『世界一 子どもを育てやすい国にしよう』 出口治明・駒崎弘樹

世界一子どもを育てやすい国にしよう

著者2人の対談本。フローレンスで待機児童問題や障害児保育などに携わってきた駒崎さんはともかく、ライフネット生命社長(当時。現在はAPU立命館アジア太平洋大学学長)の出口さんが「世界一子どもを育てやすい国に」とは、ちょっと驚くかもしれないが、出口さんがライフネットを創業したのも、所得が低い若い世代のために「ネット販売することによって保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産み育てられる社会をつくりたい」と思ったからだという。

子どもを育てやすい国にするため、という主題で何が語られるかというと、フランスの出生率を上げた「シラク3原則

(1.女性は産みたい時に産むべし、男性の意見を聴く必要はない。産みたい時にお金があるとは限らないのでその差は税金で埋める。
2.赤ちゃんを必ず預けられる場所を用意する。
3.男女問わず、育児休業を取ったあと、元の人事評価のランクで職場に戻れる)

や、保育園や虐待防止、地域コミュニティの問題はもちろんだけれど、

・残業が好きなおじさんは成長の敵
・ドイツに学ぶ社会保険の適用拡大
・大学の競争力が成長率を押し上げる
・ひとり1票の問題をどう考えるか
・日本の政治にクオータ制を

など、働き方や社会保障の仕組み、高等教育そして政治に至るまで、さまざまなトピック。

見出しだけ見ると難しそうだが、2人の話はものすごくわかりやすいので各論はぜひ、本を読んでもらうとして、ディテールが面白い部分をいくつか抜き出してみると、

(出口)「東京の選挙の候補者に、ベビーカーに10kgの石を乗せて公共交通機関を利用して1時間、都内を移動してもらったらどうでしょう? その感想をネットにアップしてもらう。それをやらない人たちには、私たち女性は一票も入れません、という運動をやったらどうですか?」とtwitterで提言したことがある」

(駒崎)「フローレンスは1日の残業時間が平均15分。たとえば、ひとつの仕事を二人以上で担当する「1タスク2ピープル制」で不在の人がいても仕事が停滞しないようにしている」

(出口)「残業で残っているスタッフに「ごくろうさん」は言わない。遅くまで残ることを評価していると勘違いされるから。経営者は「早く帰れ」と言うべきなんです。
 早く会社を出れば、早く家に帰り、自然と家事や育児や介護も手伝う。地域でパパ友もできる。人間は、時間があれば何かやってみようと思う動物なのです。残業の禁止は世界を変えるんです」

(駒崎)「民主主義は、人口ピラミッドが三角形で若年層がマジョリティの時代に機能する仕組み。逆三角形になった今は、高齢者が短期的な視野で意思決定しようとするので、未来への投資が過少になる。
ドメイン投票制(子どもの数だけ親に投票権を与える)や、エリア別選挙区でなく、世代別割当を考えるべきときでは?」

(出口)「30代と60代の人口はあまり変わらないが、若い人の投票率は高齢者の半分程度なので、政治家にとっては1/2。しかも、首都圏と地方との人口比を加味すると、実際は若い人の意見は本当は1/6くらいしか反映されていない。」

こういった事態について、出口さんの所見は愚直でまっとうであり、同時に突き抜けている。

(出口)1つ1つ、数字とファクトとロジックを積み上げて、徹底的に議論して向き合っていくしかないでしょう。先進国の中では、子どもに関する予算が対GDP比で少ないのは明白なファクトなので、「これでいいのですか?」と数字を挙げて問い続けていきましょう。

現在の社会を牛耳っている高齢の男性の意識を変えることにあまり注力しないで、若い人が勝手にいろいろなことをダイバーシティの中でやっていけばいい。その中で、社会を変えていくしかないと思うのです。

 がんばりましょう! みなさん^^

 

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