『八重の桜』 第13話 「鉄砲と花嫁」

大河ドラマといえば派手なドンパチや老練な政治劇を楽しみにしている向きもありますが、実際はそんなの少数派で、大河まわりには「戦より閨が強い」(視聴率)という至言もあるのです(笑)。よって、主人公の結婚というのは非常に大きな取り扱いをされるのが常。

古くは信玄と湖衣姫の初夜(…というかあれは初夜翌日のほうが見ものだったか)、高氏と登子が結婚するまで、元就と美伊姫の初夜など、いまだに印象深いものがありますし、近年では、生涯妻帯しなかった勘助のかわりのように三条夫人&由布姫というふたりの妻とそれぞれ印象的な初夜をやってのけた亀ちゃん晴信が大好きでした! 去年の「光らない君」および、最悪のプロポーズ群(群w)も良かったよ〜。世間的には篤&家定の「あぶないではないか」が良エピとして浸透してるんですかね? 一方で、「天地人」や「江」はスイーツ大河を自負しながら結婚エピソードが下の下だったことを私は執念深く酷評し続けたいと思っています。本命秀忠との結婚時のサブタイ、「最悪の夫」だよ? この最悪のサブタイにふさわしい最悪エピだったぜ…!

……前説からがっつり力を入れて書き始めてますが、そこへいくと全国の大河ファンから既に太鼓判を押されまくっている今年の恋もよう。「鉄砲と花嫁」とは、これまた秀逸なサブタイトルですね! すばらしいオリジナリティが漂ってる〜! と今週もクッソ期待しながらテレビの前に座りましたら、驚愕の連続でした。まず、なんといっても、

「祝言までたどりつかなかった!」。

びっくりです。先週、権八さんも言ってましたが、昔は父やら兄やらが決めたらどんどこ話が進んでいくもんなので、ドラマとしては 縁談→即祝言 ぐらいの速さで展開していくものを、ここまで引っぱるとは大した根性だ。や、よいのですよいのです。八重&尚さまに関してはもう全編香ばしいので、むしろひっぱって伸ばしてニラニラさせてもらいましょう!

次の驚愕としては、「秋月さん、大活躍!」 尚八重婚にこの人がこんなにしゃしゃり出てくるとは、なんという俺得www 鉄砲に目を丸くしてはしゃぎ、覚馬の伝令をし、西田頼母と縁側で網焼きしながら「干され組」トーク、そして必要以上のテンションで花嫁の部屋に乗り込んできては八重の白無垢姿に目を疑って実際に目をこする(失礼だろww)。みな朴訥としているのが味な会津藩士の中で、有起哉さんの大真面目な中におかしみがこぼれる演技が今日も光ってました。秋月さん、公用方を罷免されてのちしばらくの行動については、おそらく詳しい資料は残されていないのではないかと推察しますが、ドラマ上、京と会津とを結ぶこういう役割を与えるとは、うまいですよね〜。

あんつぁまの眼帯がとれてたことも驚きでした。しばらくナチュラルにふるまっていたので、「もしや今作では目を悪くする設定はスルーか?!」とすら思いましたが、やはりそんなわけはなく・・・(泣)。でも、あんつぁまはしぶとく強く(かなり強くw)生き抜くはずなので、見守りましょう! 今回も、彼自身の口から八重の縁談を思いついた経緯についての突っ込んだ説明はなかったので、そこは手紙の説明通りに受け取っていいんでしょうね。しかし、いったん「会津を離れるならそれも良し」と突き放すだなんて、あんつぁま、手管だな〜。尚さまのハートに火がついたじゃないの!(以前そんなシーンあったよね、覚馬×尚に笑)

前々回、祇園を遊び歩いていると朗らかにのたまっていたので、もしや既に夫婦仲は冷え切って…と心配していたとところ、妻にもちゃんと贈り物をしている池内さんの平馬にホッ。おざなりに鮨折を買って帰る亭主…じゃなく、「なんだっていいんだよ、櫛とか紅おしろいとか…ただしガンオタ娘以外に限る」と口では軽〜く言いながらも、実は「まるで刀の目利きのような」真剣さで人形を選んでいる、ってのが、んもう脚本演出うまいッ! 平馬、色男よのぅ。二葉さんは安定のツンデレで、この夫婦、すごく良いだけに今後が…や、今後がアレだからすごく良く描いてるんだろうけど…。

大蔵さんは、けなげではかなげな奥さんを国元に残しながら、安定の八重コンぶりなんだけど、なんかちょっと、これ、度を越してる気がしてきました。単なる、ウブな少年時代の微笑ましい恋心、ってエピソードかと思っていましたが、なんか、あそこが会津だったら、あの足で尚之助に決闘のひとつぐらい申し込んだんじゃなかろーか。まさか、このジェラシーって、維新以降の尚之助の運命のひとつの布石になるんじゃなかろーな…。や、考えすぎだよね…。

順番めちゃくちゃに書いてますが、「別選組」って名称にも驚きました。そんなんあったんだ〜! なんか、喜んでいいのかわかんなビミョ〜な命名だと思いましたが、官兵衛さんは喜んでたもよう。てか、この人(獅童)、三谷大河で新選組に入れない役やってなかったかww このときの容保と官兵衛との対面、すごく良かったです。殿が本当に優しげで、懐かしげで、高貴でね。暴れん坊の官兵衛もひたすら平伏してて、うれしげで、誇らしげで。昔の「君臣の交わり」ってこんな感じだったのかな〜と思わせるもんがありました。

運命の 勝―西郷 初対談にも目の覚めるような思いがしました。長州征伐を主張する西郷が幕閣の勝に共和政治を説かれて括目する、という、おおむね古くからの定説通りの脚本だったんですが、ここで生瀬さんの勝の人物造形にようやくしっくりきたんです。勝といえば江戸っ子口調なのは当然だけど、斉彬との対面で妙にしかめつらしい顔を作ったり、かと思えば松陰の刑死を聞いて暴れたりと、なんか、人物が軽いっていうか。むしろちょっと薄っぺらい…?て気がしててね。西郷との対談でも、磊落に登場してやたらペラペラ喋ったあげく熟れ柿を握りつぶすデモンストレーションまでするんだけど、長ゼリフがどこか棒で、どうしたことかと思いきや、最後の「ちょっと喋りすぎたかな」のマジビビリな表情! さすが生瀬! 

ここでやっとわかったよ。今回の勝は、もちろん切れ者なんだけど、どこか小人物なのね! がんばって大きく見せてるとこがあるのね! てか、勝って本来、そういう手合いなのよね、きっと。篤のときの北大路勝とか、あまりに重厚で傑物然としてるほうが変わり種なんだった。モニカの西郷はどっしりしてていいねえ。一見でくのぼうみたいに見えながら、打てば響く!て感じの一瞬の豹変、演出の力もあるんでしょうがうまく撮れてると思います。

江戸開城時にふたたび行われる勝―西郷対談が楽しみなのはもちろん、”この勝”なら、”あの慶喜”といかにもウマが合わないだろうな〜って匂いがプンプンしてて、そっちのふたりの絡みにも期待しちゃいますね! いや〜、楽しみが増えた。

その慶喜さんは今回、めっちゃ被害者ヅラしてグチグチいってましたwww んもうこの人は、そういうことに必要以上に敏感なんだよね〜www この作品の慶喜、あまりにも「慶喜」してて笑っちゃいます。「人望ゼロだろうな、こいつ…」と確信させる小泉孝太郎の演技にひれ伏しつつある私がいるwww 定着しつつあったトメグループでのクレジットから、今回、中グループに引き戻されてたのにも笑っちゃいましたww 宮崎さんとか秋吉さんとかの熟女組が登場するとトメグループがぱんぱんに膨らむので、小泉さんは移動です。かわいいなwww

慶喜のグチを聞いてる容保の顔がモロに「こんな奴といっしょくたにされてるとかマジ勘弁…」って暗さでしたwww てのは冗談ですが、このあとに、殿の体を気遣いもう潮時ではないかと囁く修理さまと、予告でも流れた例の「我らはいったい何と戦っているのであろうの…」を発するB作の田中土佐だったんですが、ここで、京都での費用のねん出のために重税を課され国元が疲弊している件、また、頼母―秋月トークでも、在会津藩士たちから京都組への怨嗟の声が上がっている件などに触れているのは重要ですね。こういうところが、このドラマの信用のおける点だと深く感じ入っています。

長州の下関戦争もチラッとやってましたね。伊勢谷さんの高杉が三味線無双をやってたアレですねww 勝の弁を受け、西郷が第一次長州征伐を戦闘なしにおさめる場面もありました。ここでちゃんと金子賢徳川慶勝が再登場。細かいww 

それで肝心の尚八重ですが、いやあ、よがっだ、よがっだ。相変わらず押さえるべきところを押さえた、行き届いた展開でしたw あんつぁまのハシゴを外す伝言に泡を食って「覚馬さんから手紙が来て・・・・」と口走るものの肝心の「めおと」の語は言えない羞恥心たっぷりの尚さん☆ 「女の槍と刀である針と糸」でやらかす八重さん。着物と一緒に縫いつけちゃうって失敗がかわいくて☆ 無邪気に心配する剛力さんも相変わらずかわいいです☆ 剛力さん出てくるだけでパーッと明るくなりますよね。

あ、秋月さんがやってきた場面に戻りますが、あの場で初めて象山の死が伝わる、ってのもうまかった。あの「今ごろ?!」感は、当時の京と会津との距離感を強く感じさせたのと同時に、(秋月さんの心配と裏腹に)尚之助の結婚への意志を、別の側面からも強化させたわけですね。

武家の男子にとっての「結婚=身を固めて役目にまい進する」という概念が、藩士でない(し、別に藩士になること自体を望んでいなかった)尚之助の場合、薄いがために、自然、結婚したい=八重が好きで好きでしょうがない”だけ”みたいな印象にもなるところ、尊敬する師である象山が非業の死を遂げたことによって、学生時代の志とか、世の中に対してできる役割を果たしたいとかいう気持ちを新たにしたということ。その結果、「会津という地に足をつけた生き方」の実践としての結婚、という意味合いが強く付与されたように思います。

夜中、象山先生の形見(なのか?)の葉巻を見て無念に涙する背中…を見てしまう八重。「やっぱり居候の部屋は屋根裏なんだな…」というどうでもいい感想をもったりもしましたが(まあ立派な屋根裏だったけど)、それを見たことによって、八重は、「才能と志ある尚之助を頑固な会津に縛りつけるのではなく、広い世に解き放つべきではないのか」という思いを強くする、と。なんと自然な流れ…。

で、汗だくで喉を鳴らして水をごくごく飲む、という、完全にサービスショットですありがとうございました、の図が挿入されたあと、鉄砲づくりのお仕事にまい進する尚さま。ようやく完成したライフルを手づから試し撃ちして、命中! ここ、再見してみましたら、「よしッ!!」が、 (よっしゃーっ! これで堂々と求婚できるぜーっ!)って心の声が聞こえてくるかのような異様な勇ましさで、その割に、続く「めおとになりましょう」はやや震え声でドギマギを押さえきれない感じで、もう尚さんかわいいよ尚さん! 

びっくりした八重は最初もじもじ。尚さんが「お父上のお許しはいただきました」とダンドリ上手なところを見せると、会津の頑固ぶりを遺憾なく発揮して「だめです」とキッパリ。これには尚さんびっくりで、「私では頼りないですか? あなたにふさわしくないと思って一度は断りましたが…」と弱気ものぞかせますが、給料3か月分(に匹敵する努力労力で)の婚約指輪ならぬ”婚約新式銃”を贈ったんですから(ひでえ話だww)、あとに引けるはずはありません。なおもグチグチ言いつのる八重の言葉によくよく耳を傾けてみると、(なんだ、俺のことが好きだから断ってるわけね…)と真相に気づきます。トドメの「私はここで生きたい。八重さんとともに会津で生きたいんです」の殺し文句のあと、ダメ押しの「妻になってください」では、余裕のほほえみを浮かべていました…。

いや〜。いいシーンでしたね〜(ヨダレをふきながら)。男が女に言葉で求婚して結婚を決める…てのは、当時には珍しいだろうから、ジョーのときにやるのかと思っていましたら、尚さまがいち早くやってのけちゃいました。なんか、公式のピロキインタビュー見たら、「結婚したあとも敬語でしゃべる」(←なにーっ。呼び捨て・タメ語・命令口調を妄想してたのに、キーッ)、「新しい夫婦像」とか書いてあったんですけど、ほんと、なんでもかんでも(ジョーのときまでとっておかないで)出し惜しみなくやっちゃうとこがすごいですね。ジョーのときはどんな手でくるんだろう。てか、ほんとにジョーと結婚するんだろうか(しますから)。

なんとなく、「会津に縛りつけては(縛られては)ならない」ってセリフは、もう一度、聞くことになりそうな気がするよね。そう、離婚のときに…。それも、「尚之助を会津から解き放つために」八重が別れることを決めるのではなく、「八重を会津から解き放つために(=京都に行かせるために)」尚之助が別れを切り出すのでは…。この八重が、自分から、どん底の会津人たちを捨てる(ととられてもおかしくない行動をとる)とは思えないし、この尚之助ならば、八重のために身を引くどころか、「自分が代わりに会津人たちとがんばるから」とか言っても不思議じゃない気がする(泣)。ああ、おめでたい結婚なのに、こんな想像が頭をよぎる悲しい運命よ…。

さて、駆け巡る「ガンオタ娘、結婚するってよ」の報。山ほど薪をもって姉さんかぶりしてるマッチゲ父さんがすてき! 仕立てあがった婚礼衣装を見て目を細めるマッチゲ父さんもすてき(泣)。うらさんが家族として溶け込んでる。「嫁さまがうちから出てってうちに戻ってくるのはおかしいだろ」には笑った。

それで、再びですが、仲人の秋月さんは、なんであんなにも疾走しながら、大声で嫁の支度部屋に入ってくるのかねww 仕事よりはりきってるだろ、実際www 桜の花びらがしきりに舞い込む道を、八重さんがゆっくりと歩み始めます。当時の婚礼は夜でしょうから花嫁行列が夕刻なのは道理なんですが、黄昏どきに歩み始める花嫁…神々しいほど美しいシーンだったけど、どこか切ない(泣)。

ここで「終」マーク出たときは、「ぐあーっ生殺し!」感ハンパなかったですが、ま、来週まで楽しみをとっときましょう、てことでねフフフフフ。プロポーズ後、ポロポロ泣いてる八重さんにやはり指一本も触れなかった清く正しい尚さまが、予告で八重の唇をなぞってるーーーーーーー!!!! 来週はどんな手で悶えさせてくれるんですかっっっ(鼻息)。あ、殿の「これが終わったら皆で会津に帰ろう」にもやられました。古今あらゆる物語において、そういうこと言って元気に帰れたためしがあろうか、いやない(反語)。そして目が…。