今さらですが 『逃げるは恥だが役に立つ』

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やっとこさっとこ、録画を見終わりましたよ!!
めっちゃ面白かったですね!!!ほんと、いつの話だよって感じですが、私は今、モーレツにコーフンしています!!

・・・といっても、ムズキュン?っていうんだっけ? 
 少しずつ縮まっていく二人の距離、これは恋なのか?恋していいのか?いやダメだ、でも我慢できない、アーッ!!
みたいな部分には、あまり萌えなかったの。
たぶん、25年前なら萌え転がってたと思う。

同じく、番組も人も違いますけど、昨今の大ブーム、高橋一生にも萌えられない。役者さんとしては大好きなんだけどね。15年前なら周囲が引くレベルで萌えてたと思う。10年前はもう知ってたの。そう、彼、2007年の大河ドラマ『風林火山』に出てたから。駒井高白斎っていう、武田信玄界隈では有名な人物を演じてたのよ。・・・って、なんの話だよ。

そう、ムズキュン。ムズキュンに萌えるには年をとりすぎたのね、私…。
ムズキュンが始まると、なんか、こっぱずかしくって、見てはいけないものを見てしまっているような、初々しい二人に申し訳ないような気持ちになって、1.4倍速で見てたの。
 
でも、ガッキーのかわいさってすごいな!!!無敵だな!!! もう、ガッキーがかわいくてかわいくて、見てるだけで元気が出てくる。ガッキーありがとう。ガッキーと同じ時代を生きる幸せ。なんかほんと、みくりの髪型にしたくなる。なれないのに。ガッキーになんてなれないのに。
 
ふー、落ち着きましょう。
 
そんな、ムズキュンがこっぱずかしい私にとって面白かったのは、劇中で展開される、他番組etcのパロディーに次ぐパロディー。初回の録画は家族で見てたんですけど、いきなり情熱大陸のパロディーが始まるもんだから、「これ、ドラマか?」と息子6才が疑義を呈しておりましたよ。

なんか、ネットを見たら「パロディーネタしつこい」「やりすぎ」とかいう人も割といたみたいだけど、やりすぎ・しつこい・ウザいが好きなタイプの私には大好評ですよ!! 石田ゆり子が林先生からの~金八になるとことか、面白すぎてリピートしたあげく夫にも見せたもん(笑)。最終回、まんをじして「真田丸」が始まったときも机バンバンしてたw コーエー『信長の野望』っぽい地図までちゃんとパロっててねww 6話くらいで出てきた、Eテレ「2355」のパロディーもよかったな~。わかってらっしゃる!! 

ついにベッドイン(この表現が古いなw)した2人のピロートークをパペットに言わせる演出も好きだったんですけど、やっとこさっとこ結ばれた途端にリストラに遭うのがドラマよね。そこからがまた、超面白かった!!

10話のラスト、「愛情の搾取」って言葉が出てきたとき、 「そうだよね、それがこのドラマの本丸だよね!!」って沸き立ったわ。

何しろ自分がリアルタイムでドラマ本編見れてなかったけん、twitterも横目で見るくらいしかできなかったのが惜しまれるっちゃけど、それでも紛糾してるのがわかった。愛情の搾取問題。
 
  • 主婦の仕事は「愛情の搾取」だ、そーだそーだ!派
  • わたし専業主婦だけど、権利をふりかざすみくりは傲慢だ!派
  • いや、専業主婦の妻を持つ夫こそ家族に愛情を搾取されている!
とかね~。
面白いなーと思ったのはね、パッと見た感じ、「みくり、よく言った!」と言ってるのは若い人が多くて、「みくり、いきなりどうしちゃったの? 主婦は搾取されてなんていないよ」と言ってるのは、私より年上の世代が多かった気がしたのです。や、簡単に括ってはいけないんでしょうが。

愛情の搾取の前に、商店街の青空市の仕事と絡めて「やりがいの搾取」をやったのも、脚本うまいと思った。そう、本来、性別を超越した話なのだよね。
 
現実では、「彼が好きだからできる」「彼は外で頑張って働いてくれてるから」「その分、家事は私がするのが自然」って感じで、なんとなく性別役割分業しちゃうんだけど、「これで報酬を得ているのだから完璧にやります!」とこから始まって、「好きになっちゃったけど…心身ともに結ばれたけど、えっ、これから、これをタダでやらなきゃいけないの? 主婦の皆さんはこれをタダでやってるの?」っていう流れになるのが本当に面白いし、納得感ある。
 
「搾取」ってセンセーショナルな言葉だけど、たとえば夫婦間で「なんで俺/私ばっかり、こんな負担……」とモヤモヤしたり、「つらいけど、専業主婦だから/大黒柱だから 仕方ないよね…… 」と抱え込んでしまったり、配偶者に対して「専業主婦なんだから/大黒柱なんだから、ちゃんとしてよ!」と思ってしまうときって、みくりみたいに「もしかして、これは愛情の搾取問題じゃないか?」って考えみてもいいのかもしんない。

そして、その答えは・・・決まってはいない。唯一無二の正解はない。
不安やモヤモヤを解決するには、自己分析し相手のことを想像して、そのうえで2人で共有したり話し合ったりしていくしかない。

最後のパロディーが懐かしのフレンドパークのダーツで、「子だくさん」「専業主夫」「別離」など、すべての可能性を俎上に(ダーツの的に、だね)乗せているのがすごくよかった。そのうえで、「そのつど話し合って、ライフスタイルを変えていくしかない。模索は続きます」という帰着に持っていったことに私はとてもエンカレッジされました。

そう、先の見えない人生を、考えながら話し合いながらやっていくしかない。
それは時にしんどいけど、わくわくすることでもある。
すごく現代的な展開と帰着だったと思います。
 
そして、自己肯定感と承認欲求の問題、年齢の問題、性的アイデンティティーの問題、見た目で判断される問題などなど、こちらも現代的なトピックが、それぞれの人をとても尊重しながら(←ここ重要!)描かれてました。

専業主婦の家事問題もそれらの一つで、それらすべてを百合ちゃんが最終回で「呪い」という言葉で表現したのだよね。若い方が価値があるとか、異性愛が普通とか、いい年して童貞の俺ってとか、かわいげのない女とか・・・私たちの周りには呪いがたくさんある。呪いを自分にかけちゃだめ。そんな呪いからは逃げちゃいなさい、と。
「逃げるは恥だが役に立つ」は呪いからの逃走をさしてたんだね。
 
みくりのモノローグではそれを「自分自身を縛るもの」と言っていた。
呪い、縛り。
みんなの呪縛がとけて青空にたちのぼっていく画は、感動的でしたね。成田凌くん、それまで特にいいと思ったことなかったんだけど、彼が古田新太を見た瞬間の泣きそうな顔に、私は泣いてしまった。古田新太と成田凌くんのカップルがとても美しいものに見えたのだよ!!
 
石田ゆり子が演じる百合ちゃんにも、ドラマ後半になってぐっときっぱなしだった。
 
美人で仕事ができて、みんなの高嶺の花だった百合ちゃん。
真面目な性格で男性と付き合った経験はほとんどない。化粧品会社で管理職をしてバリバリ稼いで、姪っ子のみくりを溺愛している。会社に残っている同期の女性社員は、ほとんどが結婚出産して出世コースから外れている。「土屋は私たちの希望の星なのよ!」なんて言われる。部下の男子社員にかけたふとした言葉が拡大解釈されて、セクハラと告発されたり。理路整然としたプレゼンのあと、上司や男性社員から「だから結婚できないんだよな」と揶揄されたり。
 
男性にモテるため・愛されるためではなく、女性が自分の思いのままに生きられるように、自由な表現をできるように、媚びない広告を作ってきた。でもそうやって、「女性の意見」を言って実現するために、百合ちゃんがどれだけ傷ついてきたか。今も傷つくことがあるか。思わず往来で涙しちゃた百合ちゃんに、壁ソッして、泣き顔を隠してあげる風見さん! サイコーな表現!! 壁ドンの横暴さに対するすばらしいカウンターだった。
 
そう、ディーンフジオカと同じく逆輸入俳優らしい彼、大谷亮平さんの生硬い日本語のセリフ回しを、最初は「トホホ…」と思ってみてたのに、途中から風見さん大好きになったからね、私! 彼が百合ちゃんに「あなたを抱きたいと思っている」って言ったとき、「よう言った!!!」と叫んだよ、あたしゃ。
 
ゼェ。
 
みくりと平匡のムズキュンはこっぱずかしいと言ったけど、二人が(雇用主と従業員としての頃から)繰り返し、相手に向かってプレゼンしたり、それで話し合ったりするシーンを見るのは大好きだった。
 
理系男子の平匡も、数字や論理に強いだけじゃなくて、相手の話をしっかり聞いたり心情を思いやったりしてコミュニケーションできる。
女子のみくりも、状況分析して論理的に話を組み立て自分の意思を持ち、はっきりした声と口調でプレゼンできる。
 
そうやって、お互いに理解し合ったり、歩み寄ったり、前進したりする2人の姿はとても好もしかった。それは、ジェンダーフリーの表現でもあったし、個人の尊重の表現でもあったし、職場の在り方の表現でもあったと思う。みくりは、平匡のコンプレックスに気づいていながらも決して偏見をもったりマウントしたりしなかったし、平匡は、雇用主だからといってみくりを決して下に見たりせず働く彼女の権利を保障し良い労働環境を維持しようとしていた。
 
ムズキュンもあるけど、2人の、気持ちのいい、フラットでイーブンなあり方が、支持を集めたんじゃないかなーと思ってる。若い人がそんな恋愛を、そんな結婚を志向するのは素敵だし、もう結婚してる私もそんなふうにありたいと思った。
 
夫婦だけじゃなくて、他の人間関係もそうだ。自分の気持ちをしっかり言葉にして、相手の言葉もしっかり聞いて、人と人との関係を、フラットに、イーブンに。だからあの歌は、「♪夫婦を超えてゆけ 一人を超えてゆけ」なんだね。最終回まで見てやっとわかった!!
 
こういうメッセージを、たとえばセミナーとか講演会みたいなので直接的に伝えることもできるけど、「メッセージとか特に意識しなくても、すっごく面白いから見ちゃう! 見て、すてきだなあと思う」っていうふうにできるから、ドラマとか小説とか、「物語の力」ってすごいと思う。
 
こういうのがたまにあるから、テレビドラマはやめらんないね! 作る人たちに心からの敬意を。近日中に私の髪型が変わったら、「みくりになりたかったのね・・・でもなれなかったよね・・・」と優しいまなざしで見守ってください。