ソチ五輪 女子フィギュアのメダリストたち(上)
すごい、ものすごい最終グループだった!
1位 アデリナ・ソトニコワ
シーズンが始まったとき、彼女がオリンピックの金メダリストになることを、誰が予想したでありましょうか。もちろん大器であることはわかってた。3季前、数々のジュニアタイトルを総なめにして鳴り物入りでシニアに参戦してきたときから、おそろしく難易度の高い、それこそ浅田真央くらいにつなぎの濃いプログラムを組んでいた。それを滑りこなせていたわけじゃなくても、食らいつき方が凄くて、とんでもなく負けん気が強くて個性的な子だなーと思ってた。ただ、ちょうど成長期の体形変化が始まって、ジャンプでずっと苦しんでいる印象があった。苦しみつつも、否定的な見方がでるほどにとんでもなく個性的なプログラムで滑っていて、いつも目が離せない子だった。
今季に入って歯車が噛みあいはじめて、ついにオリンピックで最高の演技を…! ショートを完璧に滑る姿はGPシリーズでも見ていたので驚かなかったけれど、最終グループで、祖国の期待という重圧の中で、思い切って金メダルを獲りにいったフリー。すごかった。149点が妥当なのかはちょっとよくわかんない。でもショートとフリー両方合わせて、誰より勢いがあったのが彼女なのは間違いないと思う。あの変プロで会場が興奮の坩堝と化すって、そして戴冠って、胸熱。来季のプログラムが楽しみ。
2位 キム・ヨナ
すごく楽しみにしてた。ショートもフリーも、私には初めて見るプログラムだったから。はぁ〜良かった。宝物にするよ。前にも書いたけど、キム・ヨナの滑りを見ると、いつも「南禅寺・・・」って頭に浮かぶ。京都五山および鎌倉五山の上におかれる「別格」の寺院なんですよ。
確かに、無敵のオーラはなくなってた。それでも、ブランクあり、大きな国際大会の経験なしでの、オリンピックでの強心臓ぶり。無類のものがある。もともと慢性的な腰痛があるというし、ケガもあったし、モチベーションだって…。調整の難しかったのは想像に難くない。やれ、向上心がないとか構成が甘いとかつなぎがスカスカとか言われるけど、それもひとつの戦い方だと思う。好き嫌いはあっても責められるべきこととは思わない。今の彼女にはあの構成がいっぱいいっぱいかもしれないんだよ。特に今回は、「最高の調子ではない中で、破たんなく滑りきる」ことに重点をおいていたんだと思う。それが大きな挑戦じゃないと、どうして外野が簡単にいえるだろう? 若い選手に比べればパワー不足の感は否めなかったけれど、あの円熟味、上質の技術に裏打ちされたけれん味。十分に酔うことができた。
とにかく、やはり南禅寺(=別格。しつこいw)なのだ。「アディオス・ノニーノ」、ほんと、いい。浅田真央がノクターン&ラフマニのピアコン2番、鈴木明子が愛の賛歌&オペラ座の怪人、高橋大輔がソナチネ&ビートルズメドレー、ジェレミー・アボットがLilies of the Valleyとエクソジェネシス。今季で最後、の決意で臨んだスケーターたちが、それぞれすばらしい、「らしい」プログラムを作ってくれたのは本当にうれしいことで、その中に、このアディオス・ノニーノがあって、私はうれしい・・・。去年の壮大なレミゼのあとで、このプログラムって、ほんとセンスあるなって思う。偉大な選手が演じる、ささやかで、装飾の少ない、けれど洗練の極みのエピローグ。衣装もとびきりエレガント。
彼女が競技会に出てくると素晴らしい緊張感があった。昨季も、肩の力を抜いて言いたいこと言ってるような雰囲気が好きだったけど(笑)、今季は最初から、インタビューなどで見ても、もっと吹っ切れたような、明るい表情をしていた。彼女の滑り終わったときの表情もとても含蓄があった。少し悲しげで、でもホッとしたようで。リンクを降りて、男性コーチとハグするとき、固く眉根を寄せて目を閉じる姿に、もしかしたら泣くんじゃないかと思った。キスクラで得点を待つときのリラックスした様子。高得点を確信しているというふうではなかった。彼女もきっと、点数のために(だけ)滑っていたんじゃなかったんだと思う。ウェアにジャージを羽織った姿でのインタビューも、のちに伝えられた浅田真央への言葉にも、すべての言葉に真情が感じられた。心からおつかれさまと、ありがとうと言いたい。孤高な、稀代のスタースケーター。