『西郷どん』 第16話 「斉彬の遺言」
基本的に歴史を描かないスタンスでこの内容をやると本編正味40分がだいぶ長く感じるというのはあるけど、場面場面にやっぱり見るべきものがある。
視聴者的に、「斉彬が死んだら、さぞ狂わんばかりに号泣し喚き散らし嘆き悲しむんだろうなあ」と予想して見ているところ、存外キリッとしてるんでアレ?って思ったら月照さんに「薩摩に帰って後を追うつもりやろ」と指摘される流れ、他愛ないっちゃないけど、一捻りあってよかったわー。
ドラマの描写では相変わらず何でそんなに大物フィクサー扱いされてるかわからない月照さんだけど、なんせ尾上菊之助のたたずまいから発されるオーラがハンパなくて、「後を追うつもりですやろ」の眼力にも納得です!!! ここ、
「あんた、よう肥えてはるから、さぞかしぎょうさん血が出て、立派なはらわたが出るやろなあ。でも、それだけのことです」
ていうセリフもよかった。意外にもリアリストの月照さん。だから自分もはるか薩摩まで逃げるんだよね、そして、こう言ってくれた月照さんだから西郷は命がけで薩摩まで共に逃避行しようと思ったのだよね、ってとこにもつながっててうまい。
てか、今回の白眉は、「高僧が(歌舞伎でおなじみの)山伏の恰好をするも高貴さがにじみ出てしまい、山伏らしい所作(←中の人が本気出したらイチコロ)をハリセンボン春奈に教わって、ぎこちなく真似する・・・という芝居をする当代菊之助」シーンじゃなかろうかw 視聴者サービスありがとうございましたww
井伊掃部守といえば定番の「おそれいりたてまつります」連呼だが、このご時世に聞いてると、「こ、これはスガ官房長官・・・!」と撃たれてしまった! てかスガさんは完全に掃部守戦法をパクってるだろ。
佐野史郎が、ヤな奴はヤな奴なんだけど、彼なりの一抹の芯を持ってる感じを出しててさすがうまいんだよね~。こないだの『コンフィデンスマンJP』でも、うまかったな~。伊武雅刀と津田寛治が、待たされすぎてお腹すきすぎて攻撃力低下しちゃったっていうの、あんまりっちゃあんまりだけど、そういうのって割とあるよなと思っちゃった。伊武雅刀の空腹疲労演技がうますぎたってのもあるw
「おそれいりたてまつります」攻撃を食らったもう一人、ひー様。松田翔太は、パリッとした肩衣も似合うし、佐野史郎を上から糾弾するせりふ回しも大したものだった(という上から感想w)。一方で、およしにちょいと弱気な顔を見せる遊び人ヒー様の風情ももちろんハマってて、この慶喜の人物造形がツボってきた私がいるであるよw
およしの、遊女にあるまじき「一緒に行って “あげる” 」は、続く「どうせひー様も独りぼっちなんでしょ」というダメ押しがついてくるから、もちろん意図的なセリフなのだ。いや、意図的だからってもちろん遊女にあるまじきセリフではあるんだけど、考証的に見たら0点なんだけど、私はなんだかこのシーンを好もしく見てしまった。遊女と客とはいってもそれぞれ性格があって、個の人間同士としての関係性も生まれるわけで、こういうこともあったかもしんない。って感じがした。
高梨臨ちゃんの健全な女子大生キャバ嬢みたいな遊女もなにげに好演だと思う。