海老蔵が団十郎襲名を
2020年、団十郎襲名。大方の予想通りの展開なのに、朝からなんだかとても感動してしてる自分が…。
この世代では群を抜いて世間を騒がせてきた歌舞伎役者。
いろいろ言われてきたけど、へぇ~と驚いたのは、2010年の『プロフェッショナル仕事の流儀』。
「父を好きだし尊敬しているが、同時に師匠だから、普通の親子の会話はしにくい。(妻には)そういう気兼ねをしなくていいから楽しい」
人格者の(故)団十郎と傍若無人な海老蔵、と見えるのに、家の中ではそうなのか。これが市川団十郎家というものか、と思ったものだった。
(なお、同じ歌舞伎でも家風はいろいろで、たとえば故・勘三郎なんかは息子たちとしょっちゅうマリオカートなどしていたらしいw)
とはいえ、まさか、父 団十郎が50代の若さで亡くなり、まして麻央さんまで数年後に亡くすとは、人の人生に序列は決してないけれど、なんという宿命を背負った人だろうと思いもしてしまう。
昨年9月に、再び『プロフェッショナル仕事の流儀』で特集があり、やっぱり面白かった。
・「重要なのはファンとアンチのバランス。アンチは絶対に必要」
・「多くの人に見てもらうには、現代において自分の存在はどういう位置なのか、考えて見せていかないと」
・「伝統芸能の基本は変えないことだが『荒らす』ことが必要なときも。ただ荒らしたらその分だけ整えなければならない」
歌舞伎って肉体を酷使する芸で、海老蔵クラスの役者になると出ずっぱり。激しく立ち回ってハケた瞬間から、舞台裏を走り回り衣装替えをしてまた走って舞台に戻っていく。そんなわずかな幕間にも「『鳴神』の後半でお客さんが必ず静かになっている。長いのかな…」と冷静に吟味していたりするのだ。
団十郎は歌舞伎の中でももっとも格式の高い大名跡。
御曹司ともなれば2歳、3歳で舞台に立たされる。これまた家によって教育はさまざまで、たとえば今の勘九郎は幼児の息子たちを皆の前で非常に厳しく叱りつける(様子をテレビカメラにも映す)が、海老蔵はそういう様子は見せない。父子でしっかり稽古をして上手にできるようになってから皆の稽古場に連れて行っているようだ。
「歌舞伎役者にとって大切なのは、家柄の香り、雰囲気。技術だけでなくそういう香りを継承していくことが大事。団十郎とは、大らかで華と存在感のある役者。そういう役者に育てるには、子どもの頃からの環境」と言っていた。
父も妻も亡くした海老蔵が、番組の最後「自分の最大の仕事は人を育てること」と言うくだりにはやはりホロリとくるものがある。
そして、息子の勸玄くんが、パーティではしゃいでケーキを食べながら、『楼門五三桐』の五右衛門の名台詞を、教えられてもいないのにすらすらと諳んじる様子が映される。うーん、完璧な構成だ(笑)。
話は今朝に戻って、ほとんどわかりきっていた襲名発表になぜこんなに感動したかというと、やはり口上だと思う。扮装や踊り、芝居はもちろんだが、この「口上」というものにも歌舞伎役者のキャリアが如実に出るもので、客の入っていない歌舞伎座、素面での口上の落ち着き払った様子には、自分の人生ごと晒してきた役者の凄みがあり、なにか歴史を目撃しているような気分にさせられたのだ。リンク先、興味のある方は動画をどうぞ!
ブログを検索してみると、過去にもいろいろ書いている・・・私、もしかしたら海老蔵大好きなのかもしれない(笑)
考えてみたら、新之助 → 海老蔵の襲名公演も観に行っていた(笑)
2010年8月 『プロフェッショナル仕事の流儀』(当時、番組最高視聴率だったらしい)