まるで一足飛び

回復力って、こんなにすごいもんなのか。
お産の当日、ボロ雑巾という比喩がこれほどぴったりきた例って人生初だわ、というくたびれっぷりに、
「入院期間中、家族以外とは自主面会謝絶だな」
と確信していたというのに、その翌日には早くも夕食を完食し、さらに翌日には、お見舞いにきた暴れん坊ちゃんと長々と遊び、今日は「げ!お産翌日より1.5キロも増えた!」と、おののいている。。。

同時に、朝夜となくミルクを飲ませおむつを替えて泣けば抱っこするような、いっぱしの母親のような真似もやっているのだ。

「ブラジャーをしておかないと、パジャマに染みたらなかなか落ちにくいですよ」と看護師さんにアドバイスされるくらいには、乳腺もひらいてきた。子を孕み生理が止まりお腹が膨らんで陣痛がきて外へ出し(最後は吸引だったけどさ)、次がこれってわけだ。三十余年、使われることのなかった機能だが、体に備わっていたんだな、そして一連の流れの過程がしゅくしゅくと守られているんだな、ということに、いまだに不思議を感じずにいられない。
それでも、現実に、私のベッド脇には小さな赤ちゃんが寝ていて、その子は、つい先週まで腹の中にいたというのに、今は必死で頭を動かしおっぱいを探したり、顔を真っ赤にして泣いていたのに抱くとぴたりと泣き止んだりしている。
お産から一週間も経っていないのに、あの日の痛み、そのあとの茫然自失としかいいようのない感覚は、なんだかもう遠い昔のことのような気がする。というか、夢の中の出来事だったみたいだ。あの日から今日までがたった数日でつながっているなんて、とても信じられない。
狐につままれてるんじゃないでしょうね。と思いながら、かわいい我が子と明日退院します。「あの日のこと」を私は日記に書くのかなあ。なんかそれすらわからん。