夜の巷の木村拓哉

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マツコ・デラックスの深夜番組『夜の巷を徘徊する』木村拓哉ゲストの回、すごくよかった。思わずリピートしちゃった。

木村拓哉とマツコ・デラックスって高校の同級生なんだよね。なんて粋な運命なんでしょう、神様! 
たとえ当時は面識なくても、いい年になってくると、“同じ学び舎”(←とキムタク自身が言ってた)ってだけでちょっと「おーっ!(ハイタッチ)」って気分になるよね。
 
SMAPのことは全員応援してる。あの解散劇の異常さを見てしまった今、もう応援っていうのも超えた切実な気持ちに近いもんがある。彼らがもっと言いたいことを言えて、望む活動ができることを願ってる。

ドラマや映画があるからいろんなところで露出してる木村拓哉が「これからは自分ひとり」「しっかりしなきゃ」と誠実に語る声のトーンはいつも重ためで、どんなインタビュアーや共演者も、解散に関しては歯に衣着せた物言いしかできなくて、見ててつらかった。
 
そんな中でのマツコ・デラックスですよ。しかも同級生! 神様ありがとう。
シャレオツ(死語)な居酒屋みたいなとこに入って初めて乾杯する2人。「ねぇあたしこれからどうしたらいいと思う?」って、木村兄さんがこんな状況なのに自分の相談を始めるマツコ。

「俺ら普通の人間が言えないことをマツコならドーンと言ってくれる、言ってほしいと期待してる。攻撃的なものを求められてる。でもおまえだってセンシティブなわけじゃん。だからどこかで線引きしたらいいんじゃない? 別に明文化するとかじゃなくて、自分の中のルールとして」
って、木村兄さんの答え、なんという・・・!

周囲からの期待に対して、彼もまたそうやって処してきたのでしょうか。長年。
それに対するマツコの反応も超的確。
「芸能人、覚悟してるランキングで言ったら、あんたかなり上位よ」
 
夜の巷は浅草寺に向かって歩く2人。

すごく面白いのがさ、通りがかった一般人も業界の知り合いも、みーんな先にマツコのほうに気づくんだよね。マツコのシルエットは偉大だ。

道を歩いてて、ことごとく後から気づかれるっていう経験、キムタクにとっちゃ、かなりレアなんじゃない? 気づくとみんな、「!!!!キムタク!!!」ってそりゃびっくりするんだけど、ちょっとマツコと会話して自分のペース出したあとだし、マツコが場の雰囲気を作るから、みんなそれなりに喋るのよ。これ、一発でキムタクに気づいたら、そしてキムタクしかいなかったら、ひたすら絶句するしかないって人いっぱいいると思うよ。
 
傑作だったのが、それぞれ自転車に乗って通りかかった妙齢のお姉さん2人。
「マツコ姉さん!!」と、やっぱりマツコに先に気づいたあと、「木村兄さん・・・・!!」って一瞬固まったあと感激。で、この人たち、娘っこみたいにキャーキャー言うんでもなく、おばちゃんみたいにギャーギャー言うんでもなく、生キムタク遭遇の歓喜を絶妙な雰囲気で喋り続けてて面白かったんですわ。
 
 お姉さんA 「不幸のどん底だったけど超あがった!」
 お姉さんB 「生きててよかったー」
 マツコ   「ちょ、いったい何があったのよ」
 お姉さんA 「いろいろ。仕事とか、プライベートとか、もういろいろ」
 お姉さんB 「帰り、車にひかれてもいい。安心して天に召される」
 キムタク  「ちょ、死ぬなんて言葉、簡単に使うな」
 マツコ   「この人そういうの厳しいのよ」
 お姉さんA 「生きる!」
 お姉さんB 「大丈夫、あたしたち多分死なない」
 お姉さんA 「たぶん、向こう(天国)から帰される」
 
天下のキムタクにダメ出しされてもまったく動じず、天下のキムタクに会えた喜びをマイペースに語り続けるお姉さんたちw 強ぇww
 
 お姉さんA 「すっげーよかった。涙出そう」
 お姉さんB 「人生で最高の幸せいただいた」
 お姉さんA 「あたしたちいつもはあっちの道を通るんだけど、今日はなんかこっち行ってみようかって」
 お姉さんB 「もう、私たち VIVA!」
 
ビバ!!
 
ほんとにさ、道を歩いててキムタクに会えるなんてめちゃくちゃうれしいことなんだよ。人生で最高の幸せいただいたぐらいの気分になっちゃうんだよ。でもお姉さんたちはあくまで自分らのペースで喋り続けるんだよ。お姉さんたちにはお姉さんたちの生活や人生があって一生懸命生きてる。そういう人たちに「涙出そう」って言わせちゃうぐらい、間接的にずっとエンカレッジし続けてきたのがキムタクや、SMAPなんだよね。
 
なんか、アイドルでスターの仕事をずっとやってきた木村拓哉と、普通のお姉さんたち(それはもちろん視聴者の姿と重なる)との人生が、一瞬、まっすぐに等価で交わった感じがした。
 
お姉さんたちの人生最高の幸せの気持ちが手に取るようにわかりつつ、キムタクのほうもうれしかったんじゃないかと思った。ああいうリアクション見て。普段は見えにくいけど、自分たちを見てくれる人には一人一人顔があって一人一人確かな人生を生きていて、自分たちの活動はそういう人たちの力になっているんだ、って。
 
SMAPってもとより自分たちの仕事のそういう価値をすごくよくわかっている人たちで、だからこそどんなときも素敵なパフォーマンス見せ続けてくれた。ひとりよがりや自己顕示欲でできる活動期間/内容じゃないよね。スタッフやファンとのつながりがなければできないと思う。見てくれる人を大事にしていたし、見てくれる人から彼らもずっと力をもらっていた、そんな力の相互交換があったんだと思う。
 
5人そろってのパフォーマンスをどんなに望まれているかわかっている彼らにとって、今の状況はつらいだろうし、木村兄さんが自責の念みたいなものを言葉に滲ませるのもいろんなインタビューとかで聞いたけど、でも彼らは私たちにとって、道でバッタリ会おうもんなら「人生最高みたいな幸せをくれる」人なんだよね。輝ける存在なんだよね。それは変わらない。彼らがパワーをくれるから、私たちもパワーを返す。今も、これからもそうなんだよって、あのときの木村兄さんに伝わってたらいいなあ。わかってくれたんじゃないかなあ。
 
その後、2人で浅草寺の護摩の煙を浴びたり(弱ってるところ、あっためたいところに…といって、“下腹部”に煙をもっていくマツコw キムタクに“下腹部”って言わせたw そして同級生2人で老眼トークw)、おみくじ引いたら2人して凶だったり。浅草寺のおみくじは凶の割合高いっていうけどねw 
 
「凶」を見た瞬間、「ごめん、私が(運の悪い方に)ひっぱっちゃった!」とマツコが謝り、「いやでもこれ結べばいいんだよ」「こんなのたまたまでしょ」とキムタクが平然となだめ、マツコが「ったく、あんたがおみくじ引こうとか言うからよ」と最終的にキムタクのせいにする流れ、美しかったw
 
「これから俺、定期的に来ようか?巷」ってキムタクが言って終わったけど、木村兄さんあれは本気でしたよね。テレ朝さん、これを逃す手はないですよね!!

◆余談
 
・「あさイチ」のプレミアムトークでも良かった。木村兄さんは苦悩が滲んだ表情も少なくなかったけど、中井貴一からVTRメッセージがあってね。
「本当に真面目な人。僕らとは比べ物にならないくらい忙しくいろんな仕事をしてて、それでも現場に台本を持って入ってるのを見たことがない。どんな天才だとしても、努力なしでできることじゃない。これからより面白い年代になると思うので楽しんで」
 って。
中井貴一みたいに真面目な人から真面目って言われるなんて、ホントに真面目な人なんだよなあ。彼と一緒に仕事をした心ある人たちはみんなそのことに敬意を持ってる。
 
・「死という言葉を簡単に使うな」という木村兄さん。四半世紀、ずーーーーーーっと人の注目を浴びて、マスコミや一般人にあれこれ噂や詮索、批判もされてきて、それでも逃げずにずっと第一線に立ち続けてきた人の思いって、一般人には計り知れないものがあるだろうね。浅田真央ちゃんにもそれを感じるんだけど。
『華麗なる一族』で最後に自殺してしまう鉄平の役は、どんなにつらかっただろうとふと思った。