2015北京世界陸上、男子短距離!

世界陸上の視聴率、いいみたいですね。北京開催で時差も少なく毎日22時過ぎにメインレースが行われる好環境もさることながら、やはりウサイン・ボルトの存在感ははかりしれない。彼は陸上界の宝ですな。

いわゆる「怪我明け」のシーズンで、100決勝のあとにコーチが話したところによるとレース前も脚の状態はよくなかったらしい。予選、準決を見ても「死角なし」な風情のガトリンに比べてボルト・・・確かに力は抜いてるけど・・・大丈夫・・・? すごい汗・・・てか準決、何でつまずいたの?足の違和感・・・? 
て感じで「もう不安しかない!」って感触だったのだが、決勝では勝つんだなーこれが。

0.01秒差! それでもシロートに目視できるんだね。この目でハッキリと、僅差の、けれど完全なボルトの勝利を見た! その昂揚、その感激。やっぱり100mは華、ボルトはスーパースター!!

あの0.01秒差って何なんだろうと考えちゃうよね。私が考えてもしょうがないし答えが出るわけないんだけども。絶好調のガトリンに先んじた0.01秒。「気持ちで勝つ」とか「王者のプライド」なんて安易な精神論に走る気はないんだが、観客としてはやっぱりそこに物語を感じざるを得ない。勝負の世界だなって思ったのは、解説の伊東さんや朝原さんが準決勝までのボルトの走りを不安視し(逆にガトリンの走りを称賛)してたのに、決勝ではボルトを手放しに絶賛したところで、0.01秒差だろうがなんだろうが勝った者が正義っていう世界なんですよね。

それだけ勝利ってのは重くて、2008北京五輪で王者になってから7年、ずーーーーっと注目され追いかけられ晒されてきてるわけですよ、そのプレッシャーたるや生身の人間に耐えられるレベルなのか?てぐらいだと思う。

2011韓国のテグワールドの100でフライングしたあたりから常に「ボルト伝説の崩壊」みたいなのも囁かれているわけで。でも彼がしくじったのはそれだけで、あとは200も含め世界選手権・オリンピックすべてに出場して、勝ってきてる。そうなるとますます伝説化・神格化するかと思えばそうじゃなくて、勝てば勝つほど人間味あふれる感もある。予選、準決勝など途中のラウンドでは必ずしも好調を感じさせるわけじゃないから、「それでも勝つのか!」っていう。いやでもやっぱり伝説だよね、雨でも勝つ、若手にも勝つ、僅差でも勝つ。

体格や風貌が際立っているのも彼をスターたらしめる要因の一つだけど、私は彼のクレバーさや勤勉さ、人間性にも惹かれる。まあ日本にいて彼の人間性が伝わる情報って少ないけど(笑)、これまでいくつもの世界大会で見てきて、ここまで追いかけられて神経質な様子を見せたって話も聞いたことないし、常にライバルたちにも敬意を払った発言をし(レース前に「俺が一番だ」的に煽るのはメダル候補たちの様式美)、何より、ここに来るまでに必死で練習してきてるんだろうなーって思うからレースを見ると胸が熱くなる。一番の人が一番で居続けるためにし続ける練習の精神的つらさ、それに7年も耐えられるモチベーションの維持って想像を絶する。

そしてまた来年のリオまで、彼はメダルを増やしたことでの新しいプレッシャーも抱えながら練習するんだなあ・・・。

200もすごかった。ボルトという選手のすばらしさは、200が本職だから、100が先に終わったあとも「200でもっといいレースが見られるかも!」という期待が高まってしまうところにもある(笑)。最初からかなり飛ばしてコーナーの出口ではガトリンと並んでた、そこからあっという間に抜き去った。100はとにかく短すぎてドキドキしかないけど、200は彼の走りを堪能できる。

ガトリンもすばらしかった、長い出場停止期間のあと、30歳を超えて自己ベストを出しボルトをここまで追い詰めるってどういうタレントだろう、という。どこか愛嬌というか優しさ純朴さを感じる魅力的な選手。

100の3着には同タイムでアメリカのブロメルとカナダのド グラス。2人とも20才で、ユニバーシアードでも競ってたライバルだとか。リオや、そのあとも活躍するんだろう逸材。2人並んでの表彰式が微笑ましかった。でも、でもさ、この7年間もずっと有望な若手っていたんだよね、有望・金メダルを獲れる逸材っていわれて結局実現することなく引退する選手だっていっぱいいるんだよね、その敗者たちの群れの上に常にボルトがいるってことなんだよな。絶句する思いだ。

中国のソ ヘイテンが100のファイナリストに!! 前回大会で惜しくも、本当に惜しくもファイナリストを逃したチョウバイホウくんもかっこよかったんだけど、ソヘイテンくんはまた、なんともかわいらしいファニーフェイスで・・・。リオも期待しています☆

そして200では藤光・高瀬・サニブラウン3人そろって準決勝に行ったってすごいよね?! 予選、サニブラウンが16歳少年らしい細い体つきでガトリンに次いで2着に入る図はすごかったけど、その直後、本当に走った直後のインタビューで「いやー後半間延びしてしまって足が全然回転しなかったので準決勝ではそこを改善していきたい」と超具体的にはきはきと課題を述べたのにはびっくらこいた。野球の清宮くんといい、選ばれしスポーツエリート感がすさまじい。

2009ベルリンワールドで4継リレーのアンカーを務めたときは最年少でぽんやりとしていた印象だった藤光謙司がすっかり渋いいい男になっててじんわり。報道はサニブラウンくん一色だし、まあ実際に出場もしてないからしょうがないんだけど、山縣とか飯塚とかあの辺の選手はどうなっているのであろーか? そうか桐生くんもいるし、短距離男子日本には相当明るい見通しがあると同時に選手たちには相当熾烈な戦いがあるのだな。

ボルトのレースについて書いたアーカイブ探してみたらいろいろありました。じんわり。

 

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