『情熱大陸』尾上菊五郎

いやー菊五郎ともなると違うね。と思った。見られて、非常に満足。情熱大陸、いい回だった。

菊五郎という人間自体にわかりやすい面白さがあるわけじゃない。インタビュアーに何か問われても、ことさらユニークなことを答えるわけでもないし、かといって、際立って寡黙とか無愛想でもなく普通にしゃべるし、酒は好きそうだったが強そうでもないし(関係ないか)、非常に・・・なんというか、けっこう普通のおじさんっぽい印象でもあるのだ。舞台を見なければ。

でも、周りの接し方がすごい。稽古のあとの夕食でも、弟子たち、誰ひとり自分から喋らない。だって初めて稽古をつけてもらったペーペーたちじゃないんだよ? みんな内弟子だよ? しかも、鍋囲んでるんだよ? なのに、「しーん・・・・」。同席している息子の菊之助すら口を割らない。すごい緊張感。どんだけの威厳だよ。どんだけの貫禄だよ。

家族との晩餐でも同じ。菊五郎一家といえば、富司純子寺島しのぶ(長女)、尾上菊之助(長男)だ。全員、舞台あるいは映像作品で主役級の俳優。歌舞伎なんて、日本人の中でもごくごく一部に限られた閉鎖的な(?)趣味なんだから、大河ドラマ源義経』を知らない世代の大多数にとっては、もっとも知名度が低いのが菊五郎かもしれない。でも、家族の中にあっても、菊五郎唯一神のごとく君臨する絶対の存在。

  • 富司 「いろいろありましたよ。でも、舞台を見せられると、しょうがないなーって感じ。それでやってきました」
  • しのぶ 「とにかく子どもの頃から父の芝居が大好き。登場するだけで、舞台がワントーン明るくなる。私が最初に舞台に立つとき、母はもう、ダメだしの嵐。父は『下手な奴がいるから上手い奴が目立つ。』」
  • 菊之助 「とにかく先輩に好かれなさい、といわれてきた。それと、“親はいないものと思え。”」

そう、菊五郎の当たり役とされる、“弁天小僧菊之助”の名ぜりふ、「知らざぁ言って聞かせましょう〜」で始まる啖呵を見られただけでもこの回を録画した価値はあった。うわーって感じ。興奮した! 最近、歌舞伎といえば、若手が主演をつとめる花形歌舞伎を中心に見てて、それと比較するのは酷なのかもしれないけど、やっぱり全然違うー。これぞ名人芸ってやつだ。音羽屋ー!! こりゃ普通のおじさんみたいに接するわけにはいかないわ、関係者。

屋号といえば、舞台上でかかる大向こうさんの掛け声の数が博多座と比べると半端じゃなくて、やっぱり東京は違うなー、なんでも本場だなーとも思った・・・。