高橋大輔、引退
高橋大輔が引退会見を行った。どこかで心構えはあったけど、それでもなんかすぐには言葉にならんくてね。
フィギュアスケートファンを多くフォローしている自分のTLではもちろん、テレビや新聞等でもすごい報道だった。あらためてすごい影響力をもつ選手だったのだな、と。
永遠に選手でいられるはずないんだから、選手自身が幕引きを決めたらおつかれさまでしたと言うしかないんだけど、本当にありがとうと言いたい気持ちだけれど、引退がこんなに淋しい、切ない選手も、そうそういないなあ、と。
ソチのラフ真央はもう数えきれないほどリピートしたけど、ソチのビートルズメドレーは数えるほどしか見てない。引退決まった今なら静かな気持ちで見られるだろうかと思ってTBSのノーカット見てみたけど…。やっぱり心がざわめくねー、まだ。
ジャンプはもちろんだけど、スケーティングについても、あれが高橋大輔のベストだったかといえばファンとしては全然そうは思えなくてだね。好調な彼ならもっともっともっともっとスケーティングもキレキレかつ滑らかなのだよ。あれを見て「高橋はこういうもんだ」と思わないでほしい気持ちがあって
だけど、決して「ベスト」だったわけじゃない演技が、引退時にこうしてノーカットで放送されることの意味みたいなのも思った。いくらラスト演技だからって、引退時に流されるってことは、それが「彼の代表作」だという認識があるからで。(フジめざましでは「道」を長く流したみたいだけど)
ビートルズメドレーは、あのソチでの演技は、確かに彼の競技人生を物語るような、彼でなければできない演技だよなあ、とあらためて思った。うまい人の演技はあっという間、とよく言うけど、あの4分30秒はなんか見てて長いんだよね私には
4回転両足で、次の4回転を回避して3Lzにして、後半しょっぱなの3A+3T決められなくて、スケーティングも少し重そうで、ファンとしては、「ああ」「ああ」って祈りながら見てて、S描いてハート作るとこで胸を衝かれて、
最後のロングアンドワインディングロードにたどりついたころには、「本当に長くくねった道のりだった!」って4分30秒内でものすごい感慨を抱かせてくれるw その解放されたがっているような大きな滑りに「もうすぐ終わっちゃう」って思って、少し放心したようなラストの表情が、ああ。
スタジオでノーカット見てた鈴木明子が、終わったあとコメント求められて「強くて優しくて儚い、その瞬間しか見られない演技」と声を震わせながら言ってて、もうほんとそれ!と。ソチ試合後のマスコミは、こぞって「晴れやか」「笑顔」強調してたけど、あの演技の儚さにファンは涙を禁じ得ないのだよ
・・・と、ソチ後の自分の感想を読み返してまた胸が・・・ URL
この呟きをして数日たった今は、センチメンタルな気持ちは少しおさまり、代わりに猛烈に、高橋大輔の歴史を振り返りたくなってる。歴史っていうのは、「台頭〜大怪我〜バンクーバー銅メダル〜ソチへ」みたいなわかりやすい感動寄りのダイジェストじゃなくて、シニアデビューしてからの彼の(少なくとも競技用の)全プログラムを見たいってこと(できれば、我が家のパソコンでyoutube映像を見るとかじゃなくて、テレビの大画面で見たい!)。
全プログラムを時系列に、それがスケーターの歴史というもの。どんなスケーターについても、そうやって振り返ると見ごたえあると思うけど、高橋でそれやったら、もう、圧倒的だよね。
本来、高橋大輔の歴史って輝かしいものだと思う。超一流のアスリートというのは人格も突出しているものなので、彼の人柄や言動を振り返るのも意義深い。けれどまずはやっぱりプログラム、そして、そのプログラムがもたらした成績。そのふたつが、彼がどれだけ長いこと世界の第一線にいたか、尊敬すべきスケーターだったかを如実に示してくれるものだ。
この1,2年の羽生や町田の台頭が急激かつすばらしかったので、世代交代の印象が強く、高橋の「表現力」が語られるときは「成績以上の記憶」というイメージが想起されるけど、10年という長きにわたって第一人者であり続けた偉大さ、つまり「長い間、勝ち続けてきたこと」は、もっともっと語られてほしいなって思う。彼自身、きっと競技が好きだった面も大きいと思う。バンクーバーのあとの4年はその証左でもあるだろう。
高橋大輔の全プログラム、ノーカット振り返り。地上波のどこかでそんな贅沢な企画をやってくれたらいいのにー。版権あるのかな。
◆追記◆
引退の会見の言葉で印象に残ったのは、「いままで自分の人生に向き合って答えを出したことがない。誰もが社会人になるときに経験している人生の選択を、28歳になって、これからやっと、やっていく」のようなことを言っていたこと。
これは要旨としては、いわゆる「自分探し始めます」ってことになるのかもしれないけど、中田英寿さんが引退するとき「人生は旅」と表現した(笑)のを、高橋は「みんなはとっくに経験してることを遅ればせながら始めます」の雰囲気。横でお母さんも「これからちゃんとした社会人になってほしい」と挨拶。なんか・・・これだけの影響力をもつアスリートでありながら、この感覚。これが高橋のすごさのひとつだな、って思った。