朔太朗的日常:5歳になりました(その5)

●近所に、おそらく病気をされて言語が不明瞭になったおじいちゃんがいる。でも、とても明るくて人懐こい方なのだ。ある日、小さなパン屋さんの中で一緒になった。サクを見るとさっそく、まわらない舌で発声しジェスチャーと合わせて何かを話しかけてくる。ニコニコと「かわいいね、何歳?」というような感じなんだけど、意味のある言葉にはならない声が、とても大きい。おじいちゃんと会うのは久しぶりのサク、戸惑った顔はしていたが、あとずさったり固まったりすることはなく、指で4歳の形を作り(誕生日前だった)、喜んで求められた握手にもこたえてた。おじいちゃんが先にお店を出ていくと、小さな声で「『あー、あー』しかいえないんだね・・・」と納得したように独りごちてる。おじいちゃんの不自由さも、好意も、受け止められる年なんだなあと思った。

●実家の母が(深い考えなく)「ちずのえほん」というのを買ってきた。47都道府県が1ページずつ紹介され、さらに特産品産出やらのトップ3が載っていたり。こういうの好きだろうな、でも知識偏重みたいになるかな、ま、せっかく買ってくれたんだしな・・・と思って渡すと、まあ想像以上のハマりっぷりですね。

 

「いずもたいしゃ は、しまねけん!」
「あっ、“わじまぬり”のってる。まれちゃん、いしかわけんにいるんだ!」
「にばんめにおおきいみずうみ、しっとーよ。かすみがうら!」

てな具合に、みるみるうちに、典型的なかわいげのないガキになってしまった(苦笑)。昔あったよね、三代目魚武ナントカさんの本で、『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは 死んでもなりたくない』ってw 今じゃ、三代目といえばめっきりJ soulさんですが。

でも、面白いなと思ったのは、ある日、相変わらず熱心にその本を見ながら、
「とうきょうは、こんなにちいさいのに、どうしてひとのかずが いちばんおおきいんだろう・・・?」
とつぶやいていたこと。おお、思考の芽も育っとる。問題に答えるより問題を見つけるほうが難しいけんな!

●咳が出るので小児科に行った。いつもの飲み薬(シロップ)をもらったんだけど、家に帰ると訝しげな顔のサク。

サク「ちょっとおおきくない?」
私 「サクが5歳になったけん、お薬も大きいのくれたんやない?」
サク「ふーん。5さいになったって、わかるんだ・・・」

!! と思いつつ、平静を装いながら「病院のカード(診察券)にサクの誕生日が書いてあるのを見て、わかったんだと思うよ」と説明。「そっかー」と納得してた。

小さい子は「自分が知っていることは、みんな知ってる」と思うものだ。自分と人との境界線、「人の頭の中は自分と違う」ということがわからないから。 「5歳になったって、わかるんだ?」は、そこからの成長を示している。「自分が5歳になったことを、自分は病院の人に教えてないし、ママが教えた様子もなかったのに、どうして知っているんだろうか?」ということ。