『西郷どん』 第19話 「愛加那」

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ハァー今回もよかったわー。なんてことない話なんだけどね。毎回のようになんてことないなんてことない話だって言ってすみませんね。でもこれほどなんてことない、主張のない脚本をさらっと書いて素朴な感情に訴えてくるってすごいと思う。官兵衛とか花燃ゆとかにはそれができなかったのだよね…。

なんてことない話のためにクズ田中に扮する近藤芳正が大活躍である。収穫が少ないのを上役に怒られたから、シマンチュに罪をかぶせるって、なかなかリアリティあるクズよね。佐民の家への強制捜索、これがまた絵づくりが派手で惹きつけられるのよねー。持ち込んだ砂糖を壺に入れるショットはハッキリとわかりやすい(笑)

しかも、若く美しいとぅまを現地妻にと求める田中! 抵抗されればそれはそれでみなぎる田中! ゲスい、ゲスのテンプレすぎる~! そこに助けにくる菊池さま! 一刻も早く薩摩に戻るため、騒ぎは起こすなと念押しされてるのに、己が身をかえりみない! ヒーローの鏡!!

ここからよ。
洞窟にいる巫女さんみたいな人に、「本当は見えているのだろう」と言われるとぅま。もうすぐやってくるという夫は、やはり菊池なのだと。「そのあとは?」と聞かれて、私はてっきり、「子どもを抱いている私が見える」とか、さもなくばせめて「子どもと共にあの人を見送っている私が見える」とかいうかと思ったら、「私は一人」「ずっとずっと一人」って・・・!

そのうえで、菊池のもとへゆき、「私をアンゴにしてください」と願う とぅまどんなのですよねーっ!!
あの、自分で衣をハラリと落として・・・っていうのも、時代劇に連綿と受け継がれてきたテンプレ・・・いや伝統なんですけど(ex 『毛利元就』での富田靖子)、やっぱり、いいもんはいいよ!!

そこで据え膳いただかず、後ろから衣をかけてやって、前から向き合っての「妻になってくれ」と言う菊池様。それでこそせごどんですよー!!!

婚礼の宴のシーンもすごくよかった。明るくて、楽しくて。「いつかは帰ってしまうのに…」と言う佐民に「それをわかったうえで、そばにいたいのでしょう。あの子のあんな明るい顔、初めて見ました」と妻が答えるのがとてもよかった。みんなで輪になって踊って、いいシーンだった。

そして夜。「名前をつけてください」と言ったあと、「本当の名前を教えてください」という・・・!

とぅまではなく愛加那になる。そして、西郷吉之助は菊池源吾になると言う。でも、彼が西郷として歴史に名を刻むことを私たちは知っている。このとき生まれた名を、愛加那はきっと一生、名乗っただろうに…。2人のラブいシーンなのに、すでに別れを内包している。巧まざるといったていの脚本演出がかえって泣けた。

二階堂ふみは全部のシーンがいい。今まで見た彼女の中で(そんなにたくさん見られてないけど)一番好きかも、とぅまが。そして、この夜のシーンでの鈴木亮平の表情は、何日も経った今おもいだしても、ぐっとくる。柄が大きくて優しくて、それでいて、二階堂ふみに引き出されるかのように、たいへん生々しい手触りがあった。

んで、そのあとの西田敏行のナレーションに、「せごどん! きばれ! ちぇすと!!」って、どうして言わせないのーーーー!!! まさに今こそ「きばれ!」な場面でしょうよ!!! 下ネタをおそれるな!!!(錯乱