『経済成長なき幸福国家論』平田オリザ・藻谷浩介

経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方

この本1,000円ってありえないくらい安い! 平田オリザと藻谷浩介の思考を一挙にインプットできるっていうのに! 毎日新聞社も著者2人も太っ腹だな!! …っていう本ですw

もう、まとめるのがおこがましいというか、まとめられないくらい金言至言にみちているし、「成長なんかもうしない、縮小だ」って言われてるのに、なんか元気が出てくる。

「いい学校に入って、教育カリキュラムにうまく能力を伸ばしてもらい、いい会社に入って、人事にうまくやる気を引き出されて働いています」というのは、まるで「いい養鶏場でいいエサに育てられて、いい籠の中でモチベーションを引き出されて卵をたくさん産んでます」という鶏のようなもの。地鶏のほうが自己決定力があると思いますよ

と、藻谷さんは相変わらず口が悪いのだがw、「自己決定力」はこの本において、そして未来を生きる私たちにとって大事なキーワードの1つ。

日本では、エリートと称しているのに自己決定を一切できない人が大量に存在する。それは「何をしたいから」ではなく、周囲に褒められるから「いい学校」に入り、教わった通りに疑問をもたずに暗記し、東京の「いい組織」に就職した人たちがエリートとされているから。つまり自己決定しないほど、東京に集まってエリートになれるからだ。

「むやみやたらに東京に出て行って、ブラック企業に入って人間らしさからかけ離れた労働をし、通勤も育児も大変な生活を送るのが幸せなのか? 大多数と違う選択をしてでも自分にとっての幸せは何なのか考え、決定できる力がこれからは必要だ。」

・・・・って、ほんとそうだよね!!! でも、子どもにそれを教えていくことの難しさも感じる。教育も社会も、「決められたことをこなす=評価される」「自由に発言したり行動したりする=トラブルメーカー」みたいな雰囲気はとても大きいから。でもだからこそ、「それだけではいかん」と心に留めておかねばならんのだろうな。

(マイナス成長の世の中で)教育熱心なお母さんは「船が沈むときでも自分の子どもだけ水面から顔を出せればいい」と考えがちで、海に飛び込んで生き残る能力を身につけてほしいとはなかなか思わない。ですがタイタニックも結局は沈んだわけで、本当に重要なのは船を捨てる能力です

船を捨てる能力。難しいけど、これみんなで共有したい。

子どもにも、婚活や少子化にも、認知症の人にも「演劇」が大きなパワーを発揮する!!

という平田オリザの信念と実践はすごくて、最近ではついに、演劇やダンスを学べる国公立大学の創設が決まったようだが、そこでも彼が大きな役割を果たしているのは間違いない。なぜ演劇がいいのか?その理由も本書で見てね。

natalie.mu

・(副業ではなく)複業を
・「経済成長にはイノベーションが欠かせない」はトートロジー(同義反復)に過ぎない
・文明と文化とアートの違い
・これからのテクノロジーリベラルアーツが必要なわけ
・リセット願望は危険、大事なのは下り坂を「ゆっくり」下ること

などなど、刺激的な話題ばかりであっというまに読み終わる。章立てや目次もすごくわかりやすく組んであって、この2人の共著を仕切るだけあって、編集の人もめちゃくちゃ優秀なんだなと思わされます。繰り返します、これがたったの1,000円です!!

 

 

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