
- 作者: 丸島和洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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結論: 戦国大名はかなり高度な外交を行っていた。
●戦国大名や国衆の和睦・同盟にあたっては、「起請文」の交換が重要
・起請文とは…「誓紙」「誓句」ともいい、神々に誓約する内容を書き記す文書
・「前書」(誓約内容)を記したあと、「この内容に偽りがあれば神罰を蒙る」といった文言とともに、神々の名前が書き連ねられる(これを「神文」「罰文」という)。
・誓約内容はもちろん、記す神々の名も相互の交渉で決定される。この点、有馬晴信などキリシタン大名においては問題化することがあった。
・「牛玉宝印(ごおうほういん)」という木版刷りの護符を料紙として使うのが一般的。裏返して白紙に内容を記す。よって、「宝印を翻す」というフレーズは「起請文を交わす」という意味で使われていた。どこの神社が発行する宝印を用いるかも、交渉で決める。
・起請文は、戦国大名同士だけでなく、家臣同士も取り交わす場合が多かった。本件の取次(外交官)だけが交し合う場合、一門や宿老全員が提出し合う場合など、ケースバイケース。
・起請文は、同盟や和睦の成立時だけでなく、何か協議事項が生じた際には、同盟維持の確認も含めて頻繁に取り交わすものである。
・逆に、同盟が破棄されるときには「手切之一札」と呼ばれる同盟破棄の通告書を送付し合うのがルール。自己の正当性や相手の悪行を書き連ね、戦争「せざるを得ない」理由を説明。この書状は第三者にも写しが配られ、周囲に戦争の正当性が主張されるものだった。
●戦国期の大名や国衆レベルには、書状を記す上での作法「書札礼」(しょさつれい)があり、共有されていた。
・宛名の書き方、宛名を書く位置、書止(書き終わり)の文言、料紙の継ぎ方や種類etc、etc。身分の上下や力関係によって様々に使い分ける。
・戦国大名同士が初めて外交書状を取り交わす場合、まず書札礼をどうするかが話し合われる。礼に適っていなければ、受け取りを拒否する(される)こともある。
・外交書状は基本的に、以下の文書が組み合わさって機能する
1.政治向きの要件を書いた書状
2.贈答儀礼を記した書状
3.交渉案件を一つ書き(各々、頭に「一.」と記して書く箇条書きのようなもの)列記した「条目」「手日記」
4.取次(本案件を扱う外交官)の副状
(つづく)