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『スケオタデイズ』 グレゴリ青山

スポーツ

すべてのスケオタにこの本をおすすめします。

もともとはweb連載されていたもの。2013―2014シーズンを中心にしたコミックエッセイで、本編の最後は2013年の全日本選手権なので、すでにリアルタイムとは少し時間差があります。スポーツはやはりライブそのものなので、タイムラグのある放送・感想・ルポタージュなどは非常にハンデがあります。

しかーし! 私、2015年2年にこの本を読んで、すごく面白かった! フィギュアスケートが好きなあなたならきっと楽しめる! ぜひおすすめしたいと思ってます。いや、スケオタでこの作品を知らない人はもうほとんどいないかな。


●わらえる
「戦慄のフィギュア底なし沼」というサブタイトルや、「どんどん軽くなるフットワークと財布の中身・・・一度ハマったら抜け出せない、フィギュアスケート観戦の面白さと恐ろしさをグレゴリ青山がお伝えします♪」というPRフレーズからわかるように、基本的にコミカルな作風。作者やスケオタ友だちたちは戯画的にユーモラスに描かれる。

モロゾフのチョコレートをきっかけにスケート話のスイッチが入り、なかなか切れず、しまいには「漏電を起こす」くだりなんか、必見(ただし、電車で読んではいけない類に属します笑)。「エデンの東ぃ!」「火の鳥ぃ!」「まっちー垂直ジャーーーンプッ」「ラフ真央ステップのときのジャーンプ!!」「それをマネする織田くんのジャーンプッ!」

●絵がうまい
試合観戦をルポするのがメインだから、作中にはフィギュア選手たちがたくさん出てくる。これがうまい! ご自身の画風というものがちゃんと備わっていながら、それぞれの選手たちの顔や身体つきの特徴をすごく良くとらえ、衣装も正確に描かれ、そして何より、フィギュアスケートの動きが本当にそのまま、絵になっている。すっごく上手。見ていると、「ああ、誰々の、あのポーズ」「あの振りつけ」「あのスピン」と目に浮かぶのだ。

●感動の本質を伝えてくれる
決して分厚い本ではないしコミックだからサラサラと読めるのだけど、何度も何度も胸を揺さぶられた。選手たちそのもののような姿、動きを紙の上で再現しながら、そこに付されるモノローグには、ものすごい力がある。

2013年12月の全日本選手権さいたまスーパーアリーナに1万8000人もの観客が集まった。作者とスケオタ友だちはその会場に入り、熱気に打たれる。

そう・・・それぞれが必死にチケットを手に入れ この場にたどりついた1万8000人だ
あたりまえだけど この1万8000人はひとりひとりの人間で それぞれの生活をかかえている
この日のために 無理してやってきた人たちもたくさんいるだろう


(試合前までに目を血走らせて原稿を仕上げる作者の絵、上司に「年末のこの忙しい時期に休むって〜?」という上司のネチネチを必死にスルーしながら仕事するスケオタ友だちの絵、「1日だけお願い!」と子どもたちを実家に預けるどこかの母親の絵、などが挿入される)


けれど・・・氷上に選手たちが出てくれば みんなもう そんなこと忘れてる


(男子SP最終グループの6人がリンクに漕ぎ出して6分間練習を始める絵。それぞれの選手が緊張した面もちで滑り始める)


目も 耳も 心も すべて――― 氷の上に 奪われてしまう


あの日、テレビで見ていたあの時間をまざまざと思い起こさせる、いや、まるでその会場にいたかのような錯覚にすらなる、すごい臨場感なのだ。

女子SP、安藤美姫のすばらしい演技。男子FS、高橋大輔の切実な演技。それらが再現されるくだりは、涙なしには読めないものだった・・・。ソチ五輪編もあるのかな? あってほしい! ぜひ早急に続刊を望む、そして今後も続けてほしい!!