろん、親の出る舞台を何百回、何千回と見て育つのは、大人になってからでは手に入れがたい武器だろう。せりふの抑揚や義太夫の節回し、鳴り物の数さえ、呼吸をするように自然に身についているに違いない。ピアノやバイオリンのコンクールで優勝するような人が、就学前からレッスンを始めているのとおんなじような感じかね。

それに、歌舞伎の興行は基本的に25日間、昼夜公演。残りの5日間で翌月の公演の稽古。東京以外の小屋だったら1ヶ月のホテル暮らしもザラ。その合間をぬって、個人的な稽古をしたり、テレビや映画の仕事、歌舞伎以外の舞台に出たり・・・過酷といっていいスケジュールだと思う。それでもやり続けたいと思えるモチベーションの持続力や、そもそもやってみたいという思いなんて、「歌舞伎じゃない家」に生まれたら、そうそう芽生えないもんなあ。

亀さんも、市川染五郎もどこかで言ってた。「うちは普通の家とは違う、という意識があった。学校は休みがちだったし、行っても浮いていた。『仕事をしてる』感覚が子どもの頃からあった」その強烈な疎外感と優越感の表裏一体も、彼らを歌舞伎一筋の人生へと駆り立てる大きな要因だろう。