『失恋ショコラティエ』 終わりました

うわー、この最終回は残念。残念だった。プレ最終回まで、すごく良かったのになあ! みなさんは、どうご覧になったんでしょうか?と、終わって2週間経ってから聞く奴…。

確かに、爽太が誰かとくっつくのは説得力ない。サエコ・エレナ・薫子(そして爽太自身)いずれの恋も終わるのは自然だとは思う。だからって「爽太、再びパリへ修行に。その間、お店は仲間たちが守ってくれます」って、すげー都合のいい話だな! 「主人公または主人公の相手役が外国など、まったく違う場所へ旅立つ」ラストって、掃いて捨てるほどよくあるけど、たいてい凡作・駄作だからね。このドラマでそれやられるとは思わなかった。なんか斜め上があると期待してたのに。これじゃ、'90年代の矢沢あいのマンガ(「天使なんかじゃない」「ご近所物語」あたり)的なご都合主義ハッピーエンドだよ。ショックー!

「みんな幸せ」で終わるドラマが嫌いなわけじゃない。「最高の離婚」本編や、「空飛ぶ広報室」のオールハッピーエンドなんか、大好きだった。てか、このドラマは、別にハッピーエンドじゃないんだよな。要するに、このドラマにこのラストがふさわしいと思えるかどうかって話だ。

片思いが主題のドラマだった。「片思いとはキラキラしく、そして独りよがり」ということを、甘く、切なく、コメディタッチで描いてきたドラマだった。けれど片思いはいつか終わりを迎える。「現実の自分・現実の相手」と向かい合わなくちゃいけないときがくる。

エレナと薫子がスッキリしているのは、「恋を失うとの引き換えに羽化した」からであって、彼女たちには、きっと新しい出会い、素敵な恋が待ってるんだろうなと素直に思える。

やっぱり納得いかないのは爽太とサエコ。爽太、リセットしすぎ。良いチョコが作れないまま終わったのがヤだ。親譲りの店?とはいえ、店のオーナーって、戦国で言ったら城持ち大名と同じだよ? や、興奮して意味なく戦国にたとえてしまったけど、いくらサエコへの恋(妄想)がチョコ作りのインスピレーションを与えてくれていたとしても、「だから作れなくなった、だから外国で一から修行します」て、そりゃ、あんまりよ。恋と仕事の腕とが混同しまくらチヨコだよ(ショコラティエだけに…って、バカバカしいなw)。

恋を失ったから仕事もダメになった、のではなくて、「恋は失ったけど、恋をしたことで得たもの(=仕事の腕)は残った」って描き方にしてほしかった。いちお、店(と仕事で得た仲間)は残るってことで、基本的アビリティは残ったという描写なのかもしれないけど、そこでパリに行くのが、また、許せない。

ふつう、そんなに都合よく、しかもかっこよくリセットできない。なんか狡いんだよ! まあ、もともと30そこそこで人気店のオーナーなんて、夢みたいな設定ではあるんだけど、「夢みたいな舞台設定」と「夢みたいなオチ」には大いに差がある。そんなに綺麗に新天地に飛び立たせたらいかん! カカオ豆を加熱しながら撹拌するように、黒くどろどろとした「代わり映えのない現実」の中でサバイブするべきなんだよ! これまで積み上げてきた、裏切らない「自分の腕」をもって。

一方のサエコは黒くドロドロとした現実に戻って行ったのか? や、相変わらず夢の中やん。いちおセリフでは「結婚生活が続くかどうかわかんない」「ムカッとすることもある」とか言わせてたけどさ、モラハラ夫と腕絡ませてキャッキャいって、平気で他店のチョコ食べてる映像なわけやん。そして遺伝子的に、どう考えてもクソかわいい赤ちゃんが生まれるわけやん。そのかわいさに没入してやり過ごす生活なわけやん。

あれは、「サエコサエコで自分の現実を頑張ってる」描写だったの? それとも、「サエコは結局、爽太にとってのモンスターでしかなかった」という描写なの? あるいは、「詰み続けて生きるサエコの本質的な哀れさ」を描写したの? なーんか、何にしても中途半端なんだよな。モラハラ夫はきっと生涯モラハラ夫だろうし。かといって経済的には非常に恵まれてる家庭なわけだし。とまれ、ラスト、前髪上げて、眉メイク変えた石原さとみも完璧にかわいかった。

そう! なんといっても、松潤の周囲に配された3人の女優がそれぞれすばらしいドラマだったと思う。妖精さんからサタンまでを自由自在に行き来する石原さとみには、これまで積み上げてきたキャリアと自信を感じたし、思いきりよく道化やブスに徹した水川あさみには大人の余裕があった。プレ最終回で、店に飛び込んできたモラハラ夫に薫子さんが毅然として立ち向かう場面は、すごくスカッとするシーンになった。それに水原希子ちゃんの美しさ! エレナのこと、リクドーさんが「美しい体、美しい心、美しい人生」と称えるシーンがあるんだけど、その賛辞が本当にぴったりだと思った。

男性陣も当たり役だったよね。キラキラしく且つおバカな爽太は松潤にぴったり! 松潤ってドラマでは割と「等身大」の役が多くて恵まれてる気がする。溝端淳平は、「BOSS」でかわいい単純バカを演じたのも今は昔、ねっとりと湿り気のある役がよく合ってた。あ、そうそう、最終回は、オリビエとまつりちゃんの事後を匂わせる描写がなかったのも不満でしたね(ゲス)。最後、店のみんなで爽太を見送るシーンで、オリビエがまつりちゃんにチュッてしたりして、「ヤッた男の自信」を見せてくれたらよかったのになー(最低)。

そして佐藤隆太のリクドーさんですよ! かわいくて、かわいそうで、凛としてて、このドラマの世界観を体現する存在だったなー。リクドーさんの一言一言が大好きだったんですけど!! うん、やっぱり、どんなにゲスでもおバカでも「仕事はちゃんと(落ち込んでる時も何とかかんとか)できる」「真面目にやってきたことがつらいときの自分も支えてくれる」っていうのを、ドラマの中で貫いてほしかったなー。原作はどんなふうに完結するんだろう。