『とと姉ちゃん』 第13週 「常子、防空演習にいそしむ」 ツイートと追記: 二項対立ではない世界

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 人はやっぱり二項対立で物事を捉えやすいのかな。#とと姉ちゃん はそこから脱する世界を指向していると思うけど。君子vs滝子、常子vs早乙女など、対立を描いても、決して簡単に善悪や優劣を断じない脚本で、だから対立が胸に突き刺さるんだけど。ジェンダーの問題にもまだ全く結論出してないし。

常子がいい女で早乙女がダメな女、そういう描き方では全くなかったと思う。早乙女は終始美しく凛として、さらにささやかな心がけを持つ女性として描かれた。仕事における頑なな態度や辞めてゆく人間を擁護しないのは環境が大きいという描き方だったと思う。環境の限界が個人の限界を作る

常子が早乙女と対立して己のやり方を貫けたのは、小橋家の教育と「自分で考えて動く」資質ゆえ。でも雑用をやり続ける根拠「困ってる人を助けたい」はビジネスの場においてあまりにあまちゃん論であり、最後はあのとき褒めた部長に切り捨てられた。あの環境に敗北したのは早乙女も常子も同じ

対立したあと常子と早乙女の心が通ったのは、全く違う考えでも「自分で考えて動く」点、共通してたから。そんな2人がそれぞれ頑張っても会社は変わらないというシビアな現実は、ドラマの将来に向けて必要な描写。2人とも等しく頑張ってて必死で、いい女・ダメな女という色分けには全然見えなかった

男と女しかいないんだからうまくやっていくしかない。それは滝子という人物の考えで、このドラマの結論では当然ない。常子はその言葉にとりあえず納得したけど、それが世間で簡単に実現しないのは、常子自身が女だからと容易く首を切られた現実によって示される。答えはまだ探し求められる途中

力では男にかなわないのは事実。物騒な世情では男がいるだけで安心なのも事実。中年女の君子になかなか仕事が見つからないのも、職業婦人でも簡単に首を切られるのも事実。そんな世の中で女性がどう生きていくか、そう考えて作られるのが主人公の出版社ではないですか。立派にモチーフしてるよ。

甲東出版で男女の別なく意見を言える環境を得たけど、そこでは男は全員徴兵されるという「男女の別」が皮肉に展開される。予告で社長も五反田も復員してたけど、常子は出版社を立ち上げるみたいだ。甲東出版ではなく自分で。何か理由があるんだろう。まだまだ物語は続いてる途中。

ジェンダーの問題にしても、どっちがエラいとか簡単に決めつけてない。女性の社会的・身体的弱さをきちんと描く一方で、男たちが徴兵され戦死する現実も描かれた。鳥巣商事の課長も部長も、やな奴なだけでなく、彼ら自身決して幸せには見えなかった。会社社会の男性の屈折や鬱憤をひしひしと感じた

男女の現実、時代の厳しさを描いたうえで、男だとか女だとかではなく、滝子のような強い人や君子のようなほわわんな人、どちらを称賛したり断罪したりでもなく、すべての人が「一人の人間として尊重される」のが #とと姉ちゃん 世界の理想。「あなたの暮らしを大事に」で常子はその実現を目指すんだろう

キャラ萌え的な視点で見てると「キャラが大事にされてない」「使い捨て」に見えるのかな? 私はバカ三兄弟も早乙女さんも多田さんも諸橋さんも、長谷川やお竜も、ずっと覚えてると思うけどな。出番の多寡はあってもそれぞれ鮮やかな印象。劇中で語られない部分もいろいろ想像させてくれたよ。