『軍師官兵衛』 第32話「さらば父よ!」

ちょいと夏バテ気味で録画を見ないまま月曜日の朝を迎えて、「さらば父よ」だなんて、また私の苦手な黒田ファミリーのホワイトホーム劇場だわ〜 もう「未」マークのまま消しちゃおうかしら〜 なんてチラッと思ったのですが、小牧長久手がどのように描かれるのか、どうしても好奇心が拭えなくて(ヲタの悲しいサガ)再生してみたら、小牧長久手アバンタイトルであっさり終了ww クッソ噴いたwww けど、45分、それほど苦悶を覚えることなくすんなり見ることができて、あまつさえ「ちょっと面白い」と思ってしまった(どんな苦悶を覚悟して見てるんだw)。

なるほど、官兵衛は小牧長久手には帯同どころか、まったく関与してないのね、なるほどなるほど。「秀吉と三成のキャラがいきなり変わった」という感想は至極もっともであるが、私は意外に、違和感少なかったですね。

三成の「小才子」キャラは、まあステレオタイプなものなのでハイハイって感じだし、田中圭くんが、少ない出番でいつもそのキャラを滲ませて芝居してたからね。つまり逆にいうと、目立たないところで巧い芝居のできる圭くんの、せっかくの大河なのに、この三成役はもったいないと思ってるんだけどね。

秀吉は、なんせ、あの「御運が開けました」と言われたときの怯えた演技が絶品だったし、先週の、「三法師を抱いて(セリフもなく)清洲会議の上座に立つ」の画での表情も、権力者へのぼりつめていくギラギラと黒光りした感じですばらしかったので、官兵衛を遠ざけるようになるのもむべなるかな、と。竹中直人は表層的な猿芝居ではなくて、やっぱり良い演技をするなー。と、この大河で、実はかなり見直してます。

官兵衛をゴリ押しする(としか見えない笑)おねに向かって、キレるのかと思いきやキレなかった。徳川との再戦を阻む官兵衛に向かって、キレるのかと思いきやキレなかった。という、「キレずに笑った」二連発の脚本演出も、この手のインスタント作風な大河にしては「おっ」と思わされました。その笑い方が、変わらず人たらしのようでいて、でも今までとはどこか違って、やっぱり竹中直人の演技に見ごたえがある。

それで官兵衛が何をしていたかというと、毛利との戦後処理をしていて、「図面に線を引くのは容易いが、地侍たちをなだめるのが大変」って、まさに地上げ屋さんとか公有地接収の役人みたいな仕事をしていたのが、またちょっと良かったね。そーゆー地道なのも、軍師のお仕事。

徳川との戦を避けるべきと進言するシーンは、岡田くんももちろんよかった。肚に覚悟を決めたような静かなセリフ、目配りや所作に至るまで、本当にうまい。「寄せ集めの秀吉軍に比べ、徳川は譜代衆の結束が強い。今、当たるのではなく、こちらが強くなれば、向こうから臣従してくる」って論理にも、(このドラマには珍しく)説得力があった。その「徳川譜代衆の結束」が、本能寺の変のあとの「おじいちゃん、自害なんてダメ!」、伊賀越えの「おじいちゃん、がんばって!」みたいな単純な絵面でしか説明されてきていないのは残念であるが(笑)、ここへきて、寺尾聰の家康も生き生きとしてきて、官兵衛と対峙する日が楽しみである。

さぞかしお寒いだろうと身震いしつつ臨んだ黒田ファミリー劇場も、新米領主・長政の四苦八苦ぶりに絡めての描写が意外に面白かった。これ、せっかく、毛利の旧領で苦労してきた官兵衛とダブらせて描いたのだから、官兵衛はどのような手で地侍たちをなだめたのか描いた方が絶対よかったよね。ま、そこまで知恵を絞らないのがこの大河の作風なのよね、ふん。

宍粟郡、山崎城。宍粟と書いて「しそう」と読む。ゆかしい地名ですね。農民たちを慰撫するつもりが逆ギレして、向こうにもキレられてしまうというシナリオはテンプレ通りなんだけど、桃李くんの奮闘ぶりが、みずみずしくも時代劇の中にしっくり馴染んでいて、なかなか見せるのです。基本的に、大河に旬でフレッシュな若手俳優がやってくるのを歓迎しているわたくしですが、桃李くんは、それ以上に演技そのものに見どころがあって、大変よろしいです。ananのセックス特集の表紙もすごく素敵だったし(笑)、彼、ポテンシャル高い?

それにしても、おじいちゃんが良いたとえ話をしてくれたのに、官兵衛やんに諭されるまで、その意味を少しも理解していなかった長政は、大したおバカちゃんですねw 面白い脳筋キャラの演出でしたw 「長政あいつ、俺のいうこと全然わかってねーな」と察して、官兵衛にも釘をさしていった恭平おじいちゃんは正しい(笑)

その黒田職隆さんは、この「ゆとり大河」を代表するかのような、すわ平成からタイムスリップしたのかってぐらいの慈父っぷりが時々勘にさわっていたのですが(恭平ではなくあくまで脚本等の問題)、おつかれさまでした。サヨナラ公演で目薬屋時代の話がちょっと出たのは良かったと思います。

死後の、ホワイトをバックに「官兵衛、これからも頑張れ!」的な(真面目に聞いてないw)励ましをする場面含めて、今回ってなんか、昔の大河を見てるような感じが、ちょっとしましたね。昔っていうのは、独眼竜とか太平記とかじゃなくて、「利まつ」ぐらいの「昔」感ね。

四国攻めが「破竹の勢いで進軍」的ワンフレーズでバッサリと終わったのには感嘆するしかありませんでした。初登場=降伏、で、長曾我部元親、涙目w これ、内田恭子に打掛着せてお市に仕立てたのと同様、出オチのカメオ出演にしたらよかったんじゃないかw ヒロミとかでさw