『軍師官兵衛』 第27話「高松城水攻め」

「適当にいろいろ詰め込んだので、ご自由にお察し下さい」みたいな、なんのポイントもない、作り手の言いたいことやりたいことを感じられない光秀の挙兵でした。饗応での不手際、朝廷の不満、中国攻め参陣の命、国替え…。いろいろと。ええ、いろいろとね、あったからね、ついにね。はいはい。

一応、「帝への不敬」が一番のトリガーってことになってるのかな。なんたって信長の口パク演出は「これがキモですよ」ってことだろうからね。その割に、2,3分のちにあっさりネタバレしてて笑ったけど。なんちゅー安い演出だ。

鬼神・信長に対する良識人・光秀という構図は大河ドラマのお約束。わけても、今作は「広い世界に打って出たい」などと「花子とアン」顔負けで想像の翼を広げまくる信長と、途中までいるかいないかわかんないほどの光秀だったので、その「水と油」ぶりはわかりやすかった…の、かも?しれんけど? 

信長が光秀を重用してきた経緯とか、光秀がどうしてそんなにも朝廷を大事にしているのかとか、そういうのが描かれてきてないので、まあ唐突だよねやっぱり。「あ、そろそろ本能寺の年ですんで、光秀さん、さくっと裏切ってくださーい」「はーい」みたいな感じなのよね。あるいは、「世界の海援隊」をやりたい信長と、異様に尊皇精神の強い光秀で、ここどんな幕末?! みたいな。

あーあ。本能寺までの道筋を、ダイナミックにかつ緻密に、エンタテイメント性豊かに描いてくれる大河・・・そろそろ見たいよ・・・。かなり本筋とは離れると思うけど、もう、「真田丸」でやっちゃって! こうなったらなんでも三谷にやらせてみよーじゃないか。戦国前期・中期・後期(織豊)と3年がかりぐらいでやろうじゃないか。

今回、寺尾聰の家康も、まんをじして登場したわけですけどね。豪華ですよ。これは、この大河にはもったいないぐらいの豪華キャストですよ。でも、なんで、こんなに出てきた時から狸なの? これも最近の大河の悪弊だよね。松方弘樹(クセモノ)にせよ、北大路欣也(白狸)にせよ、今回の寺尾聡(黒狸ってとこ?)にせよ、本能寺前後なのに「もう出来上がった状態」で登場してくる家康、っての。おめー、三方が原で信玄にボロ負けくらってからまだ7,8年ってとこだろ!みたいな。

家康、30代なんだもん。それなりに若さを残した状態から、徐々に狸化してほしいわー。主人公でもないから無理ですっていうなら、それ絶対作り手の怠慢だよね。民放1クールならともかく、大河ドラマだよ? クレジットでピンになってるキャラの成長や変化は描けないとおかしい。「カーネーション」を見よ。

てか、家康のクレジット順は何なんだよ! なんで寺尾聰が三番手に登場してんだよ! ほんっと、前から言おう言おうと思ってたけど、
クレジット順もピリッとしない大河だよねー。黒田とか織田の家臣団がだらだらだらだらピンで続く中盤、そのトメが信長っていう。もっとスッキリして! 信長ふつうにトメグループでええやん。

あと、小一郎秀長に嘉島典俊・・・に加えて、丹羽長秀勝野洋福島正則石黒英雄、このへん、全部、役者の無駄遣いね。特に石黒くんみたく、わずか2年前に面白い役を好演した役者を、埋没キャラで呼ぶな!厳しい世界とはいえ、不憫でならぬ。井伊直政に東幹久ってのもなぁ…東幹久には奮起してほしいものです。

さて、主人公は水攻めで絶好調。岡田くんほんとかっこよくて、岡田くんパワーで官兵衛の株が上がりつつはあるんだけどね。津波に見えないよう演出に気を遣っているのはよくわかった。でもさ、「水攻め=奇策」なのは、まぁいいとして、今なお「命を大事に」的なキャラで押しまくってる官兵衛だけど、水攻めって別に「敵に優しい」策じゃないよね。普通に残酷だよね。

それでも小早川隆景と官兵衛の会談には結構燃えるもんがありました。先週の恵瓊との会談に続いて。てか、このドラマで見てると、隆景クッソかっけー抱いて!ってレベル。5か国の譲渡を即断し「兄と甥(当主)はわしが説き伏せよう」もかっこよすぎたけど、清水宗治の助命について、「毛利の結束・信用のために」まかりならん、という断る理由がよかったねー。

だからって、いくら宗治を助けたいからって、「織田に寝返れ」って・・・あんだけ何度も清水宗治と会って話して人物をわかっていながら、宗治に寝返りを迫る官兵衛の器量がちょっと疑わしいよね。器量っていうか、人間性っていうか。名将たる宗治の美学・矜持を、あまりに蔑ろにしすぎじゃないじゃないのかい、と。「命だいじに」はわかるけどさ、おめーも土牢で村重にいくら頼まれても寝返らなかったやん。

後藤又兵衛が帰還。塚本くんにこーゆー演技させないで。彼はあるていど軽みのある演技のほうがずっといいのよ。んで、やたら光が母親づらするんだけど、母子の絆ってほどのシーンは特になかったと思うんでね、すごい違和感あるのよね。ついでに言うなら長政との兄弟感も、それほど育たないままだよね、劇中。

ともかく、「敵は本能寺にあり!」の小朝師匠の言挙げは、ほれぼれするほど見事だったのよ。噺家さんって、こんなに声張る演技もうまいのか〜ってびっくりしたもん。それをどうして、かぶせ気味にリピートするんだね演出!!! 1回こっきりのほうが絶対締まったと思うぞ!!

なんか、そうやって仰々しく討ち果たされるほどの信長かなーってのもあり。よくも今まで寝首をかかれず生きながらえてこられたよね、っていう信長でもあり。本能寺に入ってくる演出、変だったよね? 信長先頭、二番目濃姫、以下、お宝(?)捧げ持った小姓たちが一列で、速足で入場。しかも部屋を斜めに横切ってたからね(笑)。

「富士見物くらいいつでも連れてってやる」この信長は、プライベートジェットかなんか持ってるんでしょうね。「日本はわしには狭すぎる」「どこまでもついてまいります」「好きにせよ」このバカップルも来週で見納めと思うと寂しいですね〜(笑)。

てか、「わしの心をわかってくれるのはおまえたち2人だけ…」とか悲劇のヒロインぶってた信タンだけど、お濃ちゃんの立場なさすぎだろ。こんなに濃姫に心を許してる信長も、古今、珍しいぐらいだぞ。だいたい、別に秀吉も官兵衛も、信長の気持ちわかってるとは思えないし。単に尻尾振ってついていってるだけだし。