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『デート〜恋とはどんなものかしら〜』 第1話

冴えわたる古沢良太脚本! を、軸にした演技・演出・音楽の調和を堪能!!

放送前、長谷川博己がキャスティングされたと聞いて深く深く頷いたものだ。膨大な量、怜悧な内容の古沢脚本はハキハキ滑舌よく理知的に喋る必要がある。堺雅人ばりにバリバリ完璧にこなして、なおかつクセと華とを醸し出すには・・・長谷川博己はうってつけの人材! って、そういえば『鈴木先生』が古沢&長谷川コンビだったんですね、見てないから忘れてた。

実際、どんな役でもこなすけど、やっぱりこういうクズが似合うねぇと惚れ惚れ(褒めてます)。どんなクズでもこなす、しかも「クズなのに華やか」っていう稀に見るクズ俳優なんだろうな(褒めてます)。

『八重の桜』の尚之助だって、会津が負けた後の「女だ!ここに女がいるぞ!!」からの悄然とした顔、うつむいて去っていく背中がキモだったからね。マンガに出てくる王子さまみたいな会津戦争までの尚さま、あれ実はすべて前フリにしかすぎなかった、あの「女だ、ここに女がいるぞ!」を劇的にやってのけるためのキャスティング、あの落差を鮮やかに描き出すための爽やか王子さまキャラだったのだと今になって思うもんね。

今回は安心安定の最初からのクズ(笑)。寺山修司太宰治のフレーズを超オーバーに、そして空疎に朗読してくれるのが超笑える。幼なじみに「今夜のおかずはメーテル」と茶化されて激怒し、「僕を買い被るなよ!」からの「女と付き合ったことなんて一度もない!」の堂々たる童貞魔法使い宣言、そしてラストの「次に寄生する先を見つけた」の微笑み。

エキセントリックな演技を披露するハセヒロと対照的に、杏のほうは筋金入りのリケジョ(“とは差別用語である”と初手からあっさり定義しましたね流石)で融通の利かないこと甚だしいのだが、ほとんど感情的にならずにセリフを言う役どころですごく見やすかった。女がキーキー言うドラマってやっぱり基本的にしんどい。

語彙も文章も難解続きのセリフを危なげなくこなす杏に敬意。ベラ様の役のころから思うのは、彼女はとても頑張り屋さんな女優さんだということ。「目標が決まったら私は正しく努力できる人間だって知ってるでしょ」と父親役の松重豊に言う場面があったけど、杏自身にも重なる。天才的な女優さんでもないし、努力に「女優の業」を感じるような女優とも違って、「努力できるキャパシティが大きい女優さん」って感じがする。彼女に感じるのは「女優であること」というより「ちゃんと生きること」への「業」かなあ。こないだ、過去の『スイッチインタビュー』の録画を見て思ったことでもあるんだけど。そういうところが、東出くんと引き合ったんだろうなとも思う。

ずいぶん話がそれちゃった。

卓越した理系脳を持つ登場人物が怒涛のように数式を書きなぐるシーンは、普通は一休さんの「チーン♪」を導くようなカタルシスに繋がる場面として描かれるのに、このドラマでは依子の苦悩・答えの出ない焦燥の描写として使っていたのが、いかにも天邪鬼な(褒めてます)古沢脚本だった。でも、依子はいい子なんだよね。お父さんに心配をかけているのがつらいんだ。だから、寿司屋に行っても曜日が違えばシャリとガリしか食べないのがデフォルトだっていうのに、日曜日の昼に決まっている蕎麦でなくピザランチに甘んじもした。

それに比べると、同じく「母親を安心させたい」気持ちもあるであろうが、国家公務員の依子に「寄生」を目論む巧のクズさが際立つわけだが・・・これが男女逆ならば? 「親を安心させたいから安定した収入を持つダンナさんを見つけたい」と願う女性はクズなのかどうか? ってとこを古沢良太がついてくるのは明白。まあ、巧は家事雑事能力もゼロっぽいし、子どもを産むこともできないから、「専業主婦以下」なんだろうけどさ。

「デート」がタイトルなのも楽しみ。結婚とか出産とかをゴールに設定するんじゃなくて(や、結婚するかしないかというのはこのドラマでも大きな問題になるんだろうけど)、「デート」それ自体がテーマになってるんだよね。コミュニケーションの場所。どんなふうに積み重ねられていくのか楽しみ。

とにかく、古沢良太には今作でも大いに牙を剥いてもらいたい。世間的には「シリーズ1以下」との評価が定着しているらしい「リーガルハイ」も、私は「2」のラストの羽生(岡田将生)の扱いに敬服してましたよ。(↓そのときの感想)