角川ソフィア文庫・日本の古典 ビギナーズ・クラシックシリーズ

さて、最近の読書の中から古典を紹介。

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

このシリーズ、気軽に古典が読めてとても楽しい。短い章立てがしてあって、それぞれに「原文」「訳文」そして、その文章が書かれた意図や時代背景、歴史知識などの解説が付されている。

枕草子』『更級日記』は、小学生の頃にNHK総合で深夜にやっていた『マンガで読む古典』シリーズをせっせとビデオに録って見ていた私(かわいげのないガキだなオイ)、原文のフレーズまでかなり記憶にあって懐かしかった。清水ミチコが流暢にピアノを弾きながらナビゲーターをする番組でね、更級日記の作者・菅原孝標女には若き日の藤谷美紀が扮していて、かなり面白かったのよ〜。

ベッドサイドに積みあがった本の山の一番上に『更級日記』を見つけた夫が「何これ? えみっ子、こんなもんまで読んでんのか?」と驚いたので、詩情豊かに原文を読み聞かせてやったりもした。当然のことながら、「何言ってんの? それ何語? どこが面白いの?」とかるーく流されたが。

紫式部日記』と、『御堂関白記』については、このように一般向けに出版されているものはなかなかないので、有名な部分以外を読むのは初めてで、とてもうれしい。「紫式部日記」では、道長の娘であり一条天皇の后となった彰子の後宮の様子がよくわかる。

今読んでいる「御堂関白記」は、道長が残した日記である。平安貴族といえば、日がな宴を催したり花を愛で和歌を読んでいるイメージだが、優雅で平和な栄耀の日々の裏にはそれなりに激しい政権闘争があり、当時の天皇の御所の中に、野犬に四肢を食いちらかされた子どもの屍骸がゴロゴロしてるような、まさに「古代」であったことも、読んでいると思い知らされる。道長を評して「古代の権力者というのは、みな例外なく働き者であり、逆に、人一倍働き続けなければ権力を保てなかったのである」という解説があり、なるほどなーと思った。

そんな道長さんの日記は、この時代の男性の常として、漢文で書かれているのだが、この漢文は文法がめちゃくちゃであることも繰り返し解説されている。この時代、良い家柄に生まれた子弟は、ボンクラでもそれなりの出世が約束されたようなものなので、立身のために学問に精を出すとかいうことはあまりなかったらしく、藤原北家のお坊ちゃまである道長も、実務的手腕はともかく、基本的に秀才ってことはなかったみたいね。

源氏物語』で、既に権力を手中にした光源氏が、息子の夕霧の元服の折、わざと低い官位を与えて厳しく学問をさせるというくだりがあるが、これは当時の貴族社会に対する紫式部の痛烈な皮肉でもあったのだろう。