『獣になれない私たち』 3~6話

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当初、「ラブかもしれないストーリー」みたいな宣伝をしていたから惑わされてたけど、5話を見て忽然と閃きました。これはシスターフッドのドラマなんじゃないかと。

シスターフッドとは……女性解放という大きな目標に従った女性同士の連帯のこと (コトバンクより)

そういう目で見たら、息苦しさが多角的に広がるこのドラマの糸が、するする~っとほどけて一気に見やすくなりました。そして私はこのドラマがとても好きです。何なら『逃げ恥』より好きになる予感。

このドラマが描きたいのは、ガッキー&松田龍平そして田中圭ムズキュン・トライアングル☆なんかじゃないのです(といいつつ、ガッキーと田中圭のベッドイン写真を貼ってますがw)。

このドラマの視点は、実は女性たちにあるのです。

彼氏や上司や同僚のわがままを、ついつい「受け入れてしまう」晶(ガッキー)。
受け入れて、許して、うまくやり遂げてしまって、「いい女」とみなされる。
けれど、そんな生き方にも恋人・京谷(田中圭)との関係にも疲れ果てた晶が、このドラマの他の女たちと対峙する場面が描かれ始めるのが5話。

シスターフッドといっても、女たちは簡単には連帯しない。できない。
世の中は、女たちを分断しているからだ。

引きこもりの朱里(黒木華)は晶に叫ぶ。
「私はあなたが持ってるもの、何も持ってない!」
彼氏も、仕事も、女性らしいおしゃれや気配りも。

晶は死んだ目で朱里に返す。
「私はあなたがうらやましい」

京谷の母・千春(田中美佐子)は、夫との馴れ初めを晶に語って聞かせる。
それはピュアな恋と主体的な選択の連続。
晶は、千春のまっすぐさに打たれて、うらやましくて、泣く。
でも・・・その幸せな結婚生活のまっすぐ先で、千春は今、孤独感を募らせながら夫を自宅介護している。

恒星(松田龍平)との仲をあっさり捨ててIT長者と結婚した呉羽(菊地凛子)。
晶と京谷の関係を知りながら、京谷を誘って寝た呉羽を、晶はなじる。
「あなたがいけないんだから! あなたが京谷を誘ったから…。 でも、京谷を一人にしたのは私。私が彼を責めたから…」
なじる言葉は、だんだん、自分を責める言葉になっていく。

呉羽は晶を抱きしめる。
そして、数か月前に、子宮全摘手術を受けたことを明かす。
「どんなに望んでも得られないものができた」
それを、恒星にはどうしても言えなかったことも。

女たちはそれぞれに欠落感や自己否定があり、相手がうらやましくて、
でも相手が抱えている欠落感や自己否定はなかなか見えない。

「受け入れるいい女」「ダメな女」「明るく尽くす妻」「奔放な女」
みんな型に嵌まっている。

世の中で弱い側、周縁にいる側の女たちが、その中でさらに分断されている。
このドラマ、恒星や京谷など男性陣もいろんな事情や閉塞感を抱えてるんだけど、彼らをすくいあげようという目線はあまり感じないんだよね。

そもそも脚本の野木亜紀子って、【フェミニズム】にかなり傾倒した作家なんだと思う。
『逃げ恥』は、平匡(星野源)やら男性の生きづらさも描いてたけど、「呪いから逃げて」のセリフはゆりちゃんに言わせた。

『アンナチュラル』にもフェミニスト的なシーンが随所にみられた。ただ、ミコトと東海林の女性同士の連帯は「陽」のカラーだった。

今回は思いきり「陰」から入ってる。晶が彼女たちと剥き出しで向き合い始めた中盤。ここからどう連帯に向かうのか楽しみ!

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