『真田丸』 第34話 「挙兵」

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歴史には「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉があるらしい。
以下、手前みそですが自分のログから引用

「歴史的な過程においては、もう引き返せないとき、ポイント・オブ・ノー・リターンがある」と言われていて、太平洋戦争への道では、それはいつだったのか?というと、いろいろな説があるらしい。昭和13年の東亜新秩序建設を謳う声明だという説、昭和15年の北部仏印進駐と日独伊同盟の締結だという説、それよりもっと早く、昭和11年の広田弘毅内閣の「国策の基準」決定時説もあれば、もっと遅い、昭和16年夏の南部仏印進駐時説もある。

 

生涯にわたって歴史を学ぼうじゃないですか、平和のために (3・完) - moonshine

 

「真田丸」における関が原に至る家康と三成の争い、どこがポイント・オブ・ノーリターンだったのかと考えてみても、わからない。振り返って遡ってみても、そりゃ家康に頼んだら謹慎させられるわなーと思うし、七将にしてみりゃ襲いたくなるんだろうなーと思うし、三成は家康襲撃するっきゃないってなるよなと思うし、この家康はしたたかに振る舞うわな、と。ひとりひとり、ひとつひとつの行動が、「そうだよなー、この人ならこうするもんなー」と必然に見える。その必然が重なって大きな流れができてる。これが歴史だよな、歴史ドラマの醍醐味だよなーと思う。

北政所が言う「揉めごとに巻き込まれるのはまっぴら」とかね。わかるよね。この優しい女性は、はなから政争になど興味はない。ただ、子飼いの武将たち含めた豊臣の家族で、仲良く平和に暮らしたかっただけ。秀吉のために頑張っていただけ。夫に先立たれ、手をかけたつもりの子飼いたちが巣立っていった淋しさを感じさせる。

茶々のほうも政争には無頓着。大蔵卿局によって詳しい事情は伏せられているし、自身、知りたいとも思っていない。この人は、興味のあるものとないものとがハッキリしてる。今大事なのは秀頼。愛でて良し、食べて良しの桃の木が、水のやりすぎで根腐れしてくるのは、秀頼への過保護の暗示なんだろか?

ポイント・オブ・ノーリターン。信繁を考えてみてもわからない。真田の次男として兄を支え家を盛り立てたいと思っていたはずの彼が、いつの間にか、(歴史を知っている視聴者からすれば過剰なほど)三成に、豊臣に肩入れしている。

何でこうなっちゃったのか。やっぱり豊臣で過ごした年月の長さ濃さなんだろなー。とも思うし、みんなが嫌いで、みんなを嫌いな三成に好意を持ち、また好意を持たれちゃう、信繁の聡明さと人なつっこさとまっすぐさも作用してるんだろうなー。茶々にも妙に好かれてたしなー。とも思うし、なんでこんなに大阪に惹かれ嵌っちゃったかと言えば、そもそも梅を亡くしたショックからこちらに流れてきたのもあるよなーとか。梅は徳川との戦で死んだんだったなーとか。いくらでも遡れる。もう運命としか思えないんだよ。

それにしても

「賢いし度胸も仁義もあるけどビジョンも大局観もない」

っていう信繁の人となりがあからさまに描かれていてエグい回だったー。

秀吉の死後も残って三成に仕えて。三成が立てば一緒に立ち。事が甚大になれば収束のために奔走し、家康に頼み込むのも辞さない。家康に頼むのも、頼みながら卑屈にならないのも、これ、なかなかできることじゃないよね。そういうところを家康もかってるんだろう。

政権から去らなければならなくなった三成が流した涙は心底からの悔しさだっただろう。いろんなものを見てきた信繁が、また見てしまったもの。三成も、信繁の前だから、うっかり涙なんて出ちゃったんだろう。

一転、正式な手続きとして蟄居を申し渡されたときの堂々とした態度や清正を呼び寄せ耳打ちしたこと、「今生の別れだ」の芝居がかったセリフから、信繁は三成がこのまま引っ込むつもりなんてさらさらないことを察したんだろう。なんせ「いったん心をひらけばこれほどわかりやすい人はない」のが信繁にとっての三成だから。

で、家康の勧誘を断固断る。この、徳川方が示す好条件や甘言や屁理屈に、多くの武将が乗せられてきたんだよね。おそらく多くは本多正信あたりが餌付けをしてて、徳川内府自らが出馬して誘うのはよほどの人材だとみてるってことだろう。

「石田治部様は己を省みることなく、誰よりも豊臣家のことを思い、尽くしてこられました。
 その石田様でも内府様のもとでは務めることができませんでした。
 どうして私などに務まりましょう!」

このセリフ、漢文の故事成語とかか、中国の古い軍記物とかのエピソードっぽかったです。三成(と自分)の忠義を謳い、家康の不忠を詰る、信繁バージョンの直江状っていうかね。

そう、直江状! 義だの何だの言ってもお屋形さまは現実的に領国を守るのが精いっぱいなのだと思いさだめ、事をかまえるのをあれほど嫌がっていたくせに、お屋形さまが本気になったとみれば、ここまで過剰(にしか見えないw)に挑戦的な態度をとる直江w どこまで微に入り細に入り書きつのってんだよとww それを読んで「たはっ」と笑う景勝な!! 「おまえって奴は、こういうことやるよな」っていう笑いな!!

んで、あの直江状ももちろん、三成と示し合わせたタイミングで出してるんだよね。

ついに乱世再来と湧き立った昌幸は、湧き立ちながら、今はもう、息子たちに頭を下げて助力を頼むんだね。父に従う、とけなげな息子たち。・・・に見えたあとでの兄弟の会話がつらい。

景勝が勝っても乱世なんか来ない。でも戦に勝つには真田安房守の力が必要だからああ言った。と信繁。策士だな、と兄に皮肉られても悪びれない。なんつーか、痛い。痛いよ信繁。戦のあとはどうなるか「わかりません」。宇喜多がどうとか小早川がどうとか、何もし習い茶々のそのまた袂の中で守られている秀頼の聡明さがどうとか、なんつーか大局観ゼロ! さすが真田安房守の息子だよw 

それを見ている信幸の静かな、醒めた眼差し。信繁は中央政権でさんざんいろんなものを見てきたけど、結局は秀吉の(今は三成の)近習でしかないんだね、それに比べて信幸は、真田を背負う大名になってきてる。うう、なんという辛辣な脚本でしょう。

真田昌幸の息子だから、己が望む勝利のためには策を用いる、身内をも騙す(そして大局観はない)。それが信繁なら、真田昌幸の息子だから、父が騙されるのも見てらんないし、父が衰えて夢見がちになってるのも耐えらんない。本当に勝つほうについて家を守らなきゃ意味ない。ってのが信幸なのかなー。と、予告も合わせて、思った。

今回、前半で兄弟息の合ったタッグぶりが良かっただけに(しかも将棋くずし! 1話のリフレイン!!)、どうやったって避けられない犬伏の別れが憎い~~~ポイント・オブ・ノーリターンはどこだったのよ~~~選TAXIで戻るから探して~~~!

あ、きりちゃん。ますますキリスト教に傾倒してるかと思えば「不穏大好き!一緒に乗り越えていきましょ!」「わたし、役に立ってる?」だったので超笑いました。なんか、「信繁を愛し続けるための信仰」って感じがした。「信じていれば、気持ちはもうデウス様に通じてるんですって☆」 このセリフも、デウスさまって結局信繁だろって思えて面白くてエグい。

だって、きりちゃんて当時の女子としてもういい年(いき遅れ…)だろうし信繁にはちゃんとした正室もいてどう考えても今さら自分の出る幕は無さそう、それでも信繁を思い続けて近くにいたいって、もう信仰並みの思いの強さだよね。でも、信繁の近くにいるためなら危険があってもいい、むしろ危険があるほうが盛り上がれそう、っていう俗さがきりちゃんの肝で、そこは全然変わらんのねって安心しましたw

 

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